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番外編
セイディちゃんの美味しい天気予報♪②
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もぐもぐもぐもぐ。
セイディの口がプリンを食しているにしては珍しく長く動いている。
やがて止まったところで、最初から上がっていた口角はうんと上がった。
キラキラ光る瞳は一段と輝きを増して、テーブルの脇に立っていた男を映す。
「すばらしいおあじです。るーす、がんばりました。よちよちします!」
すでに頭を下げていた料理長のルースは、感極まってしまったようで「こちらこそ、ありがたきっ……」と言葉を途中で詰まらせた。
決して誰かに睨まれたから言葉を止めたわけではない。
この屋敷でジェラルドの睨みにそんな力はないのだから。
さて公爵は誰か。
涙ぐんだルースが「風のない室内向けとはいえ、厨房から運びますからね。高さを出しても絶対に崩れないようにと考えまして。いつもより大分固めに作りましたので、セイディさまのお口に合うか心配していたのですよ。こう高さを出しますと火加減も難しく特に苦労しましたところが──」なんていつも大人しいルースにしては珍しく講釈を垂れはじめたところを一度はしっかり睨み付けて、その後も止まらない声をずっと耳に入れながらも。
ジェラルドは特別に高いプリンを見詰め考えていた。
これは、どこかで見たような……。
高さもさることながら、クリームや果物で飾られたこの形。
そうだこれは……。
「パフェというものではないか」
「ちがいます。とくべつにたかーいぷりんです!」
すかさず訂正が入って、ジェラルドは無言で頷いた。
これは特別に高いプリンだ。
セイディがそう言うのだから、それでいい。
しかし何故崩れないのか。
ジェラルドにまた疑問が湧いた。
力加減の苦手なセイディが横から縦から思うままにスプーンで掬っていくのに。
いつまでも縦に伸びたその形を保っている特別に高いプリン。
怪しい。怪しいな。これは怪しいぞ。
気になってしまったジェラルドは、つい真剣にプリンを見詰めてしまったが。
怪しい手はないし、妙な声も届かない。
うん、何故だ?
このプリンはどうなっている?
まるで浮いているようだぞ?
「とくべつにたかーいぷりんは、せいでぃがたべます!るどはあとでです!」
あまりに凝視しているから物欲しそうに見ていると思われたか。
取るつもりなどないこと、でもセイディのお腹が一杯になったあとはルドが全部食べるよと、それは熱心に説明するうち、ジェラルドは特別に高いプリンの秘密を暴こうとしていたことを忘れてしまった。
しかし思い出される機会はすぐに巡る──。
やがてお腹がいっぱいになったセイディは、自ら窓に近付いて、外を見上げた。
両手を掛けてゆっくりと窓を開き、流れ込む風にすんすんと鼻を鳴らし。
「あしたはさいきょうのぷりんびよりです!るーす、さいきょうのとくべつなたかーいぷりんをつくります!たかーいはこのくらいです!」
うんと背伸びして。
セイディは今日もご機嫌だ。
まだ席に着いていたジェラルドは、侍従と密談する。
「セイディさまの言う通り明日は大嵐となりますが、ご安心ください主さま。すでに領民たちへの注意喚起は済ませ、各自大嵐の対策を最優先に動いております」
「本当に待ってくれ。どうして明日の天気が読める?どこを見て分かると言う?」
「主さまは嗜みが足りませんね」
「るどはたりません!」
窓辺にいたと思ったのに、いつの間にか横に立ち会話に参加しているセイディに誰も驚きを示さない。
それどころか「セイディさまはこの家の素質があり過ぎますね」「えぇ間違いなく主さま以上に」「将来が楽しみですな」「さすがは大奥様が一から育てた淑女」という聴こえぬ声の会話があったとかなかったとか、やっぱりあったとか。
しかしそれはジェラルドも知らない話。
「そんなっ。セイディ、どうかルドを見限らないでくれ。そうだ、ルドも嗜むから。一緒に嗜もう!」
「るどはたしなみしません。るどはおしごとします!」
「そんなっ!」
「しゅくじょのたちなみは、おとめのひみつでしゅっ!」
アルメスタ邸は雨の日も嵐の日も、いつだって平和だ。
勇者セイディが、プリンを嗜み、邸を守っている限り──。
(『セイディちゃんの美味しい天気予報♪』 完)
★★★★★
久しぶりの更新です。
こんな感じでまた忘れた頃に?こっそりと小話を置きに来る予定でいます。
完結後も読んでくださるみなさま、本当にありがとうございます♡
少しでも楽しんでいただけておりましたら嬉しいです。
セイディの口がプリンを食しているにしては珍しく長く動いている。
やがて止まったところで、最初から上がっていた口角はうんと上がった。
キラキラ光る瞳は一段と輝きを増して、テーブルの脇に立っていた男を映す。
「すばらしいおあじです。るーす、がんばりました。よちよちします!」
すでに頭を下げていた料理長のルースは、感極まってしまったようで「こちらこそ、ありがたきっ……」と言葉を途中で詰まらせた。
決して誰かに睨まれたから言葉を止めたわけではない。
この屋敷でジェラルドの睨みにそんな力はないのだから。
さて公爵は誰か。
涙ぐんだルースが「風のない室内向けとはいえ、厨房から運びますからね。高さを出しても絶対に崩れないようにと考えまして。いつもより大分固めに作りましたので、セイディさまのお口に合うか心配していたのですよ。こう高さを出しますと火加減も難しく特に苦労しましたところが──」なんていつも大人しいルースにしては珍しく講釈を垂れはじめたところを一度はしっかり睨み付けて、その後も止まらない声をずっと耳に入れながらも。
ジェラルドは特別に高いプリンを見詰め考えていた。
これは、どこかで見たような……。
高さもさることながら、クリームや果物で飾られたこの形。
そうだこれは……。
「パフェというものではないか」
「ちがいます。とくべつにたかーいぷりんです!」
すかさず訂正が入って、ジェラルドは無言で頷いた。
これは特別に高いプリンだ。
セイディがそう言うのだから、それでいい。
しかし何故崩れないのか。
ジェラルドにまた疑問が湧いた。
力加減の苦手なセイディが横から縦から思うままにスプーンで掬っていくのに。
いつまでも縦に伸びたその形を保っている特別に高いプリン。
怪しい。怪しいな。これは怪しいぞ。
気になってしまったジェラルドは、つい真剣にプリンを見詰めてしまったが。
怪しい手はないし、妙な声も届かない。
うん、何故だ?
このプリンはどうなっている?
まるで浮いているようだぞ?
「とくべつにたかーいぷりんは、せいでぃがたべます!るどはあとでです!」
あまりに凝視しているから物欲しそうに見ていると思われたか。
取るつもりなどないこと、でもセイディのお腹が一杯になったあとはルドが全部食べるよと、それは熱心に説明するうち、ジェラルドは特別に高いプリンの秘密を暴こうとしていたことを忘れてしまった。
しかし思い出される機会はすぐに巡る──。
やがてお腹がいっぱいになったセイディは、自ら窓に近付いて、外を見上げた。
両手を掛けてゆっくりと窓を開き、流れ込む風にすんすんと鼻を鳴らし。
「あしたはさいきょうのぷりんびよりです!るーす、さいきょうのとくべつなたかーいぷりんをつくります!たかーいはこのくらいです!」
うんと背伸びして。
セイディは今日もご機嫌だ。
まだ席に着いていたジェラルドは、侍従と密談する。
「セイディさまの言う通り明日は大嵐となりますが、ご安心ください主さま。すでに領民たちへの注意喚起は済ませ、各自大嵐の対策を最優先に動いております」
「本当に待ってくれ。どうして明日の天気が読める?どこを見て分かると言う?」
「主さまは嗜みが足りませんね」
「るどはたりません!」
窓辺にいたと思ったのに、いつの間にか横に立ち会話に参加しているセイディに誰も驚きを示さない。
それどころか「セイディさまはこの家の素質があり過ぎますね」「えぇ間違いなく主さま以上に」「将来が楽しみですな」「さすがは大奥様が一から育てた淑女」という聴こえぬ声の会話があったとかなかったとか、やっぱりあったとか。
しかしそれはジェラルドも知らない話。
「そんなっ。セイディ、どうかルドを見限らないでくれ。そうだ、ルドも嗜むから。一緒に嗜もう!」
「るどはたしなみしません。るどはおしごとします!」
「そんなっ!」
「しゅくじょのたちなみは、おとめのひみつでしゅっ!」
アルメスタ邸は雨の日も嵐の日も、いつだって平和だ。
勇者セイディが、プリンを嗜み、邸を守っている限り──。
(『セイディちゃんの美味しい天気予報♪』 完)
★★★★★
久しぶりの更新です。
こんな感じでまた忘れた頃に?こっそりと小話を置きに来る予定でいます。
完結後も読んでくださるみなさま、本当にありがとうございます♡
少しでも楽しんでいただけておりましたら嬉しいです。
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楽しませていただき、ありがとうございました。
久しぶりにセイディに会えて、嬉しいです
もう少し、セイディに会いたいな