【完結】侯爵家の平和な日常~世間知らずの花々の一生~

春風由実

文字の大きさ
4 / 7

4.妹は奮闘する

しおりを挟む
「どうしたの、シャーリー?」

「た、た、大変だわ。あ、悪魔がいるわ!」

「え?あ、悪魔?」

 悪女に悪魔も出て来るなんてどんな物語なのかしら?
 あとで私も読んでみましょう。

 さほど驚かずに妹の指さす方におっとりと振り向いたリリーベルは、そこにいつも通り優しく微笑むジークハルトを見て取った。

「まぁ、うふふ。ジークさまは悪魔役でしたのね?」

「や、役じゃないのよ。本当に──っ!」

 妹に向き直ったリリーベルは聖女の如く麗しい微笑みを浮かべ、妹シャーリー小さな手を取った。

「駄目よ、シャーリー。淑女のお勉強で習ったでしょう?人を指さしてはいけないわ」

「は、はい。でもぉ」

「うふふ。怒ってはいないのよ。これからは気を付けましょうね」

 涙目で頷いたシャーリーは、我慢ならないと姉に抱き着いた。

「まぁまぁ、どうしたのかしら?今日は甘えん坊さんね。眠たくなってきたのかしら?」

「そんなことありませんわ!私はもうお昼寝をするような子どもではありませんもの!」

 覚えたての淑女言葉を駆使して宣言したシャーリーは、そう言いながらも姉の温もりといい香りに包まれてうとうとと瞼が落ちていく。
 しかし悪魔の声がシャーリーを幸福な眠りの淵から引きずり上げた。

「ふぅん。この本は誰が与えたのかな、アルマ?」

「シャーリーお嬢さまがお友だちのご令嬢からお借りしたものにございます。そちらのご領地の庶民の間で流行っているそうです」

「そう。それは交友関係を見直さないといけないね。お友だち選びもシャーリーが立派な淑女になるためには大事なことだ」

 一気に目が覚めたシャーリーは、姉の胸に頬ずりしながら叫ぶ。
 姉にくっ付いているシャーリーには怖いものがなくなるのだ。
 それがむしろ逆効果になることも知らず……。

「レイラは私の大事なお友だちですわ!文通もしておりますのよ!」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

某国王家の結婚事情

小夏 礼
恋愛
ある国の王家三代の結婚にまつわるお話。 侯爵令嬢のエヴァリーナは幼い頃に王太子の婚約者に決まった。 王太子との仲は悪くなく、何も問題ないと思っていた。 しかし、ある日王太子から信じられない言葉を聞くことになる……。

助けてなんて言ってません!余計なお世話です!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
 大好きな彼と婚約が整って上機嫌でデビュタントに臨んだ子爵令嬢のセラフィーヌ。  だけど、未婚の貴族令嬢に望まれない縁談を押しつけることで有名な公爵夫人が、セラフィーヌの婚約者が平民の農家だと知って 「平民に嫁がされるだなんてかわいそう!」 と勝手に盛り上がって、こちらの言葉も聞かずに「貴族との結婚」を押しつけてこようとする。  どれだけ「両想いで幸せなのだ」とセラフィーヌとその家族が訴えても聞く耳を持たず暴走する公爵夫人はついに最大のやらかしをしてーー

【完結】救ってくれたのはあなたでした

ベル
恋愛
伯爵令嬢であるアリアは、父に告げられて女癖が悪いことで有名な侯爵家へと嫁ぐことになった。いわゆる政略結婚だ。 アリアの両親は愛らしい妹ばかりを可愛がり、アリアは除け者のように扱われていた。 ようやくこの家から解放されるのね。 良い噂は聞かない方だけれど、ここから出られるだけ感謝しなければ。 そして結婚式当日、そこで待っていたのは予想もしないお方だった。

嘘吐き令嬢

神々廻
恋愛
ある所に嘘ばかり付いてしまう令嬢がいました。令嬢に婚約者ができるとより、嘘を付くようになりました。 ですが、令嬢は婚約破棄されてしまいます。 6話完結

【完結】シャーロットを侮ってはいけない

七瀬菜々
恋愛
『侯爵家のルーカスが、今度は劇団の歌姫フレデリカに手を出したらしい』 社交界にこんな噂が流れ出した。 ルーカスが女性と噂になるのは、今回に限っての事ではない。 しかし、『軽薄な男』を何よりも嫌うシャーロットは、そんな男に成り下がってしまった愛しい人をどうにかしようと動き出す。 ※他のサイトにて掲載したものを、少し修正してを投稿しました

とある令嬢の婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある街で、王子と令嬢が出会いある約束を交わしました。 彼女と王子は仲睦まじく過ごしていましたが・・・ 学園に通う事になると、王子は彼女をほって他の女にかかりきりになってしまいました。 その女はなんと彼女の妹でした。 これはそんな彼女が婚約破棄から幸せになるお話です。

【完結】華麗に婚約破棄されましょう。~卒業式典の出来事が小さな国の価値観を変えました~

ゆうぎり
恋愛
幼い頃姉の卒業式典で見た婚約破棄。 「かしこまりました」 と綺麗なカーテシーを披露して去って行った女性。 その出来事は私だけではなくこの小さな国の価値観を変えた。 ※ゆるゆる設定です。 ※頭空っぽにして、軽い感じで読み流して下さい。 ※Wヒロイン、オムニバス風

【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~

かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。 だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。 だめだ。 このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。 これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。

処理中です...