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第二章 悪魔四天王「赤石のフィゲロア」との決戦
9 『漢ならこの拳で! この肉体で戦うもんじゃ!』
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「もう! いくら倒すためだからってベルは女の子なんだよ! それをおもいっきりふとももに突き刺すなんて! ――安心してねベル、傷が残らないように完璧に治癒するから」
「ありがとう……エリン」
「我輩だけが悪者みたいに言うなよ」
そう言われても刺せる部分がそこしかなかった上、触れている部分が大きいほど魔力が多く流せるのだからしょうがないではないか。
「お~い! そっちも大事じゃがこっちも何とかしてくれんかの!?」
魔力が消えるのだから当然赤石の沼は普通の石に戻る、踏み台になっていた爺さんは下半身が沼に沈んでいた為に今は上半身が石から生えている不思議な光景に……。
「悪いが爺さん、我輩の力では石なんて切れんし魔法も使えんから助けられん」
「うう……」
もっとも爆発魔法を使えば爺さんのほうが危ないが、しかし助けないわけにもいかぬか……どこか鈍器みたいなもはないのか? それで叩き割れば――。
「ダリル様、この傷が癒え次第お助けします。残りの魔力で十分斬れますから」
そうか斬硬刀なら余裕か、もうこの石はただの石でオリハルコンの強度もないものな。
「そういえばさ~さっきの戦闘なんだけど、ベルもダリ爺も魔法を使ってなかったよね? あれはなんで?」
……うーむ、ここまでくるとエリンの知識のばらつきには不自然なものがあるぞ。
「……あれ? アタシ何かおかしなこと言った?」
はぁ、説明するのは面倒くさいが今後の戦闘にも関ることだから仕方ないか。
「ベルトラの場合は魔剣に魔力を使うため使いたくても使えないのだ。これは固有魔法も同じだ、だからフィゲロアも赤石を使っている時は他の魔法を使わなかっただろ」
「あ~そういえば~なるほどね。あれ? でもダリ爺は魔剣も固有魔法も使ってなかったような」
だよな、我輩もそれを聞きたかった。
「それは我輩も気にはなっていた、身体強化で魔力を使っていたから魔法も普通に使えるはずだが?」
「え~と……じゃな……」
なんだ? 何かいわく付きなことでもあるのか?
「え~と……そう! 漢ならこの拳で、この肉体で戦うもんじゃ! 決して魔法を使うのが苦手だからじゃないぞ!」
何かあると思ったが、なんて事はないただ魔法を使うのが苦手なだけではないか!!
それで豪拳という二つ名を得るのもすごい事だが……なにか負に落ちんものがあるぞ。
「まさか……そんな理由だったなんて……」
ベルトラも初めて知ったみたいだな……すごく落胆しとる。豪拳という英雄はすごいのかすごくないのかさっぱりわからんようになってきた、剣豪の方もなにやら怪しい気がする。
※
さて後は兵士達が後始末をしてくれるようだし、ベルトラの治療と爺さんを救出すればゆっくり休めるか。
ん? 何かがこっちに向かってきておる。あれは馬車……か? 何故こんな場所に馬車が? あ、止まったぞ?
――お、誰か降りてきた、紫色のドレスを着た上品な初老の婆さんだな……こっちに来たぞ。
「あなた!」
「うげ! サ、サリーサ!? 何故ここに!?」
ほう、あれが爺さんの嫁か、確かに気の強そうな感じだな。
ベルトラといいこの国の女達はすべてこうなのだろうか。
「あなたの家に向かう途中で火急の知らせが届き、ここで戦っていると――って何をふざけた格好をしているのですか!?」
「いや! 待て! ふざけてなんていない! これは戦闘で――」
「戦で何をどうしたらそんな格好になるのですか!? 早く出てきてください!!」
地面から生えているこの姿は、ふざけていると思われても仕方ないよな。
とても戦闘の後の姿じゃないし。
「こっこら! 無理やり引っ張るな! 痛い痛い! みんなたすけてぇええ!」
爺さんは必死に逃げようとしてもがいているが、あれでは逃げられない。
「サ、サリーサ様、ダリル様は本当に、っつ~」
「あ~ベル動かないで、まだ塞ぎきれてないんだから」
「まぁ! なんということですか! ベルトラ、その傷は大丈夫なのですか!?」
「ちょま!? ぐほっ!」
婆さんがベルトラの元へ駆け出して爺さんの顔を思いっきり蹴飛ばした、今のは玉を蹴る様な思い切りの良さだったんだが気のせいだろうか?
「おい! 今ので鼻血が――」
「あなたの事はあとです! ……ああ、かわいそうなベルトラ」
「……さすがのわしでも泣くぞ……」
この爺さんの扱い酷い、今までどんな生活を……いや、考えるまでもなく自業自得の事か。
「はい、今エリンに治療してもらっていますので」
「まっかせて~」
「そうですか、それは良かったです」
「……わしは良くないのじゃが……」
そういえば我輩もフィゲロアにやられた傷はほぼ完治している。
エリンの治癒魔法は相当なものだ、これからの戦闘には必要不可欠という事になる。
いい意味でも悪い意味でも……な。
「ああ! 申し遅れました。私はダリルの妻サリーサと申します」
よく存じております。
「まずは……勇者デール様、エリン様、ベルトラ、見事フィゲロアを打ち倒してくれました。ありがとうございます、愚て……いえライリー王に代わり謝礼を」
「あ……いや……」
愚? ……今愚弟って言いかけなかったか? いくら弟でも一国の王に対してそれはいいのか!?
「そして……あなたぁ!」
「はい!」
爺さんの埋まってない上半身も固まってしまった。
「私は家に居て下さいと手紙を送りましたよ? まさか読んでいないのですか!?」
「いや……それは~その~え~と……」
逃げ出して来た、なんて言えんわな。
「――ですが、今回は許しましょう」
「へ? 許す? ……何故だ?」
「あなたの元に向かっていたのは愚弟の勅命を直接伝える為だったのです。あなたが受けるかどうかと愚弟は困っていたので私が説得にと思いまして」
愚弟とはっきり言ったよ……我輩が言うのもなんだが、大丈夫かこの国は……?
「しかし、まさか勅命を伝える前にもう勇者様と共闘しているとは……私もびっくりしましたが、さすがあなたですね」
「え? い、いや~それほどでも、ダ~ッハハハハ……」
おい! ここに来たのはこの婆さんから逃げるためだろうがジジイ!!
「ありがとう……エリン」
「我輩だけが悪者みたいに言うなよ」
そう言われても刺せる部分がそこしかなかった上、触れている部分が大きいほど魔力が多く流せるのだからしょうがないではないか。
「お~い! そっちも大事じゃがこっちも何とかしてくれんかの!?」
魔力が消えるのだから当然赤石の沼は普通の石に戻る、踏み台になっていた爺さんは下半身が沼に沈んでいた為に今は上半身が石から生えている不思議な光景に……。
「悪いが爺さん、我輩の力では石なんて切れんし魔法も使えんから助けられん」
「うう……」
もっとも爆発魔法を使えば爺さんのほうが危ないが、しかし助けないわけにもいかぬか……どこか鈍器みたいなもはないのか? それで叩き割れば――。
「ダリル様、この傷が癒え次第お助けします。残りの魔力で十分斬れますから」
そうか斬硬刀なら余裕か、もうこの石はただの石でオリハルコンの強度もないものな。
「そういえばさ~さっきの戦闘なんだけど、ベルもダリ爺も魔法を使ってなかったよね? あれはなんで?」
……うーむ、ここまでくるとエリンの知識のばらつきには不自然なものがあるぞ。
「……あれ? アタシ何かおかしなこと言った?」
はぁ、説明するのは面倒くさいが今後の戦闘にも関ることだから仕方ないか。
「ベルトラの場合は魔剣に魔力を使うため使いたくても使えないのだ。これは固有魔法も同じだ、だからフィゲロアも赤石を使っている時は他の魔法を使わなかっただろ」
「あ~そういえば~なるほどね。あれ? でもダリ爺は魔剣も固有魔法も使ってなかったような」
だよな、我輩もそれを聞きたかった。
「それは我輩も気にはなっていた、身体強化で魔力を使っていたから魔法も普通に使えるはずだが?」
「え~と……じゃな……」
なんだ? 何かいわく付きなことでもあるのか?
「え~と……そう! 漢ならこの拳で、この肉体で戦うもんじゃ! 決して魔法を使うのが苦手だからじゃないぞ!」
何かあると思ったが、なんて事はないただ魔法を使うのが苦手なだけではないか!!
それで豪拳という二つ名を得るのもすごい事だが……なにか負に落ちんものがあるぞ。
「まさか……そんな理由だったなんて……」
ベルトラも初めて知ったみたいだな……すごく落胆しとる。豪拳という英雄はすごいのかすごくないのかさっぱりわからんようになってきた、剣豪の方もなにやら怪しい気がする。
※
さて後は兵士達が後始末をしてくれるようだし、ベルトラの治療と爺さんを救出すればゆっくり休めるか。
ん? 何かがこっちに向かってきておる。あれは馬車……か? 何故こんな場所に馬車が? あ、止まったぞ?
――お、誰か降りてきた、紫色のドレスを着た上品な初老の婆さんだな……こっちに来たぞ。
「あなた!」
「うげ! サ、サリーサ!? 何故ここに!?」
ほう、あれが爺さんの嫁か、確かに気の強そうな感じだな。
ベルトラといいこの国の女達はすべてこうなのだろうか。
「あなたの家に向かう途中で火急の知らせが届き、ここで戦っていると――って何をふざけた格好をしているのですか!?」
「いや! 待て! ふざけてなんていない! これは戦闘で――」
「戦で何をどうしたらそんな格好になるのですか!? 早く出てきてください!!」
地面から生えているこの姿は、ふざけていると思われても仕方ないよな。
とても戦闘の後の姿じゃないし。
「こっこら! 無理やり引っ張るな! 痛い痛い! みんなたすけてぇええ!」
爺さんは必死に逃げようとしてもがいているが、あれでは逃げられない。
「サ、サリーサ様、ダリル様は本当に、っつ~」
「あ~ベル動かないで、まだ塞ぎきれてないんだから」
「まぁ! なんということですか! ベルトラ、その傷は大丈夫なのですか!?」
「ちょま!? ぐほっ!」
婆さんがベルトラの元へ駆け出して爺さんの顔を思いっきり蹴飛ばした、今のは玉を蹴る様な思い切りの良さだったんだが気のせいだろうか?
「おい! 今ので鼻血が――」
「あなたの事はあとです! ……ああ、かわいそうなベルトラ」
「……さすがのわしでも泣くぞ……」
この爺さんの扱い酷い、今までどんな生活を……いや、考えるまでもなく自業自得の事か。
「はい、今エリンに治療してもらっていますので」
「まっかせて~」
「そうですか、それは良かったです」
「……わしは良くないのじゃが……」
そういえば我輩もフィゲロアにやられた傷はほぼ完治している。
エリンの治癒魔法は相当なものだ、これからの戦闘には必要不可欠という事になる。
いい意味でも悪い意味でも……な。
「ああ! 申し遅れました。私はダリルの妻サリーサと申します」
よく存じております。
「まずは……勇者デール様、エリン様、ベルトラ、見事フィゲロアを打ち倒してくれました。ありがとうございます、愚て……いえライリー王に代わり謝礼を」
「あ……いや……」
愚? ……今愚弟って言いかけなかったか? いくら弟でも一国の王に対してそれはいいのか!?
「そして……あなたぁ!」
「はい!」
爺さんの埋まってない上半身も固まってしまった。
「私は家に居て下さいと手紙を送りましたよ? まさか読んでいないのですか!?」
「いや……それは~その~え~と……」
逃げ出して来た、なんて言えんわな。
「――ですが、今回は許しましょう」
「へ? 許す? ……何故だ?」
「あなたの元に向かっていたのは愚弟の勅命を直接伝える為だったのです。あなたが受けるかどうかと愚弟は困っていたので私が説得にと思いまして」
愚弟とはっきり言ったよ……我輩が言うのもなんだが、大丈夫かこの国は……?
「しかし、まさか勅命を伝える前にもう勇者様と共闘しているとは……私もびっくりしましたが、さすがあなたですね」
「え? い、いや~それほどでも、ダ~ッハハハハ……」
おい! ここに来たのはこの婆さんから逃げるためだろうがジジイ!!
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