【完結】あなたを愛するつもりはないと言いましたとも

春風由実

文字の大きさ
13 / 96

13.震えましたがが寒くはありません

しおりを挟む
「詫びは本当に要らないが、この件をどうするかだな」

 侯爵様はしばし考え込まれておりました。
 その間も、手を離してはくださいません。

「実はな、君の噂を聞いてすぐに対処させていたんだ。ついでに辺境伯殿にも報告を兼ねた手紙を送っていたのだが」

「それはいつ頃のお話ですか?」

「……半年は経っているな」

 侯爵様も違和を覚えられたようですね。
 父があえて私に伝えなかった、ということは考えにくいものです。

 情報は身を守る財産。敵と戦うには必須です。

「囁いていたのは、口さがない一部の貴族だけのようでな。王都の者たちは君の姿を知らないし、興味を持つ者も少なかったようだ。それで我が家が動けばすぐに愚かな真似は辞めたと報告を受けていたし、君の元にも届かなかっただろう?こちらとしてはすっかり安心していたのだが……まさか遠くの地にいる君に私の話の方が届いてしまうとは思わなんだ。しかもな、私についての噂話が王都で流れていたという報告がない」

 つまり、侯爵様は私の噂話を抑え込んでくださっていたのですね。
 有難いお話です。

 同じことを我が家が出来なかったことは名折れですし、父に伝えて正式なお礼と謝罪をしなければと思いますが。


 侯爵様が動いていたとなると、また考えることが増えていきます。

 たとえ侯爵様が素早く動いてくださっていたとしても、我が家の王都にいる者たちがこれを逃していたとは考えにくいものです。
 それは逆も然りで、王都で侯爵様の噂話が流れていて、それを侯爵家が感知しなかったとは思えません。

 そうなると、我が家の者には私の話を避けて、そして侯爵家には侯爵様の噂話が伝わらないようにしていた、と考えられるのです。
 しかもあえて、我が家には侯爵様の噂を、侯爵家には私の噂を、確実に伝わるよう仕向けられていたのではないかと。

 だから従姉妹たちは、侯爵様の噂話だけを教えてくれたのでしょう。
 彼女たちも私については何も知らなかったはずです。知っていたのは、侯爵様の噂に付随した『貴族令嬢の鑑』という話くらい。


 これで何かの思惑を感じないわけにはいかなくなりました。

 私の噂をしていた人たちが、侯爵家に注意されてすぐに閉口するような貴族であるならば。
 知略を持って噂を囁いていたとは思えませんし、先導する誰かがいたのではないでしょうか。
 それも彼らをまとめられるだけの、大きな力を持つ存在……。


 なんだか恐ろしくなってぶるっと身震いをしましたら、侯爵様に寒いのかと心配されてしまいました。

 ガウンの下は薄着ですけれど、このガウンは分厚くてふかふかでとてもあたたかいのです。
 だから寒いと感じることはありません。

 あたたかい飲み物を貰おうかと言ってくださったのですが。
 ハーブティーをおかわりし過ぎて、お腹がたぷたぷになっていましたので、遠慮させていただきました。

 すると侯爵様は手を離して、一度側から離れると、すぐに戻り、膝に毛布を乗せてくださいます。
 毛布よりも手が離れたことに安堵していたら…………もう捕まりましたね。

 隣に座ると一時も手を離してはならないお作法があるのでしょうか?

 侯爵様の身なりの方が寒そうでしたので毛布を半分使いますかと問いましたところ、「有難いが、私には不要だ」と言われたあとに、ぷいと顔を背けられてしまいました。

 また良くないことを口にしてしまったのでしょうか。

 これから夫人としてこの地で生きていくことになるのですが。
 妻となった初日からこんなことで大丈夫かと心配になってきます。

 頑張らなければと、さらに気を引き締めました。
 とはいえ、何から頑張ればいいか……。

 相談しやすい相手がまだいないというのも、困りものですね。
 まずは侯爵家の侍女たちと仲良くなれるよう頑張ってみましょうか。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖
恋愛
​「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」 ​甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。 旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。 「それは本当に私の子供なのか?」

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

処理中です...