66 / 96
66.従姉妹が知らない人のようでした
しおりを挟む
「また何か勘違いをしているようね。ミシェルは伯の娘ですよ」
お母さまの静かな怒りを受け止めてもなお、ミーネは叫びました。
本当にこんなに強い子だったことには驚きです。
「おばさまたちにとっては姪なのでしょう?それならわたくしたちと同じじゃない!」
「同じではありません。ミシェルはわたくしたち夫婦の子だと言っています」
「だぁかぁらぁ。それがおかしいって言っているのよ!」
不貞の子でなかったことに心からほっとしていたのですが。
私にはまだおかしな点があるのでしょうか?
今までは生まれの卑しい私を、これまで大切に育ててくれた両親や、アルと差を付けず親切にしてくださった領内の皆様のために、少しでもお役に立てたらと願ってきたのですが。
それが違うと分かった今も、これまで皆様に良くしていただきながらお役に立てなかったことは事実で、皆様に恩返し出来たらと願う気持ちは変わりませんでした。
無事に侯爵家に嫁ぎ妻となれましたから、少しは家の役に立っていると嬉しいなと思います。
けれどもまだまだ足りていないのかもしれません。
ミーネは大変怒っておりましたが、やはりレーネは俯いていて顔色が悪く見えました。
「お姉さまも黙っていないで、何とか言いなさいよ!」
それにやっとミーネも気が付いたようです。
レーネの顔が少し上がって、けれども視線は落ちたままでした。
「わたくしはおかしいなと思っていたのです」
震える声はそのように語ります。
するとミーネの怒りは、今度はレーネへと向かいました。
「何ですって?どういうことよ!」
「妹の子だとは聞いておりましたけれど。お母さまから聞くお話とのずれを感じていて」
「なによ、ずれって。どういうことよ」
ミーネがどれだけ苛立っているかは、その口調から分かりました。
おもちゃを取り上げられたミーネが大泣きしていた幼い日々が重なります。
「お母さまは、おばさまのことを嫌っていたでしょう?それはおばさまが本性を見せずにおじさまに選んでもらったせいだとあなたも聞いていたわね?」
恐ろしくて、母の顔は見られませんでした。
まだ扇の音は鳴っていません。
「そこにもう一人、お母さまの嫌いな女が出てきたじゃないの」
「覚えていないわ!」
「そう、残念だわ。お母さまはいつもこう言っていたのよ。あの女も後押しをしてくれたらいいものを、可愛がってやっても役に立たないだけでなく、懐きもしない可愛げのない女だったって。だから亡くなってせいせ……つまりそういうことよ」
途中で言葉を止めたレーネは、最後にきゅっと唇を噛んでいました。
みしっと扇を潰す……いえ、握り締める音を聞いた気がするのですが、それは気のせいだと思っておくことにします。
「つまりどういうことよ!」
「いいのよ、分からないならもう」
「良くないわ!ミシェルお姉さまがわたくしたちより格下であることは変わらないのよね?」
レーネはいつまでも妹であるミーネの顔を見ませんでした。
やっとその視線が上がりますと、今度はお母さまに問い掛けます。
「父はすでに除籍され、母も離縁ののち実家には戻れなかったのですね?」
「そう言いましたよ」
「分かりました。王都での裁きを受け入れます」
「お姉さま!」
「ミーネ、わたくしたちはもう平民なのですわ。平民として貴族相手に裁かれることがどういうことか、さすがにあなたでも分かるわよね?」
「なによ、馬鹿にして!」
「馬鹿にしていないわ。辺境伯家の庇護下にないわたくしたちなど、王都では誰もお呼びでないことは、分かっているわね?」
「うるさいわね。いつもいつもお小言ばかり。賢しい女だからお姉さまは嫌われるのよ!それならこういうときこそ、役に立ちなさいよね!」
まぁ、なんてこと。
ミーネは、レーネにも厳しかったのですね。
「そうだわ、お姉さま。お一人で裁かれてきたらいいわよ。そうよ、全部お姉さま一人のせいにすればいいんだわ。でも、だめね。それでは足りないわ。ミシェルお姉さまだけが幸せになるなんて許せないもの!」
鳥肌が立つような感覚があって腕を擦ろうとしたら、先にジンに擦られてしまいました。
ここにいるのは、本当に私の知っている可愛いミーネなのかしら?
記憶のどのお顔とも、今のミーネの表情が一致しません。
お母さまの静かな怒りを受け止めてもなお、ミーネは叫びました。
本当にこんなに強い子だったことには驚きです。
「おばさまたちにとっては姪なのでしょう?それならわたくしたちと同じじゃない!」
「同じではありません。ミシェルはわたくしたち夫婦の子だと言っています」
「だぁかぁらぁ。それがおかしいって言っているのよ!」
不貞の子でなかったことに心からほっとしていたのですが。
私にはまだおかしな点があるのでしょうか?
今までは生まれの卑しい私を、これまで大切に育ててくれた両親や、アルと差を付けず親切にしてくださった領内の皆様のために、少しでもお役に立てたらと願ってきたのですが。
それが違うと分かった今も、これまで皆様に良くしていただきながらお役に立てなかったことは事実で、皆様に恩返し出来たらと願う気持ちは変わりませんでした。
無事に侯爵家に嫁ぎ妻となれましたから、少しは家の役に立っていると嬉しいなと思います。
けれどもまだまだ足りていないのかもしれません。
ミーネは大変怒っておりましたが、やはりレーネは俯いていて顔色が悪く見えました。
「お姉さまも黙っていないで、何とか言いなさいよ!」
それにやっとミーネも気が付いたようです。
レーネの顔が少し上がって、けれども視線は落ちたままでした。
「わたくしはおかしいなと思っていたのです」
震える声はそのように語ります。
するとミーネの怒りは、今度はレーネへと向かいました。
「何ですって?どういうことよ!」
「妹の子だとは聞いておりましたけれど。お母さまから聞くお話とのずれを感じていて」
「なによ、ずれって。どういうことよ」
ミーネがどれだけ苛立っているかは、その口調から分かりました。
おもちゃを取り上げられたミーネが大泣きしていた幼い日々が重なります。
「お母さまは、おばさまのことを嫌っていたでしょう?それはおばさまが本性を見せずにおじさまに選んでもらったせいだとあなたも聞いていたわね?」
恐ろしくて、母の顔は見られませんでした。
まだ扇の音は鳴っていません。
「そこにもう一人、お母さまの嫌いな女が出てきたじゃないの」
「覚えていないわ!」
「そう、残念だわ。お母さまはいつもこう言っていたのよ。あの女も後押しをしてくれたらいいものを、可愛がってやっても役に立たないだけでなく、懐きもしない可愛げのない女だったって。だから亡くなってせいせ……つまりそういうことよ」
途中で言葉を止めたレーネは、最後にきゅっと唇を噛んでいました。
みしっと扇を潰す……いえ、握り締める音を聞いた気がするのですが、それは気のせいだと思っておくことにします。
「つまりどういうことよ!」
「いいのよ、分からないならもう」
「良くないわ!ミシェルお姉さまがわたくしたちより格下であることは変わらないのよね?」
レーネはいつまでも妹であるミーネの顔を見ませんでした。
やっとその視線が上がりますと、今度はお母さまに問い掛けます。
「父はすでに除籍され、母も離縁ののち実家には戻れなかったのですね?」
「そう言いましたよ」
「分かりました。王都での裁きを受け入れます」
「お姉さま!」
「ミーネ、わたくしたちはもう平民なのですわ。平民として貴族相手に裁かれることがどういうことか、さすがにあなたでも分かるわよね?」
「なによ、馬鹿にして!」
「馬鹿にしていないわ。辺境伯家の庇護下にないわたくしたちなど、王都では誰もお呼びでないことは、分かっているわね?」
「うるさいわね。いつもいつもお小言ばかり。賢しい女だからお姉さまは嫌われるのよ!それならこういうときこそ、役に立ちなさいよね!」
まぁ、なんてこと。
ミーネは、レーネにも厳しかったのですね。
「そうだわ、お姉さま。お一人で裁かれてきたらいいわよ。そうよ、全部お姉さま一人のせいにすればいいんだわ。でも、だめね。それでは足りないわ。ミシェルお姉さまだけが幸せになるなんて許せないもの!」
鳥肌が立つような感覚があって腕を擦ろうとしたら、先にジンに擦られてしまいました。
ここにいるのは、本当に私の知っている可愛いミーネなのかしら?
記憶のどのお顔とも、今のミーネの表情が一致しません。
23
あなたにおすすめの小説
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる