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第20話 ※エロあり
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放課後、綾瀬は須加とタクシーでホテルに戻った。
地下駐車場から乗り込んだエレベーターはロビーで一度扉を開いた。キャリーケースを引く観光客がぞろぞろと入ってくる。ふたりは奥へ後退った。
庇うように前に立つ須加の指を、そっと絡める。ビクリと眼前の肩が震えた。
観光客が先に降りた。人目がなくなったとたん、須加は前を向いたまま、綾瀬の手首を摑んできた。
十二階に着くと、エレベーターが開き切る前に、須加は綾瀬を引っ張って隙間から滑り出た。左右に広げる廊下に視線を走らせる。
「部屋番号は?」
「一二一六」
案内板をサッと確認して廊下を進む。心なしか、須加の歩調はいつもより速い。
ルームキーをセンサーに当てると中に滑り込む。扉が閉まるのも待ち切れず、須加は綾瀬を抱き寄せた。
熱っぽい眼で見つめられたまま、くちびるが落ちてくる。
顔の角度を変え、息継ぎしながらくちびるを吸い、吸われる。頬に須加の息が当たった。うなじがぞくぞくと粟立った。
このぞくぞく感が、甘くて、快い。
――もっと欲しい。
酸素が薄くなり、息継ぎのペースも短くなってきた頃に、ようやく放された。
足に力が入らない。今にも崩れ落ちそうになった綾瀬を、須加はベッドに座らせたあと、横に腰をかけた。
「もっと、先輩を触ってもいいですか」
ここに来たいと言われたときから、心の準備をしていた。しかし改めて訊かれると、胸が痛くなるほど緊張する。
「……うん」
「あの……あと、名前で呼んでいいですか」
「名前?」
「しーに先越されて……」
「え」
須加は悔しそうに言葉を続ける。
「俺だって先輩を名前で呼んでみたかったのに……ねえ先輩、ダメ?」
潤った両眼で見つめてくる須加は、ゆでだこのように顔が真っ赤だ。
「……かわいい」
気づけば、思ったことが口をついて出た。
ずっと自分のことでいっぱいいっぱいだった。閉ざした心に、ドス黒い罪悪感と不安と自己嫌悪が常に渦巻いている。
でも今は違う。
ほかの感情――愛しさを感じる余裕が生まれた。
胸にあたたかいものが込み上げてきた。満たされた心から、須加への気持ちが押し出され、声となって口から飛び出る。もう一度かわいいとささやく。
「先輩! 茶化しないでください」
ムッと頬を膨らませた須加。今まで見せてくれなかった年下らしい一面に、胸が震えた。
「呼んでいいよ。そう呼んでほしい」
そうすると、須加が綾瀬の額に、こめかみに、啄むようなキスを落としてくる。
「理人」
耳元で名をささやかれ、甘い痺れが腰から広がった。
「俺も理人に名前を呼ばれたいです」
甘い声に、頭の芯まで熱くなった。
「……一之」
いましがた須加がしてくれたように、綾瀬は須加の頬を、くちびるを啄んだ。
脱いだシャツを椅子にかけ、振り向く。おいで、と、須加が手を伸ばしてきた。
恥じらいながら、綾瀬はその手を取った。隣に座り、彼の身体を見る。引き締まった身体に、抉られた左腕や刺された脇腹の傷跡が痛々しい。
「まだ痛い?」
「全然」
傷の周りを慈しむように撫でると、須加のお腹がヒクッと小さく動いた。
「ちょっと、これ以上は……」
首を傾げて見上げる。須加は困った表情を浮かべた。
「それより、この傷は?」
須加の指が、綾瀬の鎖骨を撫でる。そこには、矢田に嚙まれた跡が残っている。
あのときのことは、口にしたくもない悪夢だった。けれど今は不思議と、落ち着いた気持ちで話すことができた。恐ろしい過去をただの出来事のひとつとして淡々と語る綾瀬の代わりに、須加はつらそうに顔を歪めた。
「もう痛くない? 触っても平気ですか?」
「何年前のことだと思ってる? もう全然だ」
手指が、綾瀬の傷跡の上を往復する。羽毛のようなソフトタッチだ。
むずかゆい。熱くて重いものが下腹に落ちたような感覚がした。
もっと触ってほしいような、もうやめてほしいような――まだ慣れない感覚に綾瀬は身を捩って逃げようとする。さっき須加も同じ気持ちだったのだろうか。
視線を落とすと、須加の股間を認めた。もっこりと盛り上がったそこを見据える。
はじめて須加を触った日のことが蘇った。
あの熱、硬さ……張り詰めたそこから飛び出た白濁液が、須加の汗や唾液よりもずっと濃厚で甘い。
「理人」
身震いひとつ。あごを持ち上げられ、視線とかち合った。キスを交わしただけで、頭の奥に熱がじんわりと広がっていく。
「っ……ん」
須加に触れられたところから熱が広がり、あっという間に情欲の炎に灼かれた。
熱いけど、気持ちいい。
乳首を掠められ、今まで感じたことがない、鋭い感覚が先端から奥へ流れた。
「あぅ」
綾瀬は一際大きく身体を跳ねさせた。
「乳首は、どう? 好きですか?」
キスの合間に、須加が吐息に近い声で問う。
「っ、わからない」
「じゃあ、もっと触ってみますね」
爪先で小さな粒をカリカリ引っ掻かれ、痺れが四肢へ広がっていく。こぼした鼻息がさっきよりも甘く重い。
「まだわからないですか?」
「……ぅ」
「すごく好きそうですよ」
須加がそう言うなら、そうかもしれない。
酸素を求めるように須加の口を放した綾瀬は下に向いたまま呼気する。弄られている片方の乳首だけ赤く腫れ上がった。羞恥で頭が沸騰しそうだ。
むわっと煮詰まった甘い香りが、綾瀬の頭をさらにおかしくする。
芳香のもとを隠す小さな布の中心が、先走り汁で色が濃くなった。
邪魔な下着を下げると、漲った性器が飛び出た。蜜をこぼす先端を、指で擦る。口内に溢れた唾を飲み下す。
「……食べます?」
「うん、食べたい……」
ベッドの上に、綾瀬は須加の股間に顔を埋めた。その味を思い出すと身体が高ぶり、自身も窮屈そうにスラックス押し上げる。
須加のものを口に含むと、深い甘みが広がり、芳醇な香りが鼻を突き抜けた。
熱く脈打つ性器の先端を吸い、浮き出る血管を舌先でなぞり、その奥に溜まった蜜の噴射を促す。
須加の手が伸びてきた。乳首を乳暈ごと摘み上げられ、まぶたの裏に火花が散った。
「理人は乳首が弱いですね」
乳首をこねられると、甘酸っぱい悦楽が走り、背を仰け反った。その拍子に須加のものを吐き出した。
「あ、ぅ、いや」
「乳首、気持ちいいですね」
須加は乳首を弄るのをやめてくれない。
「うぅ、待って、ああ」
甘美な香りが一層濃くなった。手の中に握った須加の熱がびくびくと震える。綾瀬はまたそれを口に迎え入れ、先端を吸う。
「う、出る、っ」
じゅわっと口内に広がった、濃厚な味。量が多い。飲み切れない分が口からこぼれ出た。
「理人、ここを触らせて」
ぎゅっと下半身を揉まれ、綾瀬は高ぶった自身を思い出した。首を縦に振ると、スラックスの前を寛げられ、下着とまとめて脱がされた。
「ここに座って」
向き合う体勢で、須加の股ぐらの上に座る。
「美味しかったですか?」
須加の首に腕を回し、「うん」とキスひとつ。
「じゃあ次は俺の番です」
「……うん」
触ってほしい。
須加の手が大きくて、指が長くて、手つきがやさしい。人と触れ合うことがこんなに気持ちよく、満たされるものだと、須加に触られるまで知らなかった。
須加は綾瀬の肌に顔を埋め、深く息を吸った。周りの皮膚に馴染まない傷跡にくちびるを押しつける。啄んで、吸って、綾瀬にとって悪夢だったところに赤い花を咲かせる。
「……す、須加」
「名字に戻ってますよ」
「……恥ずかしい」
「これは恥ずかしくないですか?」
そう言いながら、乳首の先端を爪先で弾かれた。
「ン、ぅ……」
鋭い感覚で腰が揺れた。綾瀬はムッとして須加を睨みつける。
「ゆっくりでいいから……次は、名前呼んでほしいな」
そうささやいたくちびるが鎖骨から胸へと這う。赤く腫れた乳首を食み、舌で押し潰す。
「ヒャっ、あ……」
「口と指、どっちが好きですか?」
見せつけるように敏感な先端を舐める須加は、意地悪そうな笑みを浮かべている。
「んっ、ぅ、わか、ぁ、ない……」
「指の感覚はもう忘れたんですか」
須加は未熟な右の乳首を指の腹で擦る。
「ぁ、いやっ」
「嫌ですか」
普段は先輩が嫌なことをしたくないと言うくせに、今はただただ意地悪い。須加の指が敏感な小粒を避け、淡い乳暈を擦る。それがもどかしくて、綾瀬は苦しげに喘いだ。
「うぅ、いゃ、あっ」
胸にどんどん蓄積されていく快感を堪えられない。
「くすぐったい、やぁ、待って、ぃゃ」
「それって、気持ちいいってことですよ」
須加が綾瀬の表情を見つめ、尖った乳首を甘齧りした。
歯が当たる感覚が鋭く――瞬間、頭の中が真っ白になった。股間に濡れた感触がした。
「ヤバい……エロッ」
「うぅ」
「理人……もう一回いいですか」
「えっ」
返事する前に、ぐるりと視界が回った。綾瀬はベッドに押し倒された。覆い被さってくる須加の瞳が、情欲で燃えている。
「挿れないから……擦るだけ、いいですか」
切羽詰まった顔に、綾瀬は胸が甘く疼いた。
「…………ん」
須加は綾瀬の両脚を持ち上げ、閉じた太ももの隙間に、高ぶった自身を挿し込む。両脚をまとめて肩にかけると、綾瀬の顔の横に両手をついた。
「ねえ理人、握って」
ぴったりと密着するふたりの性器をまとめて握る。須加のものは硬くて、熱い。その熱に触れると、綾瀬もすぐ力を取り戻した。
控えめに腰を揺する須加の動きに合わせ、綾瀬は手を動かして扱く。
「……ん」
「理人、好き、好きです……気持ちいい?」
「うぅ、ん」
名前を呼ばれるたびに、全身に甘い電流が駆け抜ける。
部屋に充満する濃密な香りで頭がクラクラする。
「気持ちぃ、あっ、あ、須加は?」
「俺も、気持ちぃ」
大粒の汗が須加から滴り落ちてきた。くちびるに落ちたそれを舐め取る。ほんのり甘い。
須加の腰振りがどんどん激しくなる。荒い呼気、甘い喘ぎ声、くっついた性器から卑猥な水音が部屋に響き渡る。
朦朧としている中、綾瀬は横についた須加の手に眼を向けた。
力んだ腕に浮いた血管、握り締めた白いシーツ。刻まれた皺に、背徳感に近いざらついた感情が込み上げた。
「理人、そろそろ、イク」
「ぅ、うん、俺も」
綾瀬は須加の腕を摑んだ。下半身は密着しているのに、上半身に隙間ができている。この距離でさえ、寂しく感じる。
――もっとくっつきたい。
「理人、抱き締めてもいいですか?」
まるで気持ちを見透かしたような問いに、綾瀬はすぐに頷いた。
須加は綾瀬を抱き起こした。密着した胸から、互いの激しい鼓動音が響く。
綾瀬は須加の肩にくちびるを押しつける。須加の温もりに包まれ、鼻腔が甘いにおいで満たされる。
「うぅ、ン」
「理人、理人……」
須加は綾瀬の手とふたりの性をまとめて包み込み、一緒に扱く。荒い呼吸の合間に何度も名前を呼ぶ。
甘い痺れが上へ上へと駆け上る。それと連動して精が湧き出そうになる。
絶頂の目前に、気づいたら須加の肩に歯を立て、吐精した。
やや遅れて須加も射精した。濃厚な精液のにおいが辺りに漂う。
胸の鼓動と呼吸が落ち着くまで、ふたりはこのまま抱き合っていた。
--------------------
お待たせしました~
次回最終回、明日の夜に公開します!
地下駐車場から乗り込んだエレベーターはロビーで一度扉を開いた。キャリーケースを引く観光客がぞろぞろと入ってくる。ふたりは奥へ後退った。
庇うように前に立つ須加の指を、そっと絡める。ビクリと眼前の肩が震えた。
観光客が先に降りた。人目がなくなったとたん、須加は前を向いたまま、綾瀬の手首を摑んできた。
十二階に着くと、エレベーターが開き切る前に、須加は綾瀬を引っ張って隙間から滑り出た。左右に広げる廊下に視線を走らせる。
「部屋番号は?」
「一二一六」
案内板をサッと確認して廊下を進む。心なしか、須加の歩調はいつもより速い。
ルームキーをセンサーに当てると中に滑り込む。扉が閉まるのも待ち切れず、須加は綾瀬を抱き寄せた。
熱っぽい眼で見つめられたまま、くちびるが落ちてくる。
顔の角度を変え、息継ぎしながらくちびるを吸い、吸われる。頬に須加の息が当たった。うなじがぞくぞくと粟立った。
このぞくぞく感が、甘くて、快い。
――もっと欲しい。
酸素が薄くなり、息継ぎのペースも短くなってきた頃に、ようやく放された。
足に力が入らない。今にも崩れ落ちそうになった綾瀬を、須加はベッドに座らせたあと、横に腰をかけた。
「もっと、先輩を触ってもいいですか」
ここに来たいと言われたときから、心の準備をしていた。しかし改めて訊かれると、胸が痛くなるほど緊張する。
「……うん」
「あの……あと、名前で呼んでいいですか」
「名前?」
「しーに先越されて……」
「え」
須加は悔しそうに言葉を続ける。
「俺だって先輩を名前で呼んでみたかったのに……ねえ先輩、ダメ?」
潤った両眼で見つめてくる須加は、ゆでだこのように顔が真っ赤だ。
「……かわいい」
気づけば、思ったことが口をついて出た。
ずっと自分のことでいっぱいいっぱいだった。閉ざした心に、ドス黒い罪悪感と不安と自己嫌悪が常に渦巻いている。
でも今は違う。
ほかの感情――愛しさを感じる余裕が生まれた。
胸にあたたかいものが込み上げてきた。満たされた心から、須加への気持ちが押し出され、声となって口から飛び出る。もう一度かわいいとささやく。
「先輩! 茶化しないでください」
ムッと頬を膨らませた須加。今まで見せてくれなかった年下らしい一面に、胸が震えた。
「呼んでいいよ。そう呼んでほしい」
そうすると、須加が綾瀬の額に、こめかみに、啄むようなキスを落としてくる。
「理人」
耳元で名をささやかれ、甘い痺れが腰から広がった。
「俺も理人に名前を呼ばれたいです」
甘い声に、頭の芯まで熱くなった。
「……一之」
いましがた須加がしてくれたように、綾瀬は須加の頬を、くちびるを啄んだ。
脱いだシャツを椅子にかけ、振り向く。おいで、と、須加が手を伸ばしてきた。
恥じらいながら、綾瀬はその手を取った。隣に座り、彼の身体を見る。引き締まった身体に、抉られた左腕や刺された脇腹の傷跡が痛々しい。
「まだ痛い?」
「全然」
傷の周りを慈しむように撫でると、須加のお腹がヒクッと小さく動いた。
「ちょっと、これ以上は……」
首を傾げて見上げる。須加は困った表情を浮かべた。
「それより、この傷は?」
須加の指が、綾瀬の鎖骨を撫でる。そこには、矢田に嚙まれた跡が残っている。
あのときのことは、口にしたくもない悪夢だった。けれど今は不思議と、落ち着いた気持ちで話すことができた。恐ろしい過去をただの出来事のひとつとして淡々と語る綾瀬の代わりに、須加はつらそうに顔を歪めた。
「もう痛くない? 触っても平気ですか?」
「何年前のことだと思ってる? もう全然だ」
手指が、綾瀬の傷跡の上を往復する。羽毛のようなソフトタッチだ。
むずかゆい。熱くて重いものが下腹に落ちたような感覚がした。
もっと触ってほしいような、もうやめてほしいような――まだ慣れない感覚に綾瀬は身を捩って逃げようとする。さっき須加も同じ気持ちだったのだろうか。
視線を落とすと、須加の股間を認めた。もっこりと盛り上がったそこを見据える。
はじめて須加を触った日のことが蘇った。
あの熱、硬さ……張り詰めたそこから飛び出た白濁液が、須加の汗や唾液よりもずっと濃厚で甘い。
「理人」
身震いひとつ。あごを持ち上げられ、視線とかち合った。キスを交わしただけで、頭の奥に熱がじんわりと広がっていく。
「っ……ん」
須加に触れられたところから熱が広がり、あっという間に情欲の炎に灼かれた。
熱いけど、気持ちいい。
乳首を掠められ、今まで感じたことがない、鋭い感覚が先端から奥へ流れた。
「あぅ」
綾瀬は一際大きく身体を跳ねさせた。
「乳首は、どう? 好きですか?」
キスの合間に、須加が吐息に近い声で問う。
「っ、わからない」
「じゃあ、もっと触ってみますね」
爪先で小さな粒をカリカリ引っ掻かれ、痺れが四肢へ広がっていく。こぼした鼻息がさっきよりも甘く重い。
「まだわからないですか?」
「……ぅ」
「すごく好きそうですよ」
須加がそう言うなら、そうかもしれない。
酸素を求めるように須加の口を放した綾瀬は下に向いたまま呼気する。弄られている片方の乳首だけ赤く腫れ上がった。羞恥で頭が沸騰しそうだ。
むわっと煮詰まった甘い香りが、綾瀬の頭をさらにおかしくする。
芳香のもとを隠す小さな布の中心が、先走り汁で色が濃くなった。
邪魔な下着を下げると、漲った性器が飛び出た。蜜をこぼす先端を、指で擦る。口内に溢れた唾を飲み下す。
「……食べます?」
「うん、食べたい……」
ベッドの上に、綾瀬は須加の股間に顔を埋めた。その味を思い出すと身体が高ぶり、自身も窮屈そうにスラックス押し上げる。
須加のものを口に含むと、深い甘みが広がり、芳醇な香りが鼻を突き抜けた。
熱く脈打つ性器の先端を吸い、浮き出る血管を舌先でなぞり、その奥に溜まった蜜の噴射を促す。
須加の手が伸びてきた。乳首を乳暈ごと摘み上げられ、まぶたの裏に火花が散った。
「理人は乳首が弱いですね」
乳首をこねられると、甘酸っぱい悦楽が走り、背を仰け反った。その拍子に須加のものを吐き出した。
「あ、ぅ、いや」
「乳首、気持ちいいですね」
須加は乳首を弄るのをやめてくれない。
「うぅ、待って、ああ」
甘美な香りが一層濃くなった。手の中に握った須加の熱がびくびくと震える。綾瀬はまたそれを口に迎え入れ、先端を吸う。
「う、出る、っ」
じゅわっと口内に広がった、濃厚な味。量が多い。飲み切れない分が口からこぼれ出た。
「理人、ここを触らせて」
ぎゅっと下半身を揉まれ、綾瀬は高ぶった自身を思い出した。首を縦に振ると、スラックスの前を寛げられ、下着とまとめて脱がされた。
「ここに座って」
向き合う体勢で、須加の股ぐらの上に座る。
「美味しかったですか?」
須加の首に腕を回し、「うん」とキスひとつ。
「じゃあ次は俺の番です」
「……うん」
触ってほしい。
須加の手が大きくて、指が長くて、手つきがやさしい。人と触れ合うことがこんなに気持ちよく、満たされるものだと、須加に触られるまで知らなかった。
須加は綾瀬の肌に顔を埋め、深く息を吸った。周りの皮膚に馴染まない傷跡にくちびるを押しつける。啄んで、吸って、綾瀬にとって悪夢だったところに赤い花を咲かせる。
「……す、須加」
「名字に戻ってますよ」
「……恥ずかしい」
「これは恥ずかしくないですか?」
そう言いながら、乳首の先端を爪先で弾かれた。
「ン、ぅ……」
鋭い感覚で腰が揺れた。綾瀬はムッとして須加を睨みつける。
「ゆっくりでいいから……次は、名前呼んでほしいな」
そうささやいたくちびるが鎖骨から胸へと這う。赤く腫れた乳首を食み、舌で押し潰す。
「ヒャっ、あ……」
「口と指、どっちが好きですか?」
見せつけるように敏感な先端を舐める須加は、意地悪そうな笑みを浮かべている。
「んっ、ぅ、わか、ぁ、ない……」
「指の感覚はもう忘れたんですか」
須加は未熟な右の乳首を指の腹で擦る。
「ぁ、いやっ」
「嫌ですか」
普段は先輩が嫌なことをしたくないと言うくせに、今はただただ意地悪い。須加の指が敏感な小粒を避け、淡い乳暈を擦る。それがもどかしくて、綾瀬は苦しげに喘いだ。
「うぅ、いゃ、あっ」
胸にどんどん蓄積されていく快感を堪えられない。
「くすぐったい、やぁ、待って、ぃゃ」
「それって、気持ちいいってことですよ」
須加が綾瀬の表情を見つめ、尖った乳首を甘齧りした。
歯が当たる感覚が鋭く――瞬間、頭の中が真っ白になった。股間に濡れた感触がした。
「ヤバい……エロッ」
「うぅ」
「理人……もう一回いいですか」
「えっ」
返事する前に、ぐるりと視界が回った。綾瀬はベッドに押し倒された。覆い被さってくる須加の瞳が、情欲で燃えている。
「挿れないから……擦るだけ、いいですか」
切羽詰まった顔に、綾瀬は胸が甘く疼いた。
「…………ん」
須加は綾瀬の両脚を持ち上げ、閉じた太ももの隙間に、高ぶった自身を挿し込む。両脚をまとめて肩にかけると、綾瀬の顔の横に両手をついた。
「ねえ理人、握って」
ぴったりと密着するふたりの性器をまとめて握る。須加のものは硬くて、熱い。その熱に触れると、綾瀬もすぐ力を取り戻した。
控えめに腰を揺する須加の動きに合わせ、綾瀬は手を動かして扱く。
「……ん」
「理人、好き、好きです……気持ちいい?」
「うぅ、ん」
名前を呼ばれるたびに、全身に甘い電流が駆け抜ける。
部屋に充満する濃密な香りで頭がクラクラする。
「気持ちぃ、あっ、あ、須加は?」
「俺も、気持ちぃ」
大粒の汗が須加から滴り落ちてきた。くちびるに落ちたそれを舐め取る。ほんのり甘い。
須加の腰振りがどんどん激しくなる。荒い呼気、甘い喘ぎ声、くっついた性器から卑猥な水音が部屋に響き渡る。
朦朧としている中、綾瀬は横についた須加の手に眼を向けた。
力んだ腕に浮いた血管、握り締めた白いシーツ。刻まれた皺に、背徳感に近いざらついた感情が込み上げた。
「理人、そろそろ、イク」
「ぅ、うん、俺も」
綾瀬は須加の腕を摑んだ。下半身は密着しているのに、上半身に隙間ができている。この距離でさえ、寂しく感じる。
――もっとくっつきたい。
「理人、抱き締めてもいいですか?」
まるで気持ちを見透かしたような問いに、綾瀬はすぐに頷いた。
須加は綾瀬を抱き起こした。密着した胸から、互いの激しい鼓動音が響く。
綾瀬は須加の肩にくちびるを押しつける。須加の温もりに包まれ、鼻腔が甘いにおいで満たされる。
「うぅ、ン」
「理人、理人……」
須加は綾瀬の手とふたりの性をまとめて包み込み、一緒に扱く。荒い呼吸の合間に何度も名前を呼ぶ。
甘い痺れが上へ上へと駆け上る。それと連動して精が湧き出そうになる。
絶頂の目前に、気づいたら須加の肩に歯を立て、吐精した。
やや遅れて須加も射精した。濃厚な精液のにおいが辺りに漂う。
胸の鼓動と呼吸が落ち着くまで、ふたりはこのまま抱き合っていた。
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お待たせしました~
次回最終回、明日の夜に公開します!
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一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
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