【完結】新しい我輩、はじめます。

コル

文字の大きさ
53 / 75
第六章 もう一人のデイルワッツ

4 『どう考えても格闘タイプにしか見えないんですけど!?』

しおりを挟む
 ……まずい、まずい、皆に正体がばれてしまった……。
 どどどどどどど、どうしよう!

「……何……戯言を……言っておるんじゃ……」

「……まったく……戦闘中に……ふざけるな!」

「……です! ……です!」

『……』

 ……皆、全然信じておらぬ、当然といえば当然か。
 勇者の中に魔王なんて信じられんわな。それはそれでいいのかも知れぬのだが、う~む、複雑な気分。

「……そもそも……勇者としても……いまいちなのに……中身が魔王? ……ないない……あってたまるもんですか……」

「……そうじゃな……中身が魔王……ならもっと……こうオーラや力がある……はずじゃ……なのに勇者殿は……全然……感じんぞ……」

「……です! ……です!」

『……』

 ええ……何かものすごくボロカスに言われているのだが!?
 これじゃますます正体がばれたくない!!

「ふん、信じようと信じまいと貴様等人間共には関係のない事だったな、それに貴様等はここで死ぬのだからな!! ファイ――」

「――っ! させるか!! エアーショット!!」

「ぬ!? ぐはっ!!」

 チョッハハハ、アルフレドの奴を吹き飛ばして壁に叩き付けてやった……ぞ……ってしまったぁああ!! 壁にヒビが入ってしまった! 我輩自らマイホームを壊してどうするのだ! しかも自分で自分の体を傷付けてしまってるし! 我輩の馬鹿! 

『……デール、デール、ちょっといい?』

「あん!? 何だこんな時に!?」

 本当に空気を読まない奴だな。

『あのデイルワッツの言っている事は本当の事だよね?』

「――っえ!?」

 こういう事が一番鈍いエリンが感づいただと!?

『デールと同じ魔力があのデイルワッツからも感じていたの、魔力は人によって違うのにおかしいなと思っていたんだけど……やっと違和感の正体がわかったよ』

 そうか、魔力を感じ取っているなら分かって当たり前か。
 もうエリンに対して誤魔化しても無意味、だな。

「……そうだとしたら……我輩を……討つか? 貴様にはその使命があるではないか」

『ん~……確かにその使命はあるけどアタシのマスターはデールだし、どうしよ?』

 我輩に聞いてどうするんだよ、正体分かってもこれじゃ……だったら。

「……中身が我輩で皆を騙していた事に関しては言い訳も出来ぬ。だが今の奴らは我輩達の敵だ、倒さなければこちらがやられる。頼む、黙って力を貸してくれ」

『……ん~……そだね……分かった!』

「助かる……」

 なんだかんだでこの性格には色々救われるな。
 本当に理解してくれたのかは分からんが……。

『で、どうするの? さっきの魔法あまり効いてないみたいだけど』

「そりゃそうだ、あれは一時しのぎだからな。次は魔力を全て身体強化に回すのだ、魔法関係の事は一切考えなくていい」

『え? なんで?』

 やっぱ言わなきゃ駄目だよな。自分自身だから分かる自分の弱点……。

「……我輩の体は本来、魔術師タイプなのだ、格闘センスは……その……なくて……な」

『……は!? あんなに筋肉モリモリなのに!? どう考えても格闘タイプにしか見えないんですけど!?』

 やはりそんな反応するよな……自分でもそこはおかしいと思うんだ。
 鬼族は生まれつき強力な筋力あり接近戦を得意とする種族、のだが何故か我輩の場合は見た目だけで格闘センスがとにかくない……肉体美としては完璧なんだがな、うん。

「うるさい、そういう体質だからしょうがないだろ! でも力はあるのだ! 当たれば岩をも砕くのだぞ!」

『そんな自慢げに当たればって……あ!! だから剣術が物凄くひどかったのか、納得』

 くそ……真実だから何も言い返せない。

「とっとにかくだ、今はあいつを倒す事を考えろ! あいつが起き上がった直後に体当たりするぞ!」

『なんで? 格闘が苦手な体ならアブソーヘイズで突き刺せば簡単じゃん』

「我輩の体を傷つけてどうするんだよ!! アルフレドがあの体に入っている事に関して心当たりがある、だから――」

『ええ……デール、あの体に戻る気なの……? だとしたら結局敵対しちゃうじゃん』

 あ……。
 だーもう! 色々面倒くさい戦いだな、おい!!

「いてて、くそ、油断した……」

「くっアルフレドの奴が起き上がった、とにかく今はあいつを押さえ込む方が先だ!! うおりゃあああああ!!」

 鳩尾が隙だらけだぞ、アルフレド!!

「えっ!? グフッ!!」

 中身がアルフレドでもやはり我輩の肉体ではこのタックルに耐え切れん様だな。
 だが……自分で言うのもなんだが……不意を付いたとはいえさすがに簡単に倒れすぎではないか? 元に戻ったら接近戦の特訓をしないといけないか。

「……おお、勇者殿やるな……デイルワッツの奴を……一発で押し倒したぞ……」

「……出来れば……この術をかけている……あの術者を……止めてほしかった……ですね……」

「……デール様が……そこまで……考えているとは……思えない……です……」

 よし、上を取ったぞ。
 後は脅しに傷つけないようアブソーヘイズを首筋に当ててと。

「さて、貴様には聞きたい事が山ほどあるが、一番聞きたいのはその体の事だ。アナネットが関っておるよな?」

 というか関ってない方がおかしいが。

「フッ、フハハハハ!! そうだアナネットの固有魔法を使い抜け殻となったこの体を俺がいただいたのだ! まさか、この体がこんなに格闘に弱いとは思いもしなかったがな。くそ……当時は肉弾戦で戦うべきだったか……」

 うるさいわ……。
 そういえばそのアナネットの奴、最初からずっと我輩に対して敵意を向けてこなかったが……やはりあいつは我輩の味方と考えてよいのか?
 いや、しかしアルフレドの奴を我輩の体に移しておるし……う~ん……分からん。

「ふん、貴様に敗北し仕方なく従っていたが……ずっとチャンスを待っていたんだ。苦痛の日々だったぞ、デイルワッツ。……貴様が人間界で邪魔になる勇者と天使の剣を始末した後、この体に入った俺が貴様を始末するはずだったのだが……まさか貴様が天使の剣を抜いて勇者になるとはな。すぐに始末しても良かったのだが、天使の剣は天界の物……力は未知数だった――」

 相変わらずベラベラとしゃべる奴だな。
 そこまでしゃべれば大方の内容が想像つくわ……。

「――だから我輩が人間になった事を言わず、悪魔四天王を筆頭に部下達に勇者として始末させるように仕向けた……そんなところか?」

「フハハハ、その通りだ!!」

 こいつ開き直りおってからに!!

「ふん、貴様らしい卑怯なやり方だな」

「策と呼べ、だがまさか四天王全員を貴様が倒すとは思わなかったぞ」

 貴様がけし掛けたから仕方なくだよ、まったく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...