Psychedelic bless you.

ぬるめのおゆ。

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chapter3_02

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 翌日、大家が鍵を受け取りに鷹取の部屋を訪れた。濃い隈と腫れた瞼で出迎えた鷹取に、大家は一瞬たじろいだ。
「追い出しておいてこんなことを言うのもなんだが……大丈夫かい?」
「……はい」
 大丈夫なわけがない。鷹取は上辺だけの肯定と共に「お前のせいだ」というような目で大家を睨んだが、言い争えるほど十分な言い訳も気力も持ち合わせていなかった。
 鍵を返還し、鷹取は再び心安らぐ我が家を失う事となる。十代で実家を出たときと違うのは、今回は全く未来が見えないという事だ。
 もう一度実家に世話になることも考えなくはなかったが、麻薬に手を出していることを隠し通せるとは思えなかった。そうでなくとも、もはやあの家は他人の家なのだ。
 家賃という家計を最も圧迫する出費がなくなったとは言え、すぐにネットカフェなどを仮の住まいにするのは憚られた。ただでさえ金がないのだ。温存しておくに越したことはない。
 鷹取はひとまず近くの公園に行き、拾ってきた段ボールを敷いて新たな住処とした。

 二日ほど経過して、烏丸との約束の曜日になった。幸か不幸か、この日は朝から天候が悪く、鷹取は濡れ鼠になっていた。
 バックパックを背負い、烏丸の自宅に向けて歩き出す。濡れた段ボールは使い物にならなくなったため、「次に雨が降ったらおとなしくネットカフェに行こう」などと、ぼんやり考えていた。
 初めて訪れた日よりも一層みすぼらしい姿をする鷹取を、スカイハイの住人は皆、一様に驚いた様子で振り返る。
 目的地に到着し、エレベーターを降りると、出迎えた部屋の主も例に漏れず、一際驚いた表情を見せた。
「どうしたんだい? 大きな荷物まで抱えて……」
「すみません……」
「とにかく、入って。早くシャワーを浴びておいで。話はあとで聞くから」

*****

「で、何があったの?」
 烏丸は依然心配そうな面持ちで尋ねる。
 いつものように鷹取は身を清め、ダイニングで烏丸が注文した食事を胃に収めていた。相変わらず必要以上に量が多い。
 鷹取は前回烏丸の部屋を出てからの顛末をぽつぽつと語り出した。あまりの無様さで顔を上げられず、終始テーブルの上で組まれた烏丸の手だけを見ていた。
「んー、なるほどね。じゃあ僕の家に居ればいい」
 烏丸の言葉は、鷹取の予想通りだった。
「もうこれ以上お世話になれません……」
 これは鷹取の本心である。
「いいんだよ。世話をしたくてしているんだから。それに、ずっと一人でいるより話せる人間が居たほうが、君の心にもいいんじゃないかな。僕も一人で家に居ても暇だし、むしろここに居てよ」
 罪悪感はどうしても拭えなかったが、考えうる幸福を全て失っていた鷹取は、正直なところ烏丸のこの強引さに抗う余地がなかった。
――少しくらいなら甘えても……いい、よな……。
 鷹取は必ず恩を返すと言って、烏丸の提案を受け入れたのだった。
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