【完結】新しい我輩、はじめます。

コル

文字の大きさ
18 / 75
第二章 悪魔四天王「赤石のフィゲロア」との決戦

9 『漢ならこの拳で! この肉体で戦うもんじゃ!』

しおりを挟む
「もう! いくら倒すためだからってベルは女の子なんだよ! それをおもいっきりふとももに突き刺すなんて! ――安心してねベル、傷が残らないように完璧に治癒するから」

「ありがとう……エリン」

「我輩だけが悪者みたいに言うなよ」

 そう言われても刺せる部分がそこしかなかった上、触れている部分が大きいほど魔力が多く流せるのだからしょうがないではないか。

「お~い! そっちも大事じゃがこっちも何とかしてくれんかの!?」

 魔力が消えるのだから当然赤石の沼は普通の石に戻る、踏み台になっていた爺さんは下半身が沼に沈んでいた為に今は上半身が石から生えている不思議な光景に……。

「悪いが爺さん、我輩の力では石なんて切れんし魔法も使えんから助けられん」

「うう……」

 もっとも爆発魔法を使えば爺さんのほうが危ないが、しかし助けないわけにもいかぬか……どこか鈍器みたいなもはないのか? それで叩き割れば――。

「ダリル様、この傷が癒え次第お助けします。残りの魔力で十分斬れますから」

 そうか斬硬刀なら余裕か、もうこの石はただの石でオリハルコンの強度もないものな。

「そういえばさ~さっきの戦闘なんだけど、ベルもダリ爺も魔法を使ってなかったよね? あれはなんで?」

 ……うーむ、ここまでくるとエリンの知識のばらつきには不自然なものがあるぞ。

「……あれ? アタシ何かおかしなこと言った?」

 はぁ、説明するのは面倒くさいが今後の戦闘にも関ることだから仕方ないか。

「ベルトラの場合は魔剣に魔力を使うため使いたくても使えないのだ。これは固有魔法も同じだ、だからフィゲロアも赤石を使っている時は他の魔法を使わなかっただろ」

「あ~そういえば~なるほどね。あれ? でもダリ爺は魔剣も固有魔法も使ってなかったような」

 だよな、我輩もそれを聞きたかった。

「それは我輩も気にはなっていた、身体強化で魔力を使っていたから魔法も普通に使えるはずだが?」

「え~と……じゃな……」

 なんだ? 何かいわく付きなことでもあるのか?

「え~と……そう! 漢ならこの拳で、この肉体で戦うもんじゃ! 決して魔法を使うのが苦手だからじゃないぞ!」

 何かあると思ったが、なんて事はないただ魔法を使うのが苦手なだけではないか!!
 それで豪拳という二つ名を得るのもすごい事だが……なにか負に落ちんものがあるぞ。

「まさか……そんな理由だったなんて……」

 ベルトラも初めて知ったみたいだな……すごく落胆しとる。豪拳という英雄はすごいのかすごくないのかさっぱりわからんようになってきた、剣豪の方もなにやら怪しい気がする。



 さて後は兵士達が後始末をしてくれるようだし、ベルトラの治療と爺さんを救出すればゆっくり休めるか。
 ん? 何かがこっちに向かってきておる。あれは馬車……か? 何故こんな場所に馬車が? あ、止まったぞ?
 ――お、誰か降りてきた、紫色のドレスを着た上品な初老の婆さんだな……こっちに来たぞ。

「あなた!」

「うげ! サ、サリーサ!? 何故ここに!?」

 ほう、あれが爺さんの嫁か、確かに気の強そうな感じだな。
 ベルトラといいこの国の女達はすべてこうなのだろうか。

「あなたの家に向かう途中で火急の知らせが届き、ここで戦っていると――って何をふざけた格好をしているのですか!?」

「いや! 待て! ふざけてなんていない! これは戦闘で――」

「戦で何をどうしたらそんな格好になるのですか!? 早く出てきてください!!」

 地面から生えているこの姿は、ふざけていると思われても仕方ないよな。
とても戦闘の後の姿じゃないし。

「こっこら! 無理やり引っ張るな! 痛い痛い! みんなたすけてぇええ!」

 爺さんは必死に逃げようとしてもがいているが、あれでは逃げられない。

「サ、サリーサ様、ダリル様は本当に、っつ~」

「あ~ベル動かないで、まだ塞ぎきれてないんだから」

「まぁ! なんということですか! ベルトラ、その傷は大丈夫なのですか!?」

「ちょま!? ぐほっ!」

 婆さんがベルトラの元へ駆け出して爺さんの顔を思いっきり蹴飛ばした、今のは玉を蹴る様な思い切りの良さだったんだが気のせいだろうか?

「おい! 今ので鼻血が――」

「あなたの事はあとです! ……ああ、かわいそうなベルトラ」

「……さすがのわしでも泣くぞ……」

 この爺さんの扱い酷い、今までどんな生活を……いや、考えるまでもなく自業自得の事か。

「はい、今エリンに治療してもらっていますので」

「まっかせて~」

「そうですか、それは良かったです」

「……わしは良くないのじゃが……」

 そういえば我輩もフィゲロアにやられた傷はほぼ完治している。
 エリンの治癒魔法は相当なものだ、これからの戦闘には必要不可欠という事になる。
 いい意味でも悪い意味でも……な。

「ああ! 申し遅れました。私はダリルの妻サリーサと申します」

 よく存じております。

「まずは……勇者デール様、エリン様、ベルトラ、見事フィゲロアを打ち倒してくれました。ありがとうございます、愚て……いえライリー王に代わり謝礼を」

「あ……いや……」

 愚? ……今愚弟って言いかけなかったか? いくら弟でも一国の王に対してそれはいいのか!?

「そして……あなたぁ!」

「はい!」

 爺さんの埋まってない上半身も固まってしまった。

「私は家に居て下さいと手紙を送りましたよ? まさか読んでいないのですか!?」

「いや……それは~その~え~と……」

 逃げ出して来た、なんて言えんわな。

「――ですが、今回は許しましょう」

「へ? 許す? ……何故だ?」

「あなたの元に向かっていたのは愚弟の勅命を直接伝える為だったのです。あなたが受けるかどうかと愚弟は困っていたので私が説得にと思いまして」

 愚弟とはっきり言ったよ……我輩が言うのもなんだが、大丈夫かこの国は……?

「しかし、まさか勅命を伝える前にもう勇者様と共闘しているとは……私もびっくりしましたが、さすがあなたですね」

「え? い、いや~それほどでも、ダ~ッハハハハ……」

 おい! ここに来たのはこの婆さんから逃げるためだろうがジジイ!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...