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20.お部屋が記憶を刺激します
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「それは私たちも嬉しゅうございます」
シシィは笑顔でしたから、悪いことは言っていないと思うのですが。
他の侍女たちに向けてほんの一瞬鋭い視線を投げていました。
その一瞬が「調子に乗るなよ」と部下に目力で訴えていた自領の騎士団長の鋭い眼光と重なって、身震いしそうになります。
あの目はとても素敵でしたが、まさかこんなところで同じ目を見られるとは。
ごくり。
喉を鳴らしてしまいました。
気を取り直して侍女たちを観察します。
口を動かしながら手もよく動く素晴らしい侍女たちです。
周りの状況を把握して的確な声掛けをしつつ、自分も戦うという姿は戦場においての理想でした。
ですから私も動きながら考えて言葉を出そうとするのですが、どうもうまくいきません。
父はよく「お前は直感で動くとだいたい上手くいくから、考えなくていい」と言っていましたね。それから「自分も同じタイプだから分かる」とも。
現場の指揮官が父ではないのは、そういうことなのです。
かつて父は国境で隣国の騎士たちとちょっとした揉め事が起きたときにも、騎士団長に指揮を預けて最前線に飛んでいき、あとでこってりまだ夫人でなかった母に叱られたということがありました。
その揉め事のその後であれば、ご安心を。
(物理的に)息つく間もなく蹴散らしてやった、と父が言っていましたからね。
私もあと少し早く生まれていたら、参戦したかったです。
こちらの侍女たち、実は凄い力を秘めているのではないでしょうか。
鍛えたら実戦で大活躍しそうで、ついつい期待を込めて観察してしまいます。
けれどもだからこそ気になることもあるのです。
私の専属侍女は五人も必要ですか?
そんなに要りませんよと最初に伝えておきました。
けれども侯爵家では普通のことですと言われましたので従うことにしたのです。
それでも思ってしまうのですよねぇ。
本当に必要ですか?って。
過剰な兵力は勿体ないですし。適所への配置が大事です。
いつも五人揃っているので念のため確認しましたところ、ちゃんと休暇はあるそうで、そういうときは四人になるとか。
あら?
だけど客間にいるときから五人揃っている日しかなかったような……。
休暇ってどれくらいの頻度であるのでしょうか。
あとで侯爵様に使用人のお休みがどうなっているか尋ねてみたいところです。
休息を取らなければ良き騎士にはなれません。
ついつい真面目な騎士ほど訓練を休みなく続けてしまうのですが、それはかえって身体を壊したり、成長を阻害したり、望まぬ結果を得るものなのです。
だから休暇を取ることは、故郷では義務の一環でした。
それは騎士だけに留まらず、どのお仕事の人たちにも適用されています。
ちなみに父と母も休んでいましたし、私やアルにも休暇と称して何もしない日が設けてありました。
休暇とは自由に動ける日ではありません。何かしたら怒られる日、私たち姉弟は休暇をそう呼び変えていたものです。
せっかく予定がないのだから、遠乗りにでも出かけるか、要塞の見廻りをするか、あるいは森林の害獣退治……といったような楽しいことをしようとすると、母が扇を持って部屋の前に立っています。
だから私は、休暇となるとこっそりあの部屋に忍び込んでいました。
そういえば、あの部屋に行こうとするときに母が部屋の前で立っていることはありませんでしたね。
胸がじんわりと温まってきました。
この邸の客間で過ごしていたときよりも故郷を頻繁に思い出すようになったのは、この部屋のせいではないでしょうか。
この部屋はあまりにあの部屋に似すぎています。
この結婚が少しでも家のためになっていますように。
目元のお化粧が始まりましたので、また目を閉じて私は祈りました。
私があの家に生まれた役目をちゃんと果たせているといいです。
シシィは笑顔でしたから、悪いことは言っていないと思うのですが。
他の侍女たちに向けてほんの一瞬鋭い視線を投げていました。
その一瞬が「調子に乗るなよ」と部下に目力で訴えていた自領の騎士団長の鋭い眼光と重なって、身震いしそうになります。
あの目はとても素敵でしたが、まさかこんなところで同じ目を見られるとは。
ごくり。
喉を鳴らしてしまいました。
気を取り直して侍女たちを観察します。
口を動かしながら手もよく動く素晴らしい侍女たちです。
周りの状況を把握して的確な声掛けをしつつ、自分も戦うという姿は戦場においての理想でした。
ですから私も動きながら考えて言葉を出そうとするのですが、どうもうまくいきません。
父はよく「お前は直感で動くとだいたい上手くいくから、考えなくていい」と言っていましたね。それから「自分も同じタイプだから分かる」とも。
現場の指揮官が父ではないのは、そういうことなのです。
かつて父は国境で隣国の騎士たちとちょっとした揉め事が起きたときにも、騎士団長に指揮を預けて最前線に飛んでいき、あとでこってりまだ夫人でなかった母に叱られたということがありました。
その揉め事のその後であれば、ご安心を。
(物理的に)息つく間もなく蹴散らしてやった、と父が言っていましたからね。
私もあと少し早く生まれていたら、参戦したかったです。
こちらの侍女たち、実は凄い力を秘めているのではないでしょうか。
鍛えたら実戦で大活躍しそうで、ついつい期待を込めて観察してしまいます。
けれどもだからこそ気になることもあるのです。
私の専属侍女は五人も必要ですか?
そんなに要りませんよと最初に伝えておきました。
けれども侯爵家では普通のことですと言われましたので従うことにしたのです。
それでも思ってしまうのですよねぇ。
本当に必要ですか?って。
過剰な兵力は勿体ないですし。適所への配置が大事です。
いつも五人揃っているので念のため確認しましたところ、ちゃんと休暇はあるそうで、そういうときは四人になるとか。
あら?
だけど客間にいるときから五人揃っている日しかなかったような……。
休暇ってどれくらいの頻度であるのでしょうか。
あとで侯爵様に使用人のお休みがどうなっているか尋ねてみたいところです。
休息を取らなければ良き騎士にはなれません。
ついつい真面目な騎士ほど訓練を休みなく続けてしまうのですが、それはかえって身体を壊したり、成長を阻害したり、望まぬ結果を得るものなのです。
だから休暇を取ることは、故郷では義務の一環でした。
それは騎士だけに留まらず、どのお仕事の人たちにも適用されています。
ちなみに父と母も休んでいましたし、私やアルにも休暇と称して何もしない日が設けてありました。
休暇とは自由に動ける日ではありません。何かしたら怒られる日、私たち姉弟は休暇をそう呼び変えていたものです。
せっかく予定がないのだから、遠乗りにでも出かけるか、要塞の見廻りをするか、あるいは森林の害獣退治……といったような楽しいことをしようとすると、母が扇を持って部屋の前に立っています。
だから私は、休暇となるとこっそりあの部屋に忍び込んでいました。
そういえば、あの部屋に行こうとするときに母が部屋の前で立っていることはありませんでしたね。
胸がじんわりと温まってきました。
この邸の客間で過ごしていたときよりも故郷を頻繁に思い出すようになったのは、この部屋のせいではないでしょうか。
この部屋はあまりにあの部屋に似すぎています。
この結婚が少しでも家のためになっていますように。
目元のお化粧が始まりましたので、また目を閉じて私は祈りました。
私があの家に生まれた役目をちゃんと果たせているといいです。
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