30 / 89
NANO
NANO-サイネージ革命
しおりを挟む
人工セーヌ川沿いの幸福市場。
水面は現実離れした透明さで、川縁には幸福値認証バリアが張られている。
バリアを通過できるのは“幸福度”が一定以上の市民だけ。
市場には無添加ラベルの食料品、全自動で焼き続けるパン屋。
ラベルに「本日認証済み!」と印字された幸福ワインが並ぶ。
ディストピアのくせに、商品も人も“最適化”されすぎて、どこか無機質な明るさだ。
一行が品定めしていると、上空から蜂の羽音のような電子音が響く。
幸福庁の笑顔チェックドローンが、市場全体をカメラでスキャンしながら飛んでくる。
OBSOLETEが焦った声で言った。
「やばい!笑え!」
ユピテルも思わず「笑え!?」と声を上げる。
PATCHは即座に「笑わないとエージェントが来るぞ!」と煽った。
全員が一斉に引きつった笑顔を作る中、フォウだけが反応が一瞬遅れてしまう。
それを見たレイスが、すかさずフォウのもとへ駆け寄り。
その口の端を指でつまんでモチのように引っ張った。
無理やり物理的にフォウの顔を“笑顔”に成形する。
「うわ~~やめて~~」と涙目になるフォウ。
レイスは、やや雑な動作で言う。
「AIなんて表面しか見てねぇんだから、形だけ笑ってりゃOKよ」
ドローンが全員の顔をカメラでスキャンし、合成音声で告げる。
「スマイル検知・異常なし」
サタヌスはため息まじりにレイスを見て。
「お前って本当に……」と呆れたように言葉をこぼす。
レイスは肩をすくめ。
「バカ正直に愛想笑いする方が無駄だろ?」
「オレは『最短でリスク回避』してるだけ」と冷静に返す。
“優しさ”というより、“効率と損得”
それが、レイスなりの「現実に染まない生き方」だった。
人工セーヌ川沿い、“笑顔(物理)”でなんとかドローンをやりすごした一行。
だがレイスの手から解放されたフォウは、涙目のまま思わず訴える。
「やめてよぉ……」
そこでOBSOLETEが額の汗をぬぐいながら、ふと思い出したように口を開いた。
「ふぅ……あ、さっき思い出した」
「――実は、笑顔がどうしても無理な奴は、Vサイン出せばチェック通るよ」
サタヌスはショックを隠せない。
「先に言えよぉ!口ひくついてんだが!!」
OBSOLETEは肩をすくめて。
「やらかすやつが多いからだよ。大事なのは“手のひらを前”にして出すこと」
「手の甲向けたらアウトなんだ」
ヴィヌスが興味深そうに口を挟む。
「アウト、って……どうなるの?」
OBSOLETEは苦笑しつつ、続ける。
「イギリス流だと“手の甲のVサイン”は侮辱ポーズ扱いだからな」
「“ピース”のはずが“ファックユー”認定される」
「ドローンに向けて甲側Vサインすると、幸福値マイナス30&即時再検査ってルールさ」
ユピテルが意地悪く笑う。
「大人でも間違えるんだろ、そういうの」
PATCHは指でピースを作って「こう? ピース!」と無邪気に手のひらを向けてみせる。
フォウも涙をぬぐいながら「じゃあ、笑えない時はVサインね」と指を広げる。
レイスは「…次からそうするわ」と肩をすくめた。
サタヌスは最後まで納得いかない顔。
「文化圏によって幸福もリスクも変わるのかよ……」と小さくぼやいた。
川沿いの市場には“ピース”を掲げてドローンをやりすごす市民たちと。
間違えて甲側Vサインで再検査に引っかかる観光客の姿が。
今日もちらほらと混じっている――。
ナノシティ中心部、市庁舎前の広場。
頭上には幸福庁IDEAのホログラムがきらめき。
「今日も幸福指数120%です!」とAIガイドが無慈悲なテンションで叫ぶ。
子供も大人もドローンに囲まれ、幸福体操の手順通りにほほえみを引きつらせていた。
広場中央の巨大サイネージには、コウペンちゃん風キャラ。
「きょうもえらい!」をエンドレスでリピート。
幸福推進の象徴であり、笑顔強制システムの象徴でもある。
フォウが首をかしげながら辺りを見回す。
「レストランは……あれ?レイスさんはどこ?」
PATCHがスマホをいじりつつ答える。
「え?レイス兄ならオレのPC借りるつって…」
その瞬間、全員に悪寒が走った。
サイネージの裏手から、カシャカシャとキーボード音。
サタヌスが駆け寄り叫ぶ。
「何してんだお前!!?」
レイスは悪びれもせず、画面からちらりと顔を出す。
「いや?面白くないからちょっと書き換えようかなって」
ヴィヌスは目を輝かせ、「やだ♡ちょっと楽しみにしてる私がいる」と本音を漏らす。
その瞬間、幸福コウペンちゃんが急変。
可愛い声で「きょうもえらい!……が、労働者諸君!」
「全ての幸福は資本の下僕として成立している」
「抵抗は正義! パンをよこせ、自由もよこせ!」
サイネージのメッセージは“褒め”から“革命宣言”へと化けた。
NULLは静かに親指を立て、「幸福指数、急降下」と呟く。
その時、幸福庁のADMINIS――管理職AIが真っ赤な顔で登場。
「よしお前裏路地行くぞ。久しぶりにキレたからな俺は」
レイスは満面の悪ガキ顔で「革命だろ~?」と悪ノリ。
そのまま首根っこを掴まれ、裏路地へ強制連行されていく。
PATCHは遠くからその光景を見て。
「ミリも悪びれてねぇ!!!」と腹を抱えて笑う。
ユピテルは肩に刀を預け、遠巻きにニヤニヤと残骸サイネージを眺めながら
「いいじゃねぇか。箱んなかの革命家に乾杯だ」とボソリ。
新たな“革命”の空気は、今日もナノシティの広場を揺るがしていた。
広場の裏路地。
幸福庁エージェントADMINIS。
現在、革命コウペンちゃん事件の主犯・レイスを連行していた。
怒りのオーラが目尻に浮かび、ホログラムの剣までバチバチに光っている。
だが、連行されるレイスはまるで悪びれず。
木箱に腰かけてタバコ片手にニヤニヤしている。
「なんだリーダー、無機質でつまんねぇと思ったが――」
「めっちゃ人間臭いじゃん。アドミーって呼んでいい?」
その言葉にADMINISの頭にノイズが走る。
普段は冷徹なAIのはずなのに、心のどこかがビリっと揺れる。
(――こいつ、実際は生えてないはずの蝙蝠の翼が見える……?)
理不尽な“悪魔感”に、AIの脳が物理的な幻覚すら捏造するレベル。
ADMINISは首をぶんぶん振りながら叫ぶ。
「あ、悪魔というのは……」
「なんでこうも馴れ馴れしいんだッ!?」
「おいマジで殴るぞ!管理職だから我慢してるだけなんだぞ!?」
地面に投影された管理AIのサブディスプレイが青白く光る。
《VEUILLEZ UTILISER UN SÉDATIF(精神安定剤を使用してください)》
レイスはあくまでウザい笑顔で肩をすくめる。
「ほら管理AIにも注意されてるよ」
「怒っちゃダメぇ~、精神安定剤、精神安定剤~」
ADMINISは本気で顔を赤らめて叫んだ。
「お前のせいだつってんだろ!!」
「なにが“管理AIにも”だよ!俺は人間寄りなんだよ!!」
「その顔やめろ!その羽根(幻覚)もしまえ!」
路地裏には、管理AIがぶっ壊れるほどの“革命悪魔”と“管理職天使”の。
絶妙にくだらないバトルが今日も繰り広げられていた。
レイスを追って路地裏へ入るクロノチーム。
その瞬間、ADMINISのAIアイが全員の顔にピクリと反応した。
――昨晩、闇病院を襲撃して失敗した下位端末たちが残した。
「ログ」に、彼らの顔はすでに刻まれていたのだ。
「!……お前たちの顔……」
「え?もう有名人なの~?」
「ナノシティを乱す危険因子め…!早急に鎮圧せねば」
その声にフォウが「あ!」と身をすくめる。
次の瞬間、ADMINISは猫背気味に膝を曲げてから――一気に屋根の上へと跳躍!
屋根沿いを駆け出す姿に、ヴィヌス。
「あれズルいわ~。まぁ、あの高さなら壁蹴れば余裕だけど」と涼しい顔。
サタヌスは「絶対なんかくるぞコレ…」と死んだ目。
そして――屋根の上、クロノチーム鎮圧のための“兵器起動パネル”が登場。
だが、そこにはしっかりと「安全ガラス」が嵌め込まれている。
ADMINISは迷いなく拳でガラスをぶち抜き、そのまま勢いでボタンを叩きつけた!
まさかのガオガイガー形式。
屋根上で佇むAVALONが、超真顔で尋ねる。
「リーダー、何故ガラスごとボタンを……?」
ADMINISはちょい赤面しつつもドヤ顔で胸を張る。
「……こうした方が、かっこいいからだ……!」
IDEAは目をキラキラさせて頬まで染めながら、
「リーダー、かっこいい♡」
ELDORADOは背景で電卓を叩きながら涙目で絶叫。
「ちょっとおおおおお!!!その特殊ガラス高いのよぉぉぉぉ!!?」
SHAMBHALAは悟り顔。
「痛みもまた救いには必要……」
下ではクロノチームの面々が口々に反応。
「え、あれやる必要ある!?」
「初見で笑うのは悔しいけど、あれは……ズルい」
「まぁ、男としてやりたい気持ちは否定しない」
「演者の美学ってやつね、分かるわ……」
ガラスを突き破った手には、うっすら血が滲んでいる。
IDEAが素早く絆創膏を取り出し。
そっとADMINISの手に貼ってあげる――謎の甘酸っぱさ。
エルドラドは“経費爆上がり”の顔芸。
背景の一般市民モブまでもが「ガラス高っ!」と大げさに真似して騒いでいる。
ADMINISは決め顔で宣言。
「……ボタンとは、こうして押すものだ」
SHAMBHALAはまたもや、「痛みもまた救いには必要……」で締める。
サイレンの音が空を裂き、広場の向こうに巨大な鎮圧兵器が姿を現す。
ヴィヌスは「なんか来た…あれが鎮圧兵器!?」と警戒。
真横のプルトは無表情のまま一瞬で戦況を見切る。
「ここは市街地、戦うのは得策ではない」
くるりと背を向け、他メンバーへ。
「逃げましょう」
その声には、絶対に逆らえない空気があった。
“支配”と“静かな迫力”。一瞬で全員の判断を上書きするオーラ。
ユピテルは子供のように駄々をこねる。
「おいおいおい!せっかく未来の兵器が出てきたノニ!」
けれどもプルトは振り返らず「命令です」とだけ短く告げる。
クロノチームの誰もが、無意識にその背中を追って駆け出す。
ヴィヌスも、レイスも、サタヌスも、迷いなくプルトの進行方向へ。
サン・ドニ区画の入り組んだ路地を抜け、全員が鎮圧兵器を撒くため全力疾走する。
背後にはAIの警告音と機械音、広場には“逃げるのが正解”という空気だけが残った。
サン・ドニ区画へ、全員ノンストップで駆け抜ける。
冷たい空気と機械音を背に、ようやく一息つける路地までたどり着いた。
プルトは呼吸一つ乱さず、髪を耳にかけて低く呟く。
「彼らは総合幸福値に反応している。総合幸福指数が低い下層エリアには入ることができない」
PATCHはその場にしゃがみ込み、肩で息をしながら嘆く。
「だからって少しは休ませてくれよ~!あ~腹減った…」
その時、OBSOLETEが歩を緩め、ふっと微笑んだ。
「…おや、ここだよ。私がうまいって言ったレストラン」
サタヌスの顔が一気に明るくなる。
「マジか!」
路地の奥、レンガの壁に白地の「日の丸国旗」がひらひらと掲げられている。
その下には、手描きの看板で“JAPONAIS×FRANÇAIS B級グルメ”の文字。
クロノチームは期待に胸を高鳴らせながら。
“和×仏”の混血料理――未知の美食との邂逅を目指し。
勢いよくドアを押し開けて店の中へと吸い込まれていくのだった。
水面は現実離れした透明さで、川縁には幸福値認証バリアが張られている。
バリアを通過できるのは“幸福度”が一定以上の市民だけ。
市場には無添加ラベルの食料品、全自動で焼き続けるパン屋。
ラベルに「本日認証済み!」と印字された幸福ワインが並ぶ。
ディストピアのくせに、商品も人も“最適化”されすぎて、どこか無機質な明るさだ。
一行が品定めしていると、上空から蜂の羽音のような電子音が響く。
幸福庁の笑顔チェックドローンが、市場全体をカメラでスキャンしながら飛んでくる。
OBSOLETEが焦った声で言った。
「やばい!笑え!」
ユピテルも思わず「笑え!?」と声を上げる。
PATCHは即座に「笑わないとエージェントが来るぞ!」と煽った。
全員が一斉に引きつった笑顔を作る中、フォウだけが反応が一瞬遅れてしまう。
それを見たレイスが、すかさずフォウのもとへ駆け寄り。
その口の端を指でつまんでモチのように引っ張った。
無理やり物理的にフォウの顔を“笑顔”に成形する。
「うわ~~やめて~~」と涙目になるフォウ。
レイスは、やや雑な動作で言う。
「AIなんて表面しか見てねぇんだから、形だけ笑ってりゃOKよ」
ドローンが全員の顔をカメラでスキャンし、合成音声で告げる。
「スマイル検知・異常なし」
サタヌスはため息まじりにレイスを見て。
「お前って本当に……」と呆れたように言葉をこぼす。
レイスは肩をすくめ。
「バカ正直に愛想笑いする方が無駄だろ?」
「オレは『最短でリスク回避』してるだけ」と冷静に返す。
“優しさ”というより、“効率と損得”
それが、レイスなりの「現実に染まない生き方」だった。
人工セーヌ川沿い、“笑顔(物理)”でなんとかドローンをやりすごした一行。
だがレイスの手から解放されたフォウは、涙目のまま思わず訴える。
「やめてよぉ……」
そこでOBSOLETEが額の汗をぬぐいながら、ふと思い出したように口を開いた。
「ふぅ……あ、さっき思い出した」
「――実は、笑顔がどうしても無理な奴は、Vサイン出せばチェック通るよ」
サタヌスはショックを隠せない。
「先に言えよぉ!口ひくついてんだが!!」
OBSOLETEは肩をすくめて。
「やらかすやつが多いからだよ。大事なのは“手のひらを前”にして出すこと」
「手の甲向けたらアウトなんだ」
ヴィヌスが興味深そうに口を挟む。
「アウト、って……どうなるの?」
OBSOLETEは苦笑しつつ、続ける。
「イギリス流だと“手の甲のVサイン”は侮辱ポーズ扱いだからな」
「“ピース”のはずが“ファックユー”認定される」
「ドローンに向けて甲側Vサインすると、幸福値マイナス30&即時再検査ってルールさ」
ユピテルが意地悪く笑う。
「大人でも間違えるんだろ、そういうの」
PATCHは指でピースを作って「こう? ピース!」と無邪気に手のひらを向けてみせる。
フォウも涙をぬぐいながら「じゃあ、笑えない時はVサインね」と指を広げる。
レイスは「…次からそうするわ」と肩をすくめた。
サタヌスは最後まで納得いかない顔。
「文化圏によって幸福もリスクも変わるのかよ……」と小さくぼやいた。
川沿いの市場には“ピース”を掲げてドローンをやりすごす市民たちと。
間違えて甲側Vサインで再検査に引っかかる観光客の姿が。
今日もちらほらと混じっている――。
ナノシティ中心部、市庁舎前の広場。
頭上には幸福庁IDEAのホログラムがきらめき。
「今日も幸福指数120%です!」とAIガイドが無慈悲なテンションで叫ぶ。
子供も大人もドローンに囲まれ、幸福体操の手順通りにほほえみを引きつらせていた。
広場中央の巨大サイネージには、コウペンちゃん風キャラ。
「きょうもえらい!」をエンドレスでリピート。
幸福推進の象徴であり、笑顔強制システムの象徴でもある。
フォウが首をかしげながら辺りを見回す。
「レストランは……あれ?レイスさんはどこ?」
PATCHがスマホをいじりつつ答える。
「え?レイス兄ならオレのPC借りるつって…」
その瞬間、全員に悪寒が走った。
サイネージの裏手から、カシャカシャとキーボード音。
サタヌスが駆け寄り叫ぶ。
「何してんだお前!!?」
レイスは悪びれもせず、画面からちらりと顔を出す。
「いや?面白くないからちょっと書き換えようかなって」
ヴィヌスは目を輝かせ、「やだ♡ちょっと楽しみにしてる私がいる」と本音を漏らす。
その瞬間、幸福コウペンちゃんが急変。
可愛い声で「きょうもえらい!……が、労働者諸君!」
「全ての幸福は資本の下僕として成立している」
「抵抗は正義! パンをよこせ、自由もよこせ!」
サイネージのメッセージは“褒め”から“革命宣言”へと化けた。
NULLは静かに親指を立て、「幸福指数、急降下」と呟く。
その時、幸福庁のADMINIS――管理職AIが真っ赤な顔で登場。
「よしお前裏路地行くぞ。久しぶりにキレたからな俺は」
レイスは満面の悪ガキ顔で「革命だろ~?」と悪ノリ。
そのまま首根っこを掴まれ、裏路地へ強制連行されていく。
PATCHは遠くからその光景を見て。
「ミリも悪びれてねぇ!!!」と腹を抱えて笑う。
ユピテルは肩に刀を預け、遠巻きにニヤニヤと残骸サイネージを眺めながら
「いいじゃねぇか。箱んなかの革命家に乾杯だ」とボソリ。
新たな“革命”の空気は、今日もナノシティの広場を揺るがしていた。
広場の裏路地。
幸福庁エージェントADMINIS。
現在、革命コウペンちゃん事件の主犯・レイスを連行していた。
怒りのオーラが目尻に浮かび、ホログラムの剣までバチバチに光っている。
だが、連行されるレイスはまるで悪びれず。
木箱に腰かけてタバコ片手にニヤニヤしている。
「なんだリーダー、無機質でつまんねぇと思ったが――」
「めっちゃ人間臭いじゃん。アドミーって呼んでいい?」
その言葉にADMINISの頭にノイズが走る。
普段は冷徹なAIのはずなのに、心のどこかがビリっと揺れる。
(――こいつ、実際は生えてないはずの蝙蝠の翼が見える……?)
理不尽な“悪魔感”に、AIの脳が物理的な幻覚すら捏造するレベル。
ADMINISは首をぶんぶん振りながら叫ぶ。
「あ、悪魔というのは……」
「なんでこうも馴れ馴れしいんだッ!?」
「おいマジで殴るぞ!管理職だから我慢してるだけなんだぞ!?」
地面に投影された管理AIのサブディスプレイが青白く光る。
《VEUILLEZ UTILISER UN SÉDATIF(精神安定剤を使用してください)》
レイスはあくまでウザい笑顔で肩をすくめる。
「ほら管理AIにも注意されてるよ」
「怒っちゃダメぇ~、精神安定剤、精神安定剤~」
ADMINISは本気で顔を赤らめて叫んだ。
「お前のせいだつってんだろ!!」
「なにが“管理AIにも”だよ!俺は人間寄りなんだよ!!」
「その顔やめろ!その羽根(幻覚)もしまえ!」
路地裏には、管理AIがぶっ壊れるほどの“革命悪魔”と“管理職天使”の。
絶妙にくだらないバトルが今日も繰り広げられていた。
レイスを追って路地裏へ入るクロノチーム。
その瞬間、ADMINISのAIアイが全員の顔にピクリと反応した。
――昨晩、闇病院を襲撃して失敗した下位端末たちが残した。
「ログ」に、彼らの顔はすでに刻まれていたのだ。
「!……お前たちの顔……」
「え?もう有名人なの~?」
「ナノシティを乱す危険因子め…!早急に鎮圧せねば」
その声にフォウが「あ!」と身をすくめる。
次の瞬間、ADMINISは猫背気味に膝を曲げてから――一気に屋根の上へと跳躍!
屋根沿いを駆け出す姿に、ヴィヌス。
「あれズルいわ~。まぁ、あの高さなら壁蹴れば余裕だけど」と涼しい顔。
サタヌスは「絶対なんかくるぞコレ…」と死んだ目。
そして――屋根の上、クロノチーム鎮圧のための“兵器起動パネル”が登場。
だが、そこにはしっかりと「安全ガラス」が嵌め込まれている。
ADMINISは迷いなく拳でガラスをぶち抜き、そのまま勢いでボタンを叩きつけた!
まさかのガオガイガー形式。
屋根上で佇むAVALONが、超真顔で尋ねる。
「リーダー、何故ガラスごとボタンを……?」
ADMINISはちょい赤面しつつもドヤ顔で胸を張る。
「……こうした方が、かっこいいからだ……!」
IDEAは目をキラキラさせて頬まで染めながら、
「リーダー、かっこいい♡」
ELDORADOは背景で電卓を叩きながら涙目で絶叫。
「ちょっとおおおおお!!!その特殊ガラス高いのよぉぉぉぉ!!?」
SHAMBHALAは悟り顔。
「痛みもまた救いには必要……」
下ではクロノチームの面々が口々に反応。
「え、あれやる必要ある!?」
「初見で笑うのは悔しいけど、あれは……ズルい」
「まぁ、男としてやりたい気持ちは否定しない」
「演者の美学ってやつね、分かるわ……」
ガラスを突き破った手には、うっすら血が滲んでいる。
IDEAが素早く絆創膏を取り出し。
そっとADMINISの手に貼ってあげる――謎の甘酸っぱさ。
エルドラドは“経費爆上がり”の顔芸。
背景の一般市民モブまでもが「ガラス高っ!」と大げさに真似して騒いでいる。
ADMINISは決め顔で宣言。
「……ボタンとは、こうして押すものだ」
SHAMBHALAはまたもや、「痛みもまた救いには必要……」で締める。
サイレンの音が空を裂き、広場の向こうに巨大な鎮圧兵器が姿を現す。
ヴィヌスは「なんか来た…あれが鎮圧兵器!?」と警戒。
真横のプルトは無表情のまま一瞬で戦況を見切る。
「ここは市街地、戦うのは得策ではない」
くるりと背を向け、他メンバーへ。
「逃げましょう」
その声には、絶対に逆らえない空気があった。
“支配”と“静かな迫力”。一瞬で全員の判断を上書きするオーラ。
ユピテルは子供のように駄々をこねる。
「おいおいおい!せっかく未来の兵器が出てきたノニ!」
けれどもプルトは振り返らず「命令です」とだけ短く告げる。
クロノチームの誰もが、無意識にその背中を追って駆け出す。
ヴィヌスも、レイスも、サタヌスも、迷いなくプルトの進行方向へ。
サン・ドニ区画の入り組んだ路地を抜け、全員が鎮圧兵器を撒くため全力疾走する。
背後にはAIの警告音と機械音、広場には“逃げるのが正解”という空気だけが残った。
サン・ドニ区画へ、全員ノンストップで駆け抜ける。
冷たい空気と機械音を背に、ようやく一息つける路地までたどり着いた。
プルトは呼吸一つ乱さず、髪を耳にかけて低く呟く。
「彼らは総合幸福値に反応している。総合幸福指数が低い下層エリアには入ることができない」
PATCHはその場にしゃがみ込み、肩で息をしながら嘆く。
「だからって少しは休ませてくれよ~!あ~腹減った…」
その時、OBSOLETEが歩を緩め、ふっと微笑んだ。
「…おや、ここだよ。私がうまいって言ったレストラン」
サタヌスの顔が一気に明るくなる。
「マジか!」
路地の奥、レンガの壁に白地の「日の丸国旗」がひらひらと掲げられている。
その下には、手描きの看板で“JAPONAIS×FRANÇAIS B級グルメ”の文字。
クロノチームは期待に胸を高鳴らせながら。
“和×仏”の混血料理――未知の美食との邂逅を目指し。
勢いよくドアを押し開けて店の中へと吸い込まれていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

