14 / 96
14.従姉妹たち一家についてよく知りませんでした
しおりを挟む
「君は噂をどこから?」
顔を背けていた侯爵様が、しばらくして問いました。
もうこちらを見詰めています。
どちらに顔が向いているにせよ、相変わらず手はがっしりと捕らえられたままで。
そろそろ本当に捕獲されている気分です。
「……身内からです」
さすがに誰かは濁しておきました。
彼女たちも利用されている可能性がありますからね。
それはそれで失態ですし、こんな遠くの地で他貴族に身内の恥を晒すのはあんまりです。
家の問題ですから、まずは自領で対処した方が良いでしょう。
我が家にもすぐに調査をするよう促さなければ……王都にも一報を入れて、その後に父でしょうか。
こういうとき、物理的な距離の問題は大きな支障となりますね。
いつも隣接する敵国ばかり睨み付け、国内の情勢に疎いところは反省点です。
「そうだろうな。王都の情報を信頼出来る者から得るというのは当然のことだ。だがそれは……もしやとは思うが、辺境伯殿の弟御、君の叔父上殿ではなかったか?」
何故ここで叔父様の話題に?
「そちらの王都での統括職は彼なのだろう?うちの同じ立場の者と接触し、話は通してあったはずなのだがね。私からの手紙もうちの者から彼へと託したはずだ」
確かに王都といえば、叔父様ですが。
叔父様は……思い出すお顔がぼやけています。
父は兄として叔父のことをそれは可愛がっていたようで、今でも甘い対応をしがちだと聞いています。
それを母が時折びしっと正し……つまりかなり甘えた方だそうで。
それも領内での話らしく。
王都の華やかな暮らしや、他貴族との社交は性に合っているとのことで、我が領地の王都代表は叔父がずっと務めていました。
そして母が怖いのか、それとも合わないのか、自身では領地に戻りたがらず、情報や手紙などの伝搬には人を使うことが多かったです。
だから会ったことも数えるくらいで。
その妻である方はほとんど領地に戻ってきませんので、もっとお顔を知りません。
叔父様が戻って来たときにも何故か、奥様はご一緒されず。
そんな二人の娘である従姉妹たちもまた、叔父様と一緒に戻ったことはありませんでした。
けれども領地は好むのか、姉妹だけで王都と領地を幾度となく往来しておりましたね。
この通りですから、従姉妹たちは叔父様から何の話も聞いていない可能性はあります。
このように思い返してみますと、叔父一家について私はさほど知らないのだと気付きました。
従姉妹たちは領地に戻るとよく話してくれましたが、両親の話はほとんど聞かなかったのです。
我が家と大分違った関係性であったことに、まさかこんな遠くの侯爵領に来てから気付くだなんて。
どちらが悪いとは言いません。
家族の形はそれぞれでいいと思いますし、当主家とそうでない違いもあるでしょう。
領地と王都、拠点としている場所柄の影響もあるはずです。
ただ我が家は共に行動することを好む家族だった、ということ。
たとえば父と母は、どこかに出掛けるときにはいつも一緒でした。
それは領内の視察のときにもそうで。
お父さまが内政的な部分で少々頼りない部分があって、細かいところに目が付きにくいといいますか、いつでも敵に目が向いていたせいか内側の人間は誰でも信用しやすいといいますか、どこに行ってもお父さまの興味はすべて布陣だとか武器の在庫に集中する……とにかく視察に母が同行する件に関しては様々な理由もあったのですが。
他の私的な用事のときにも、両親はいつも二人で過ごしていました。
そして私もまた、弟と共に行動することが多かったのです。
自然と私は生涯領地で過ごし、当主となる弟を支えていく考えを育んでいたのでしょう。
だから共に学ぶこと、鍛えることも大切にしていて……。
家族のことを思い出していたら、また胸の奥がじんわりと熱くなってしまいました。
慣れたと思ったばかりですが、そうもいかないようです。
「そちらの線であれば……筋は通るな」
考えごとをしていたら、侯爵様が何か結論を出されました。
どんな筋が通ったか、詳しく教えて頂けるのでしょうか。
「すまないが、もう少し調査してから話をさせてくれ。身内の話ならばこそ、慎重にならねばならないと思っている。だが……ひとまずは互いに想い人などいないと分かったことだし。だから、その──」
侯爵様は言葉を止めて、何か思案なさっておいでです。
この渋いお顔は、実は想い人はいないがこの結婚をよく思ってはいなかった、といったような私には厳しいお話が始まるのでは……。
「改めて初夜をはじめてもいいだろうか」
侯爵様が何か言いました。
顔を背けていた侯爵様が、しばらくして問いました。
もうこちらを見詰めています。
どちらに顔が向いているにせよ、相変わらず手はがっしりと捕らえられたままで。
そろそろ本当に捕獲されている気分です。
「……身内からです」
さすがに誰かは濁しておきました。
彼女たちも利用されている可能性がありますからね。
それはそれで失態ですし、こんな遠くの地で他貴族に身内の恥を晒すのはあんまりです。
家の問題ですから、まずは自領で対処した方が良いでしょう。
我が家にもすぐに調査をするよう促さなければ……王都にも一報を入れて、その後に父でしょうか。
こういうとき、物理的な距離の問題は大きな支障となりますね。
いつも隣接する敵国ばかり睨み付け、国内の情勢に疎いところは反省点です。
「そうだろうな。王都の情報を信頼出来る者から得るというのは当然のことだ。だがそれは……もしやとは思うが、辺境伯殿の弟御、君の叔父上殿ではなかったか?」
何故ここで叔父様の話題に?
「そちらの王都での統括職は彼なのだろう?うちの同じ立場の者と接触し、話は通してあったはずなのだがね。私からの手紙もうちの者から彼へと託したはずだ」
確かに王都といえば、叔父様ですが。
叔父様は……思い出すお顔がぼやけています。
父は兄として叔父のことをそれは可愛がっていたようで、今でも甘い対応をしがちだと聞いています。
それを母が時折びしっと正し……つまりかなり甘えた方だそうで。
それも領内での話らしく。
王都の華やかな暮らしや、他貴族との社交は性に合っているとのことで、我が領地の王都代表は叔父がずっと務めていました。
そして母が怖いのか、それとも合わないのか、自身では領地に戻りたがらず、情報や手紙などの伝搬には人を使うことが多かったです。
だから会ったことも数えるくらいで。
その妻である方はほとんど領地に戻ってきませんので、もっとお顔を知りません。
叔父様が戻って来たときにも何故か、奥様はご一緒されず。
そんな二人の娘である従姉妹たちもまた、叔父様と一緒に戻ったことはありませんでした。
けれども領地は好むのか、姉妹だけで王都と領地を幾度となく往来しておりましたね。
この通りですから、従姉妹たちは叔父様から何の話も聞いていない可能性はあります。
このように思い返してみますと、叔父一家について私はさほど知らないのだと気付きました。
従姉妹たちは領地に戻るとよく話してくれましたが、両親の話はほとんど聞かなかったのです。
我が家と大分違った関係性であったことに、まさかこんな遠くの侯爵領に来てから気付くだなんて。
どちらが悪いとは言いません。
家族の形はそれぞれでいいと思いますし、当主家とそうでない違いもあるでしょう。
領地と王都、拠点としている場所柄の影響もあるはずです。
ただ我が家は共に行動することを好む家族だった、ということ。
たとえば父と母は、どこかに出掛けるときにはいつも一緒でした。
それは領内の視察のときにもそうで。
お父さまが内政的な部分で少々頼りない部分があって、細かいところに目が付きにくいといいますか、いつでも敵に目が向いていたせいか内側の人間は誰でも信用しやすいといいますか、どこに行ってもお父さまの興味はすべて布陣だとか武器の在庫に集中する……とにかく視察に母が同行する件に関しては様々な理由もあったのですが。
他の私的な用事のときにも、両親はいつも二人で過ごしていました。
そして私もまた、弟と共に行動することが多かったのです。
自然と私は生涯領地で過ごし、当主となる弟を支えていく考えを育んでいたのでしょう。
だから共に学ぶこと、鍛えることも大切にしていて……。
家族のことを思い出していたら、また胸の奥がじんわりと熱くなってしまいました。
慣れたと思ったばかりですが、そうもいかないようです。
「そちらの線であれば……筋は通るな」
考えごとをしていたら、侯爵様が何か結論を出されました。
どんな筋が通ったか、詳しく教えて頂けるのでしょうか。
「すまないが、もう少し調査してから話をさせてくれ。身内の話ならばこそ、慎重にならねばならないと思っている。だが……ひとまずは互いに想い人などいないと分かったことだし。だから、その──」
侯爵様は言葉を止めて、何か思案なさっておいでです。
この渋いお顔は、実は想い人はいないがこの結婚をよく思ってはいなかった、といったような私には厳しいお話が始まるのでは……。
「改めて初夜をはじめてもいいだろうか」
侯爵様が何か言いました。
38
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる