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Rhapsody
遺作は亡霊へ届く
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アンラ・マンユがチェス盤の上で腕を組み。
どこぞの取締役会みたいな表情で問いかけてきた。
「さて、その遺作を血眼で探していた様子だが――その先はどうするつもりだい?
パワーポイントの使用も許可するよ」
冗談めかした“社長スマイル”が胡散臭すぎて、空気は会議室さながら。
ウラヌスが即座に片手を挙げて突っ込む。
「あいにくここPCねぇんだわwww」
場が妙な一体感でどっと笑いに包まれる。
サタヌスが淡々と資料もなしに続ける。
「こいつが演じられることを、王族は粛清するくらいビビってた。
要は、“発表禁止の社外極秘案件”ってやつだ」
レイスが立ち上がり、仮想のプロジェクター画面を指差す仕草。
「今から俺らはこれを“演じる”。ターゲットはカリストとサロメ様の結婚式。
会場、王宮大ホール。リスクは全員の首」
ユピテルが座席を回転させながら。
「ま、つまりテロ。舞台型企業買収だな」
ニヤリと笑って、完全に“黒いベンチャー幹部”のノリ。
アンラ・マンユはパペットを上下に振りながら、頷く。
「うん、素晴らしいプレゼンだ。全員、行動力S評価だね!」
「では、KPI(Key Performance Indulgence)は“王族の動揺指数”としようか」
「どっちかっていうと“倒産寸前の帝国”に地雷しかける会議じゃねぇかこれ」
「いいね!うちら営業部は全力で騒ぎ担当やります!」
「アンタ経営陣側だろ?後方で株主ヅラして見てろ」
「社長、責任取る気ゼロだな」
アンラ・マンユはただ満足げに、チェス盤の端から彼らの“劇場型テロ会議”を眺めていた。
意外なことに、妨害はされなかった。
予想外な事態に戸惑う中、アンラ・マンユはパペットを掲げて満足げに言い放つ。
「妨害?するわけないだろう。うちの社員達がクビ(物理)覚悟で行うプレゼンだ、止めるわけがない」
サタヌスは思わず両手を広げる。
「就職した覚えはないんだが……!?」
ウラヌスが椅子ごと後ろにのけぞって爆笑する。
「世知辛えwww」
レイスは煙草をくるくる指で回しながら。
「人類は“無意識って株式会社”に就職してる……ま、そういう構造か」
本気で納得しちゃうのが、逆にコワい。
アンラ・マンユは“経営会議”さながらに、時計をチェックする。
「ちなみに、騎士の巡回は朝6時・昼1時・夕方5時。
旧貴族街に向かう時間は気をつけたまえ。
……うちはタイムカード厳しいからね」
「ブラック企業の匂いすんな……」
「経費出すならボーナスも出してくれよ~」
ユピテルは鼻で笑って。
「ハッ、今だけは感謝してやるよ。……じゃ、現場向かうか」
レイスが台本と地図を胸に抱え。
「“本社”に殴り込み。さあ、行こうぜ、クロノチーム」
と、誰にも通じないカッコつけをキメる。
クロノチームは手早く装備を整え、サンドイッチとコーヒーを掴み。
「これが真の“出勤飯”」と、誰かが言い出す。
サタヌスがナイフをベルトに差し、肩を鳴らす。
「社内会議より現場が性に合ってんだ、行こうぜ」
ウラヌスは新調した靴を自慢気に見せびらかし、笑う。
「ガラス靴より動きやすいから最高!」
ユピテルは胸ポケットに台本をねじ込み、続ける。
「最悪、燃やしてもいい覚悟で行くぞ」
「6時・1時・5時……タイムカードと同じじゃねぇか」
レイスが騎士の巡回時間を確認し、皮肉を飛ばす。
クロノチームがアルヴ座へと走り去る。
その背中を、アンラ・マンユはチェス盤の影の中でじっと見送っていた。
誰もいなくなった静寂の中、彼は無邪気な笑みを崩さぬまま。
パペット人形の手足を器用に操り始める。
その瞳の奥、何か別の闇がちらりと揺れる。
「やはり――王族を代替わりさせておいて正解だったね」
くぐもった声が、誰にも聞こえぬまま宙を舞う。
「71代目女王は、実につまらない女だった。
お前の顔は、パーツの寄せ集めというだけで壊れた」
淡々と指を動かしながら、あくまで楽しそうに人形の首をコトリと傾ける。
「その点、彼女――サロメは違う。
あの女と、あの連中なら……素晴らしいエンディングをもたらしてくれるだろう」
床にはいつのまにか、赤黒い染みがぽたぽたと広がっていく。
無垢な笑顔のまま。
「物語の舞台を“整える”のが私の仕事だよ」
と、誰にともなく囁く。
最近起きている王族の怪死-すべての“原因”が。
この“やり手若社長”の無邪気な指先にあるのだと。
誰も気付かないまま、舞台の幕は次の事件へと滑り出す。
重い扉をくぐり抜け、埃と汗にまみれてクロノチームがカフェ・ティニへと戻ってきた。
早朝のカウンターはまだ静かで、ミントとコーヒーの香りが心なしか柔らかい。
レイスがカウンター越しに台本を差し出す。
「あったぜ……マスター」
ウラヌスが胸を張り、いつもの調子でニカッと笑う。
「あの激渋おっさん(リース)がずっと探してたやつだね!これがホンモノ!」
マスターは手を震わせながら受け取り、ページをめくる。
表紙に指を這わせ、“未完”の二文字をなぞると、思わず目元を押さえた。
「……ああ、これがアルヴ様、最期の作品……」
声が震え、言葉にならない静かな涙が落ちる。
一瞬だけ、テーブルを囲む空気がしんと重くなる。
サタヌスが空気を読んで、あえて軽い声で流す。
「そろそろ騎士の巡回だっけ。……社長(アンラ)が言ってた時間だ。
ここで軽食でも食いながら待とうぜ」
ウラヌスが即座に手を挙げる。
「名物“モーニングおまかせセット”と、追加のクリームパン頼みまーす!」
マスターは目元をぬぐいながら、いつものように厨房へ向かう。
「……すぐに用意します。アルヴ様も、台本に詰まった夜はこうして。
カウンターでパンを齧っておられましたよ」
レイスは目を細めて、苦いコーヒーを一口。
「……似てるな、俺たちと」
ユピテルはわざとらしく台本を撫でて。
「何も変わっちゃいねぇ。主役は代わるけど、台本と舞台だけは残る」
パンと珈琲と、静かな時間。
カフェの奥では“巡回時間”をやりすごすための待機なのに。
今だけは、その空間が“演者の控え室”のような安堵に満ちていた。
カフェのテーブルに、湯気を立てるオムレツとパンが並んでいた。
レイスはフォークでふわふわの卵を割りながら、口に運ぶ。
「今から俺ら、すぐにでも旧貴族街へ行くんだけどさ」
「……何か伝言あるかい?アルヴ座のやつらに、伝えたい事」
と、真顔でマスターに問いかける。
マスターはカウンター越しに手を組み、唸る。
「伝えたいことですか……生憎、私の父は五年前に他界してしまいまして」
「父がここにいれば、書くことは山ほどあったのでしょうが」
と、少しだけ寂しげに苦笑いを浮かべる。
ウラヌスがパンをくわえたまま。
「あんまり行き来してっと怪しまれないウラたち? どうする、ヴィラン博士のとこ行く?」
茶化すように目を細める。
ヴィラン博士-カイネス・ヴィアン博士。
本人公認のあだ名で、実は結構な人気者である。
サタヌスは、すぐに肯定の返事を返す。
「大ありだ。台本を届け次第、博士のとこに向かおうぜ」
そのやりとりの途中、マスターがハッと顔を上げる。
「あ! さっき浮かびました、少し待ってください……」
慌てて奥の帳場から封筒とペンを取り出し、何かをサラサラと書き始める。
その横顔には、少しだけ懐かしい安堵と誇らしさが浮かんでいた。
マスターが慌てて便箋にペンを走らせ、最後に印を記すと。
少し恥ずかしそうに封筒をクロノチームへ差し出した。
「……先ほど浮かんだものなので、大した言葉も書けませんが。
“台本に傷がなかったか”等しか浮かびませんでした……」
レイスは残ったオムレツをひとくちで平らげ、封筒をすっと受け取る。
「十分だ、伝言ってのは気持ちがあればいい。行くぜ、お前ら」
クロノチームは椅子を蹴って立ち上がる。
ウラヌスはカウンターでパンの端を掴んだまま。
「あのクソ沼、朝から毒霧出まくってたら笑うわw」
と、おどけた声で冗談を飛ばす。
その隣で、サタヌスが肩を鳴らし立ち上がる。
「ま、毒霧でも泥でも突っ切るしかねぇだろ。行こうぜ」
ユピテルが最後に台本を胸に抱え。
「朝の旧貴族街なんざ、ロクな思い出ねぇが……今日は別だ」
小さく息を吐くと、四人は静かにカフェ・ティニを後にした。
扉を出れば、霧けぶる朝の旧貴族街。
遠くで鐘の音と、どこか劇場のカーテンが開く音が重なった。
“台本は無事だ”
その伝言とともに、彼らの物語は次なる舞台へ歩み出していく。
どこぞの取締役会みたいな表情で問いかけてきた。
「さて、その遺作を血眼で探していた様子だが――その先はどうするつもりだい?
パワーポイントの使用も許可するよ」
冗談めかした“社長スマイル”が胡散臭すぎて、空気は会議室さながら。
ウラヌスが即座に片手を挙げて突っ込む。
「あいにくここPCねぇんだわwww」
場が妙な一体感でどっと笑いに包まれる。
サタヌスが淡々と資料もなしに続ける。
「こいつが演じられることを、王族は粛清するくらいビビってた。
要は、“発表禁止の社外極秘案件”ってやつだ」
レイスが立ち上がり、仮想のプロジェクター画面を指差す仕草。
「今から俺らはこれを“演じる”。ターゲットはカリストとサロメ様の結婚式。
会場、王宮大ホール。リスクは全員の首」
ユピテルが座席を回転させながら。
「ま、つまりテロ。舞台型企業買収だな」
ニヤリと笑って、完全に“黒いベンチャー幹部”のノリ。
アンラ・マンユはパペットを上下に振りながら、頷く。
「うん、素晴らしいプレゼンだ。全員、行動力S評価だね!」
「では、KPI(Key Performance Indulgence)は“王族の動揺指数”としようか」
「どっちかっていうと“倒産寸前の帝国”に地雷しかける会議じゃねぇかこれ」
「いいね!うちら営業部は全力で騒ぎ担当やります!」
「アンタ経営陣側だろ?後方で株主ヅラして見てろ」
「社長、責任取る気ゼロだな」
アンラ・マンユはただ満足げに、チェス盤の端から彼らの“劇場型テロ会議”を眺めていた。
意外なことに、妨害はされなかった。
予想外な事態に戸惑う中、アンラ・マンユはパペットを掲げて満足げに言い放つ。
「妨害?するわけないだろう。うちの社員達がクビ(物理)覚悟で行うプレゼンだ、止めるわけがない」
サタヌスは思わず両手を広げる。
「就職した覚えはないんだが……!?」
ウラヌスが椅子ごと後ろにのけぞって爆笑する。
「世知辛えwww」
レイスは煙草をくるくる指で回しながら。
「人類は“無意識って株式会社”に就職してる……ま、そういう構造か」
本気で納得しちゃうのが、逆にコワい。
アンラ・マンユは“経営会議”さながらに、時計をチェックする。
「ちなみに、騎士の巡回は朝6時・昼1時・夕方5時。
旧貴族街に向かう時間は気をつけたまえ。
……うちはタイムカード厳しいからね」
「ブラック企業の匂いすんな……」
「経費出すならボーナスも出してくれよ~」
ユピテルは鼻で笑って。
「ハッ、今だけは感謝してやるよ。……じゃ、現場向かうか」
レイスが台本と地図を胸に抱え。
「“本社”に殴り込み。さあ、行こうぜ、クロノチーム」
と、誰にも通じないカッコつけをキメる。
クロノチームは手早く装備を整え、サンドイッチとコーヒーを掴み。
「これが真の“出勤飯”」と、誰かが言い出す。
サタヌスがナイフをベルトに差し、肩を鳴らす。
「社内会議より現場が性に合ってんだ、行こうぜ」
ウラヌスは新調した靴を自慢気に見せびらかし、笑う。
「ガラス靴より動きやすいから最高!」
ユピテルは胸ポケットに台本をねじ込み、続ける。
「最悪、燃やしてもいい覚悟で行くぞ」
「6時・1時・5時……タイムカードと同じじゃねぇか」
レイスが騎士の巡回時間を確認し、皮肉を飛ばす。
クロノチームがアルヴ座へと走り去る。
その背中を、アンラ・マンユはチェス盤の影の中でじっと見送っていた。
誰もいなくなった静寂の中、彼は無邪気な笑みを崩さぬまま。
パペット人形の手足を器用に操り始める。
その瞳の奥、何か別の闇がちらりと揺れる。
「やはり――王族を代替わりさせておいて正解だったね」
くぐもった声が、誰にも聞こえぬまま宙を舞う。
「71代目女王は、実につまらない女だった。
お前の顔は、パーツの寄せ集めというだけで壊れた」
淡々と指を動かしながら、あくまで楽しそうに人形の首をコトリと傾ける。
「その点、彼女――サロメは違う。
あの女と、あの連中なら……素晴らしいエンディングをもたらしてくれるだろう」
床にはいつのまにか、赤黒い染みがぽたぽたと広がっていく。
無垢な笑顔のまま。
「物語の舞台を“整える”のが私の仕事だよ」
と、誰にともなく囁く。
最近起きている王族の怪死-すべての“原因”が。
この“やり手若社長”の無邪気な指先にあるのだと。
誰も気付かないまま、舞台の幕は次の事件へと滑り出す。
重い扉をくぐり抜け、埃と汗にまみれてクロノチームがカフェ・ティニへと戻ってきた。
早朝のカウンターはまだ静かで、ミントとコーヒーの香りが心なしか柔らかい。
レイスがカウンター越しに台本を差し出す。
「あったぜ……マスター」
ウラヌスが胸を張り、いつもの調子でニカッと笑う。
「あの激渋おっさん(リース)がずっと探してたやつだね!これがホンモノ!」
マスターは手を震わせながら受け取り、ページをめくる。
表紙に指を這わせ、“未完”の二文字をなぞると、思わず目元を押さえた。
「……ああ、これがアルヴ様、最期の作品……」
声が震え、言葉にならない静かな涙が落ちる。
一瞬だけ、テーブルを囲む空気がしんと重くなる。
サタヌスが空気を読んで、あえて軽い声で流す。
「そろそろ騎士の巡回だっけ。……社長(アンラ)が言ってた時間だ。
ここで軽食でも食いながら待とうぜ」
ウラヌスが即座に手を挙げる。
「名物“モーニングおまかせセット”と、追加のクリームパン頼みまーす!」
マスターは目元をぬぐいながら、いつものように厨房へ向かう。
「……すぐに用意します。アルヴ様も、台本に詰まった夜はこうして。
カウンターでパンを齧っておられましたよ」
レイスは目を細めて、苦いコーヒーを一口。
「……似てるな、俺たちと」
ユピテルはわざとらしく台本を撫でて。
「何も変わっちゃいねぇ。主役は代わるけど、台本と舞台だけは残る」
パンと珈琲と、静かな時間。
カフェの奥では“巡回時間”をやりすごすための待機なのに。
今だけは、その空間が“演者の控え室”のような安堵に満ちていた。
カフェのテーブルに、湯気を立てるオムレツとパンが並んでいた。
レイスはフォークでふわふわの卵を割りながら、口に運ぶ。
「今から俺ら、すぐにでも旧貴族街へ行くんだけどさ」
「……何か伝言あるかい?アルヴ座のやつらに、伝えたい事」
と、真顔でマスターに問いかける。
マスターはカウンター越しに手を組み、唸る。
「伝えたいことですか……生憎、私の父は五年前に他界してしまいまして」
「父がここにいれば、書くことは山ほどあったのでしょうが」
と、少しだけ寂しげに苦笑いを浮かべる。
ウラヌスがパンをくわえたまま。
「あんまり行き来してっと怪しまれないウラたち? どうする、ヴィラン博士のとこ行く?」
茶化すように目を細める。
ヴィラン博士-カイネス・ヴィアン博士。
本人公認のあだ名で、実は結構な人気者である。
サタヌスは、すぐに肯定の返事を返す。
「大ありだ。台本を届け次第、博士のとこに向かおうぜ」
そのやりとりの途中、マスターがハッと顔を上げる。
「あ! さっき浮かびました、少し待ってください……」
慌てて奥の帳場から封筒とペンを取り出し、何かをサラサラと書き始める。
その横顔には、少しだけ懐かしい安堵と誇らしさが浮かんでいた。
マスターが慌てて便箋にペンを走らせ、最後に印を記すと。
少し恥ずかしそうに封筒をクロノチームへ差し出した。
「……先ほど浮かんだものなので、大した言葉も書けませんが。
“台本に傷がなかったか”等しか浮かびませんでした……」
レイスは残ったオムレツをひとくちで平らげ、封筒をすっと受け取る。
「十分だ、伝言ってのは気持ちがあればいい。行くぜ、お前ら」
クロノチームは椅子を蹴って立ち上がる。
ウラヌスはカウンターでパンの端を掴んだまま。
「あのクソ沼、朝から毒霧出まくってたら笑うわw」
と、おどけた声で冗談を飛ばす。
その隣で、サタヌスが肩を鳴らし立ち上がる。
「ま、毒霧でも泥でも突っ切るしかねぇだろ。行こうぜ」
ユピテルが最後に台本を胸に抱え。
「朝の旧貴族街なんざ、ロクな思い出ねぇが……今日は別だ」
小さく息を吐くと、四人は静かにカフェ・ティニを後にした。
扉を出れば、霧けぶる朝の旧貴族街。
遠くで鐘の音と、どこか劇場のカーテンが開く音が重なった。
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