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番外編
若き公爵の大いなる悩み③
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ちょうどまた、書類をひとつ片付け終えたところだったジェラルドは、突然掛けられた侍従からの言葉に神妙な顔をして頷いた。
「それはずっと以前から考えていたとも。だがな……」
辛そうに眉を寄せ、目を細めたジェラルドは、己の心情を吐露する。
「私も共に遊びたいではないか!あれほど嬉しそうにしているのだぞ?」
この若き公爵の大いなる悩みの、そもそものはじまりは、本人によるもの。
ジェラルドがかつて幼き頃に読んでいた絵本をセイディに差し出したところからすべてははじまった。
アルメスタ家には、かつて幼いセイディに買い与えてきた女児向けの絵本も、大量に残されていたというのに。
そこであえて勇者の活躍する絵本を選んだジェラルドがすべて悪いのではないか。
しかしジェラルドにも言い分はある。
セイディを保護したばかりの頃、『番』という言葉を耳にするだけで、酷く恐怖するセイディを見ていられなかったジェラルドは、恋だ愛だと仄めかすような、その手の絵本を徹底的に避け、セイディの目の付く場所に置かぬようにと指示した。
そこで何故、勇者だの、魔王だの、龍だのが出て来る、ちょっと物騒とも言える絵本ばかりを選んでしまったのかについては、侍従らでさえ甚だ疑問を抱いているが。
救い出したときのセイディは、長く暴力を受けていたと考えられる身体をしていた。
そんな子ども相手にその選定は正気か?と、最初のときは皆、固唾を飲んで見守っていたものだったが。
意外とセイディは怯えることなく、読み聞かせるジェラルドの声にはしかと耳を傾けて、当時の出来る精一杯で目を輝かせ絵本を見詰めていたのだった。
すると同種の絵本は、自然セイディの元へと集まるようになり。
あれよあれよという間に、ある庭師やここにいる侍従などが勝手に暴走しては、勇者ごっこ遊びがはじまって。
ジェラルドはこうして苦悩することになっている。
おや?つまり悩みの根源は庭師や侍従のせいだったか?
気付いているのかいないのか、素知らぬ顔をして侍従は悩める主君に言った。
「ならばご一緒に遊べばよろしいではありませんか。新魔王として君臨すれば大変に喜ばれると思いますよ?」
「それだけはならん!想像するだけでも苦しい!」
聞く前からジェラルドの答えを知っていた侍従は、肩を竦める。
ジェラルドの悩みは単純だった。
セイディと一緒に遊びたい。
でもセイディの敵になるのは嫌だ。
セイディに切られるなんてとんでもない。
遊びでも何でもセイディにはいいところを見せたい。
凄い、強い、かっこいい、素敵だと褒められたい。
ならばと味方役になり、セイディの隣で剣を振って見せれば。
セイディの口から、もう一緒に遊ばない宣言が飛び出してくるのは早かった。
絶望感に苛まれたジェラルドが、仕事も手に付かなくなった期間は長く、周囲にはそれがとても鬱陶しくて……。
見かねた侍従が、侍女たちと協力し、あの手この手で主君を褒めて貰えるようセイディを優しく誘導して、なんとか危機を脱したところが、少し前の話になる。
だがまだ主君の気分は、まったく晴れていなかったようだ。
ずっと気にしていたとは……大変に主さまらしくて困る。
よって侍従としては、主君にはもう他へと意識を向けて欲しいところなのだ。
いつまでもこうしてうじうじうじうじと悩まれ続けていては大変に面倒で疲れ……アルメスタ家にとって良くないことだから。
だがその主君は、なかなか悩みを手離す気にはならないようで。
「ですから、別の新しい遊びに繋がる絵本をお渡ししてはどうかとご提案したのですよ?」
「気に入った遊びを取り上げてはならんだろう!セイディがあれほど嬉しそうにして、どこにいくにも大剣を持ち続けているのだぞ?それを今さら奪うなんて、酷いことは私には出来ない。だから大剣を使うセイディが登場する新しい絵本があればいいと思ってな。そこにルドも登場させて、活躍させれば、それは素晴らしい話になるだろう」
得意気に語った主君に、ついうっかりと白けた半眼を向けてしまう侍従なのであった。
「それはずっと以前から考えていたとも。だがな……」
辛そうに眉を寄せ、目を細めたジェラルドは、己の心情を吐露する。
「私も共に遊びたいではないか!あれほど嬉しそうにしているのだぞ?」
この若き公爵の大いなる悩みの、そもそものはじまりは、本人によるもの。
ジェラルドがかつて幼き頃に読んでいた絵本をセイディに差し出したところからすべてははじまった。
アルメスタ家には、かつて幼いセイディに買い与えてきた女児向けの絵本も、大量に残されていたというのに。
そこであえて勇者の活躍する絵本を選んだジェラルドがすべて悪いのではないか。
しかしジェラルドにも言い分はある。
セイディを保護したばかりの頃、『番』という言葉を耳にするだけで、酷く恐怖するセイディを見ていられなかったジェラルドは、恋だ愛だと仄めかすような、その手の絵本を徹底的に避け、セイディの目の付く場所に置かぬようにと指示した。
そこで何故、勇者だの、魔王だの、龍だのが出て来る、ちょっと物騒とも言える絵本ばかりを選んでしまったのかについては、侍従らでさえ甚だ疑問を抱いているが。
救い出したときのセイディは、長く暴力を受けていたと考えられる身体をしていた。
そんな子ども相手にその選定は正気か?と、最初のときは皆、固唾を飲んで見守っていたものだったが。
意外とセイディは怯えることなく、読み聞かせるジェラルドの声にはしかと耳を傾けて、当時の出来る精一杯で目を輝かせ絵本を見詰めていたのだった。
すると同種の絵本は、自然セイディの元へと集まるようになり。
あれよあれよという間に、ある庭師やここにいる侍従などが勝手に暴走しては、勇者ごっこ遊びがはじまって。
ジェラルドはこうして苦悩することになっている。
おや?つまり悩みの根源は庭師や侍従のせいだったか?
気付いているのかいないのか、素知らぬ顔をして侍従は悩める主君に言った。
「ならばご一緒に遊べばよろしいではありませんか。新魔王として君臨すれば大変に喜ばれると思いますよ?」
「それだけはならん!想像するだけでも苦しい!」
聞く前からジェラルドの答えを知っていた侍従は、肩を竦める。
ジェラルドの悩みは単純だった。
セイディと一緒に遊びたい。
でもセイディの敵になるのは嫌だ。
セイディに切られるなんてとんでもない。
遊びでも何でもセイディにはいいところを見せたい。
凄い、強い、かっこいい、素敵だと褒められたい。
ならばと味方役になり、セイディの隣で剣を振って見せれば。
セイディの口から、もう一緒に遊ばない宣言が飛び出してくるのは早かった。
絶望感に苛まれたジェラルドが、仕事も手に付かなくなった期間は長く、周囲にはそれがとても鬱陶しくて……。
見かねた侍従が、侍女たちと協力し、あの手この手で主君を褒めて貰えるようセイディを優しく誘導して、なんとか危機を脱したところが、少し前の話になる。
だがまだ主君の気分は、まったく晴れていなかったようだ。
ずっと気にしていたとは……大変に主さまらしくて困る。
よって侍従としては、主君にはもう他へと意識を向けて欲しいところなのだ。
いつまでもこうしてうじうじうじうじと悩まれ続けていては大変に面倒で疲れ……アルメスタ家にとって良くないことだから。
だがその主君は、なかなか悩みを手離す気にはならないようで。
「ですから、別の新しい遊びに繋がる絵本をお渡ししてはどうかとご提案したのですよ?」
「気に入った遊びを取り上げてはならんだろう!セイディがあれほど嬉しそうにして、どこにいくにも大剣を持ち続けているのだぞ?それを今さら奪うなんて、酷いことは私には出来ない。だから大剣を使うセイディが登場する新しい絵本があればいいと思ってな。そこにルドも登場させて、活躍させれば、それは素晴らしい話になるだろう」
得意気に語った主君に、ついうっかりと白けた半眼を向けてしまう侍従なのであった。
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