Psychedelic bless you.

ぬるめのおゆ。

文字の大きさ
14 / 19

chapter2_09

しおりを挟む
 烏丸は医師家系の長男として生を享けた。
 両親は教育費を惜しみなく払い、烏丸は医師になるべく順当な道を歩んだ。その恩恵は妹にも平等に与えられていた。
 妹は烏丸を凌ぐほど生まれつき知能が高かった。それでも驕る事なく兄である烏丸を慕う妹は、烏丸の誇りであった。どんなに頭脳明晰であろうと、趣味趣向は年相応な妹がとても愛らしかった。
 潤沢な資産と秀でた家族――烏丸家には不自由な事などひとつも無かった。
 ただ一点、両親がカルト教団の信者である事以外は。

 布施を払えば払うほど徳があるとされ、両親は躊躇いなく多額の金を教団に注ぎ込んだ。
「今お前達が幸せに暮らせているのは、父さんがお金を払って徳を積んだからなんだ。徳を積む事は幸せのための投資なんだよ」
 父は子二人に度々そう言って聞かせた。
 元より礼拝などの宗教行為が面倒だと考えていた烏丸には信仰心が欠如していたが、親が有り余る金をどう使おうと烏丸にはどうだって良かった。宗教を除けば両親は優しく、聡い。烏丸は両親を尊敬していた。
 しかし妹に於いては、母に連れられて布教活動に繰り出されることが多かったこともあり、兄とは打って変わって敬虔な信徒に仕上がっていった。

 転機は妹が中学を出た頃、その信仰心と頭脳の優秀さが仇となり、教祖によって教団の巫女となるよう命じられたことだった。
 普段は信者の前に姿を現さない教祖に代わって、教祖からの金言を伝え、一般信徒を導く大役だという。選抜に際しても、両親の布施の金額が大きく影響を及ぼしているようだった。
 一族から巫女が輩出されたことで、両親は大変な名誉だと歓喜した。妹自身もまた、その決定に背く意思は無いようだった。
 妹は国内トップレベルの偏差値を誇る高校への進学を断念し、巫女として教団の施設に住まうことを余儀なくされた。
 両親は集会以外で妹に会うことが叶わなくなったが、教祖からの託宣を威風堂々と皆に伝える妹を崇め、傅き、最上級の敬語を使うようになった。そしてその日を境に、烏丸は自宅で妹の話をする際も『巫女様』と呼ぶよう強制されるようになる。
 烏丸はそれがただただ悍ましく、芝居じみた家族のやり取りを終始滑稽だと感じていた。信仰心のない自身にとって、妹は妹でしかなかった。
 烏丸はいつしか優秀で誇りであった妹を愚かだと思うようになった。そして、家族を馬鹿げた劇団のように仕立てた教団をひどく憎んだ。以来、烏丸は宗派を問わず信仰心が篤い人間を蔑視するようになる。
 大学を卒業して医師になった後、烏丸は両親とも離縁して今に至る。

******

「その目……本当に疎ましいね」
「あ、あぁぅ……」
 烏丸は鷹取の体に覆いかぶさり、繰り返し鷹取の体内を穿ち、揺さぶる。鷹取は涎で口元を汚し、虚な目で官能の声を上げていた。
「これだよ。君の宗派のシンボル、なんだっけ? ずっと僕を見ている……」
 バスローブを剝ぎ取られた鷹取の胸元にあるタトゥーは、教会が崇める神の目をモチーフにしたもので、鷹取の信仰心を刻み込んだものだった。鷹取の上で腰を振る烏丸を、無感情な単眼がじっと見上げている。
 烏丸はその目が忌々しくて堪らなかったが、一方で快楽を増幅させているようにも感じていた。
「はぁ……見られて興奮するなんて、僕も大概だね……」
 烏丸は鷹取の入信した宗派が同性愛を否定していることを既に知っていたのだった。鷹取と体を重ねて互いに快楽を貪ることで、自身が憎んで止まない宗教そのものを冒涜している――その感覚が、烏丸を更なる愉悦へと導いていた。
「うぅ、ぐっ、あぁ……せんせ、い、いいい、イク……ッ!」
 鷹取の逸物は、後孔の刺激に押し出されるように勢いよく白濁した欲望をまき散らす。
「はは、触ってもいないのに……っ、そんなに気持ちいいのかい? 悪い子だなぁ……脚まで、汚して……っ、 せっかくの傑作が台無しだよ?」
 烏丸は鷹取の義足に飛散した精液を舐め取る。
 烏丸は自身が執刀した患者の義肢を、芸術品のように愛でるのが趣味の一つでもあった。金属が肉体の一部となる――無機物と有機物の融合は、烏丸にとって現代美術のように美しく、価値の高いものだった。中でも鷹取の義足は、航空会社が最善で最高の治療を望んだことで、材質、機能共に、この上ない逸品に仕上がっていた。
 烏丸は弓のようなカーブを描く部品を掴み、義足を右肩に乗せる。極限まで軽量化されたその重量は、生身の脚とさほど変わらない。
 烏丸は義足の湾曲に沿って、ゆっくりと舌を這わせた。金属の独特な風味を伴った冷感が、熱くなった舌をわずかに冷ます。義肢でしか味わえないこの感覚に、烏丸の脳髄は快感に震える。
「美しいね……。この曲線、たまらない……」
 再び脚を軽く持ち上げ、足底を自身の眼前に移動させた烏丸は、中央の鉤爪を咥え、ねぶる。
 恍惚とした目で丁寧に舐め上げる表情はひどく煽情的で、その様子を見た鷹取は自身の逸物を咥えられているような錯覚に陥り、再び激しく勃起する。
「ふふ……、君も気に入ってくれたみたいで、嬉しいな……。ナカもすごくキツいよ……」
 烏丸は律動を止めない。
「んぐ……っ、せ、んせ……! きもち、いい、んあ…っ!」
「はぁ……可愛いね……さっき出したのに、またこんなに固くして……」
 烏丸は右手に持った義足の爪先を咥えたまま、左手で鷹取の剛直を柔く包む。先ほどの射精で濡れた先端からは、再び先走りが漏れ出ていた。
 鷹取の腹の上に残る精液を指で拭い取り、屹立する男根に塗り付ける。潤滑剤を得たそれを、烏丸は丁寧に扱き上げた。
「んん……っ! も……ダメです、ふ……っ、また出るッ、はぁ、イクゥウゥゥッ!」
「いいよ、何度でも……」
 鷹取は体を大きくのけぞらせながら二度目の絶頂に至る。悦びを孕んだ粘性の体液が、再び腹の上に迸る。それと同時に、烏丸の精を搾り取るように窄まりの締め付けが一層強くなる。
「はぁ……っ、いい……っ! 僕も、出すよ……っ!」
 烏丸は鷹取の体を貫く自身の槍を引き抜き、鷹取の胸元の単眼に向けて吐精する。鷹取の信仰の証は、烏丸の色欲と冒涜にまみれた精液で覆い隠された。
「君の脚は一級品なんだから……僕以外に触らせちゃだめだよ……」
 耳元で囁く烏丸の声は、射精の勢いで気絶した鷹取の耳には届いていないようだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

朔望大学医学部付属病院/ White Dictator

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
White Dictator______通称:『白衣の独裁者』 <ホワイト・ディクテイター> ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ 圧倒的な「実力」と「技術」で捩じ伏せ・現場を支配する凄腕たち。 ___ ごく僅かな一瞬の隙も逃さない神手の集まり。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

BL短編

水無月
BL
兄弟や幼馴染物に偏りがちです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

BL短編集

田舎
BL
タイトル通り。Xくんで呟いたショートストーリーを加筆&修正して短編にしたやつの置き場。 ※こちらは激しい描写や♡描写のない作品となります。

ブラコンネガティブ弟とポジティブ(?)兄

むすめっすめ
BL
「だーかーらっ!皆お前に魅力があるから周りにいるんだろーがっ!」 兄、四宮陽太はブサイク 「でも!それって本当の僕じゃないし!やっぱみんなこんな僕みたら引いちゃうよねぇ〜 !?」 で弟、四宮日向はイケメン 「やっぱり受け入れてくれるのは兄さんしかいないよぉー!!」 弟は涙目になりながら俺に抱きついてくる。 「いや、泣きたいの俺だから!!」 弟はドのつくブラコンネガティブ野郎だ。 ーーーーーーーーーー 兄弟のコンプレックスの話。 今後どうなるか分からないので一応Rつけてます。 1話そんな生々しく無いですが流血表現ありです(※)

処理中です...