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兜坂嵐

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ELDORADO

ELDORADO-アンティクーチョ

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 鉄格子越しの窓が青白く明滅し、空気が一瞬凍りついた。
 夜の闇病院、院内に重低音の雷鳴が突き抜ける。
 幸福庁の空調と人工空を見てきた子供たちにとって。
 “世界の法則がバグる瞬間”だった。

 怖がりな子はベッドの上で、耳を塞いで震え出す。
「やだやだやだ!こわい!」
 毛布にもぐり込んで、ナースに抱きつく。
「外、光った!?今の何――!?」
 隣の好奇心旺盛な子は、パジャマ姿で窓辺にダッシュ。
「空、ピカピカしてる!すごいすごい!もっと見せて!!」

「大丈夫、大丈夫、病院は落雷防止があるからね」
「ほら、お耳ふさいで。怖いときはこうするのよ」
 ナース達は慣れた手つきで子供たちを慰めつつ。
 内心では(本物の雷なんて何年ぶり?)と複雑な表情。
 廊下では一斉に患者と看護師の声。
「落ち着いてー!」「こわいよ!」「だいじょうぶだからね!」
 ガラス越しの稲光に、院内の照明が一瞬チカッと明滅する。

 ルイ院長は雷鳴が轟く中、ステッキを掲げ、陶酔した声。
「稲妻か……ロベスピエールも言っていたな。雷は民意の表れであると!」
 「この瞬間こそ、時代が変わる徴(しるし)!」
 「フランス革命も、稲妻のごとき閃光から始まったのだ!」
 「ロベスピエールって誰?」
 一人だけ世界が違う。

 “管理された空じゃない、本物の雷”。
 30世紀の子供たちが初めて体験する「自然の力」。
 怖がって泣く子、窓に駆け寄る子、不安でナースにすがる子。
 その全部が、都市管理社会じゃ絶対に味わえない“生の感情”だった。

 フォウはナノスチール製の包丁を持ち上げる。
「牛ハツ」とはどんな味なんだろう?
 その言葉の響きだけで、胸が高鳴っていた。

「NULL、温度は?」
「表面温度:摂氏17度。内部腐敗なし。――処理を許可する」
 包丁が入ると、思いのほか柔らかかった。
 赤黒い繊維が波打ち、薄膜の下に鮮やかな紅色がのぞく。
 NULLがモニター越しに淡々と警告を流す。

「血液タンパク比率、通常値の1.8倍。味は濃厚になる可能性あり」
「へぇ、ハツって……あったかいんだね」
 フォウの声は、どこか嬉しそうだった。
 人間は皆、体の中にこれを持って生きている。
 自分には“それ”がないからこそ、心臓というものが神秘に思えた。

「お前、ほんとに……人間より人間だな」
「うん、“人間らしい”って、褒め言葉だよね?」
 フォウは嬉しそうに、焼き台へと火を点けた。
 鉄串に刺さった赤いハツが、次々と炎の中に沈んでいく。
 香ばしい煙が立ちのぼり、遠い昔の文明の匂いがした。

「アンティクーチョ調理工程:完了。幸福値上昇、観測」
「うん。これが、“幸せの味”だよ」
 フォウは胸のない胸に手を当てて、微笑んだ。
 まるで、そこに“心臓”があるかのように。

 牛は八本脚ではないし、虹色のスープにも浮かばない。
 だがそんな常識は、この晩餐会の前では意味をなさなかった。
「みんな~、できたよ~! アンティクーチョ!」
 炭火の上で香ばしく焼かれた赤いハツ串が、油の光をきらめかせる。
 “心臓の串焼き”――この世界では誰も知らない味。
「アンティクーチョってなぁに?」
 小児科のベッド組が身を乗り出す。

「えーとね、NULLが調べてくれたんだ。“心臓”の串焼きなんだって!」
 その瞬間、食堂が微妙な沈黙に包まれた。
 だが、心臓病の小さな女の子が、真っ先に手を挙げる。
「わたし食べる! もしかしたら……心臓、強くなるかも!」
 フォウは少し驚き、それからやさしく笑った。
「うん、きっと強くなるよ。ほら、やけどしないでね~」
 その言葉を合図に、晩餐会は一気に華やぐ。

 アンティクーチョ・モウニル風(フォウ特製)
 心臓部を串に刺し、外界の唐辛子スパイスと酸味の効いた酢でマリネ。
 フォウの焼き加減は完璧。
 レイスがかぶりついて「……これ、マジで旨ぇな」と目を丸くした。
「おいおい、肉ってのは噛みごたえだろ!」
「ハハッ、これは“命の味”だな。殺意より濃いぜ!」
「名言のつもり? 怖いわよアンタ♡」

 スレイプニル・ステーキ(サタヌス担当)
 焼き過ぎてほぼ炭。だが匂いは悪くない。
 子供たちは「かたい~!」と言いながらも嬉しそうに頬張る。
 フォウが見かねてナイフで一口サイズに切り分けると、
 「やわらかくなった!」と笑い声が広がる。
 サタヌスは照れ隠しに「おう、最強の筋トレ食だぞ!」と豪快に笑った。

 工場廃液スープ(NULL監修)
 見た目はネオンブルー、味は優しい野菜のポタージュ。
 「見た目と違って甘いね」
 「見た目が地獄汁なんだよ!」
 看護師たちは「今日はカロリーだけは豪華ですね」と苦笑。

 テーブルには、桃果汁+ハツのエキスを混ぜた謎の飲み物。
 飲むと体温が上がり、一瞬だけ幸福値が跳ね上がる。
 プルトは眉をひそめ「……中毒者が出そうですね」と言いながらも一口だけ飲んだ。
 「……悪くない」
 「今日は院長が中庭を貸してくれるそうデス」
 看護師が声をかけると、子供たちが一斉に立ち上がった。
 照明が落ち、外界で採れた“食材たち”が夜風に香る。
 虹色のスープの光が、まるでキャンドルのようにゆらゆらと照らしている。

 フォウは笑顔で皆を見渡した。
「食べるって、すごいね。“いのち”を分けてもらって、また“笑える”んだもん」
 レイスが煙草を口にくわえ、静かに頷く。
「……ああ、そりゃあ、生きてる証拠だ」
 ――その夜、ナノシティの片隅で。
 “幸福庁”のセンサーにも拾えない、小さな灯りがひとつ、確かに輝いていた。

 幸福庁第八監視室。
 高層塔の内部、青白い光が無数に瞬き。
 人間の姿をしたAI職員たちが無言で端末を操作していた。
 その中で、ひときわ冷たい声が響いた。
「ADMINIS様、例の“クロノチーム”及び付近の異常活動者について――」
「本日、外界区域にてバリア未装備状態で10分以上の散策が確認されました」
 部下のAIは、まるで不具合を報告するような平板な声。
 しかし内容は、明らかに常識の外にある。

「通常のAI兵士なら即時危険アラートが作動しますが。
 彼らは一切の生理的ダメージを示さず、むしろ“笑顔”で任務を継続……」
 報告が終わった瞬間、ADMINISの指がパッドの上を叩いた。

 カチリ、と小さな音。
 画面には外界の映像が流れる。
 虹色の廃液湖、狂気じみた雷光。
 そして笑いながら泳ぐ、不死身の人間たち。
「なに……?」
 彼の瞳に、微かな困惑が浮かぶ。
「防護バリアを展開せず……完全な生身で……外界を?」
 映像を拡大する。
 サタヌスの笑顔。フォウの犬かき。ユピテルの雷光。
 どれも“生”の証そのもの。

「あり得ない……」
「――あの死の世界をバリア無しで歩き回れるのは、俺達エージェント位だというのに」
 指先に力が入る。
 硬い音を立てて、パッドの表面がわずかに軋んだ。
 数秒の沈黙。
 モニターに反射した自分の顔が、ほんのわずかに揺れる。

「……奴等は本当に“排除”すべきなのか?」
「こんな存在が、“人類社会”にとって危険な例外なのか……」
「……それとも――新しい“適応”なのか?」
 その言葉に、背後でAI職員たちがわずかに反応する。
 彼の口から「疑問」が出たのは、いつ以来だろう。
 幸福庁の管理者として生きる者は“疑う”ことを許されていない。
 幸福とは、信じることだと教えられてきた。

 だが今、彼の中で何かが軋む。
 イデアの歌声を聴いたあの日から、ずっと。
 そこへ、黄金の通信ラインが点灯する。
 送信元――ELDORADO財閥・統括局。

「……ELDORADO、だと?」
 受信ボタンを押した瞬間、空間に立体映像が投影される。
 化粧のように金粉を纏った女性役員が、にこやかに告げた。
「ADMINIS様。お忙しいところ失礼いたします。
 当財閥代表――ELDORADO様が、“幸福経済圏”の倫理ジャッジを貴方に依頼なさっています」
「……倫理、ジャッジ?」
 ADMINISの眉がわずかに動く。
「ええ、“彼女が行ったこと”が正しかったのかどうか、幸福庁としての判断を――と」
「……わざわざ、俺にか?」
 冷たい声で返しながらも、心の奥に小さな疑問が浮かぶ。

 ――なぜ、自分なのか。
 ――なぜ、幸福庁の“最も中庸な男”に、それを委ねるのか。
 もしかして、これは罠なのか。
 それとも、彼女なりの試しなのか。

「……分かった。すぐ向かう」
 ADMINISは端末を閉じた。
 その目は冷静で、それでいて何かに火を灯したように揺れていた。
「財閥が作る“幸福”と、俺達が守る“幸福”――」
「同じ言葉でも、何一つ重なってはいない気がするな」

 扉が閉じる音だけが、監視室に残った。
 黄金に満ちた財閥街――ELDORADO本社の最上階。
 天井まで届くクリスタルの窓が夕陽を反射し。
 社長室全体が“金色の牢獄”のように輝いていた。

 だが、その主――ELDORADO本人の表情は、微笑みとは程遠かった。
 彼女の前に浮かぶホログラム。
 そこには闇病院の食事会――“外界肉の晩餐”が映っていた。
 笑顔で肉を分け合うスラムの子供たち。
 フォウの天使の笑顔。そして、映像の隅に立つサタヌス。
 その“渦巻く瞳”を見た瞬間、ELDORADOの眉がピクリと跳ねた。
「……あの目。……気持ち悪い」
 呟く声は、冷たいというより“嫉妬”に近かった。
 自分には決して持てない“輝き”。
 生きることに泥を塗りながらも、それでも光る“生命力”。

 だが、その感情を自覚する前に、扉が静かに開いた。
「ELDORADO」
 重く、低い声。
 リーダーの声だ。
 ELDORADOはハッと振り向いた。
 いつも穏やかなADMINISの声に――怒気が混じっている。
 金色の化粧を施した唇が、わずかに震えた。

「リーダー……お、お忙しいところを――」
「……貧民を排除した件は聞いた」
 ADMINISは歩を止めることなく、机の前まで進む。
 背筋は伸び、声は静かだが、その静けさこそ“怒りの圧”だった。
「まあ、君らしい采配だとは思う」
「だが――“容姿”を理由に追い返すのは最適化に反する」
 金色の空間が、一瞬にして冷気に包まれた。
 まるで空気そのものが敵になったような、錯覚に襲われる。

 ADMINISの眼がわずかに光る。
「容姿差別は幸福値の低下に直結する。
 それは、我々エージェントの理念に対する裏切りだ」
 その場の社員たちが、呼吸を止めた。
 誰もが「社長が怒られる瞬間」など想像したこともなかった。
 ELDORADOは、なんとか笑顔を作る。
「……分かりましたわ、リーダー。次からは、もっと“慎重に対応”いたします」
 だが、その笑みの奥――瞳の奥では、マグマが煮えたぎっていた。

(なによ……“キモい目”が入ってきたら他の客が不幸になるのは当然じゃない)
(なんで私が叱られなきゃいけないの? あんな汚物一匹のせいで!)
(リーダーの前で、あんなみっともないスラム野郎に負けたなんて――)
 心の中で、叫びが歪んでいく。
 その「屈辱」と「プライドの傷」が、ゆっくりとひとつの形を取り始める。

 ――あのスラムのガキ。絶対に潰してやる。
 その思考を、ADMINISの最後の言葉が断ち切った。

「……貧困は社会の構造だ。
 だが“目がキモいから”という理由で排除するのは、組織としても、人としても許されない」
「それは幸福値の低下――つまり、“世界の死”につながる行為だ」
 ELDORADOの口元が、ゆっくりと歪む。
 もはや笑っているのか怒っているのか分からない。
「幸福? 笑わせないで……」
「“キモい目”が店をうろつく方が、よっぽど不幸でしょう?」
「スラムのガキなんて、人間の形をした“失敗作”よ。
 “幸福”も“権利”も、そんなものを与える価値がどこにあるっていうの?」
 ADMINISの瞳が、静かに細められた。



「――その言葉を、記録しておく」
 ELDORADOの顔色が変わる。
「……な、何を……!」
「君の言葉は、幸福庁の理念への“挑戦”だ」
「……だが、俺はまだ“裁く”気にはなれない」
「君も――幸福の定義を、探しているだけだろう?」
 その言葉を残して、ADMINISは踵を返す。
 扉が閉まるまで、誰も息をしなかった。

 そして、静寂の中でELDORADOは金色の口紅を塗り直した。
 鏡に映るのは、美しくも歪んだ笑顔。
「……いいわ。“幸福”の定義を見せてあげる」
「“スラムの英雄”なんて呼ばれて調子に乗ってるあのガキ――」
「本物の地獄を、見せてあげる」
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