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第七章 とある天使の昔話
7 『ご苦労だったな、後は任せて貴様は休むといい』
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「……ん、ん……いてて……」
……痛い……という事は、私は……生きているのか……?
……あれで生きているとは、我ながら悪運が強いものだな。
『大丈夫ですか、マスター?』
「……ああ……何とかな……いっつ! 私は……気を失っていたのか……?」
『はい、数秒ですが』
「……そうか、うっ」
体の痛みが激しいが……致命傷的な傷もなさそうだし、両手両足も動く。
あの大爆発の割にダメージが少ないような……。
『急に動いてはいけません、今治療中ですから』
なるほど、気を失っている間にアブソーヘイズが治療をしていたのか……実に助かる。
……あれからどうなったのだ? シルバは? ここは? 状況把握をしなければ。
「……森の中……そして……あそこには見覚えのある壁……という事は……ここは神殿の外の森か……?」
『はい、爆発直前にあの天使の束縛が緩んだため吸収していた魔力で防御壁を張り、ある程度のダメージを防ぎましたが爆風でこの森の中まで吹き飛ばされました』
爆発直前、先にシルバが力尽きたのか。しかしあの時にそんな事をしていたとはな、そのおかげで怪我はしているが五体満足、やはり私は悪運が強いみたいだ……いや、違うな。
「治療だけではなく、あの状況でそこまでしていたのか……お前は優秀だな……」
運がいいのだ、こいつに出会った事が。
いい魔剣だ……動ける範囲の縛りさえ除けばな。
『いえいえ、私の役目を果たしているだけですから。それと現在、爆発の影響で周辺に魔力が漂い魔力感知が出来ないようです。捜索もされないみたいですし、しばらくここに潜んでいましょう』
ん? 探索もされないとはどういう事だ? 私の生死を確認する為に捜索されるはずだ。
「なぜ捜索されないと分かるのだ?」
『なぜって、神殿内の天使達がそう言っていますから』
は!? 神殿の天使達が言っているだと!?
…………ガヤガヤと話し声は聞こえるが内容はまったくわからないんだが……。
「お前、神殿の中の声が聞こえるのか?」
『はい、そうですが……何かおかしいですか?』
おかしいと言うかなんと言うか……地獄耳って奴なのだろうか、そもそも剣に耳なんて……まぁいい利用できる物は利用せんとな。
「気にするな、では爆発後からの天使達の会話を私に話せ」
『了解です』
※
「シルバがエリンと共に爆発したぞ!」
「――2人の姿がない、どうなったんだ?」
「まだエリンが生きているかもしれん、動けるものは捜索を――」
「……シルバもエリンもあの大爆発じゃ……もはや生きてはおらぬじゃろ……」
「リカルド様、まだ治療がすんでいません、今動かれてはお体に……」
「……ワシは大丈夫じゃ、仮にエリンが生きていたとしてもあの爆発じゃ……虫の息じゃろうて。それに魔力爆発の影響で周辺に魔力が漂い魔力感知が出来ん……それに今、弱った奴を探す事より早急に行わなければならぬ事がある」
「早急に行わなければならない事……ですか?」
「そうじゃ、天使族がほとんどやられてしまったこの状態を魔界の者に知られれば一大事じゃ、報告によればこの天界を常に見張っているやからもいるらしいからの。もし今、魔族に攻め込まれでもすればこの天界は滅びてしまう」
「なるほど……確かにそうですが、どうするおつもりなのですか?」
「……うむ、天界に結界を張り一時的に外部との接触を断つのじゃ」
「な、しかしそんな強力な結界をどうやって張るおつもりですか? ――まさか!?」
「そうじゃ、これよりワシは神殿の地下へ行き、大結界を発動させる」
「やはり! そんな事をなさっては大結界の核となり、リカルド様が消滅してしまいます!」
「その核の役目は私がやります! ですから――」
「……これは大天使であるワシにしか出来ん事じゃ、おぬし等も分かるであろう?」
「……っ」
「……ですが魔族に我々がこの天界からも出られないと判れば、人間界を襲い始めてしまうのでは?」
「そうじゃ、じゃからこれを人間界に託そうと思う」
「なるほど……結界石ですか。――分かりました、私が人間界へと赴きこの結界石を授けてまいります。私が出たと同時に結界を張ってください」
「それではお主が天界に戻れなくなってしまうぞ」
「かまいません、何時魔族が攻めてくるかわからないのに私を待っていては意味がありません。そのまま人間界の行く末を見届けます」
「すまぬ……」
※
なるほど、そんな事になっていたのか。
しかし私より魔族を脅威と取るか、まぁアブソーヘイズが防御壁と治療が出来る事を知らぬからそうなるか、私も同じ結論に至るだろう。
……だとすれば行動を開始せねば。――よし、羽は動く様にはなったようだし、何とか飛べそうだ。
魔界だと今の私では簡単に魔族にやられてしまう、だとすれば――
「アブソーヘイズ、会話と治療はもういい。今すぐに人間界に降りて身を隠し、改めて治療と魔力を回復させるぞ」
グズグズしていたら天界に閉じ込められてしまうし、あの人間界に降りる天使に見つかってしまうかも知れん、普通なら雑魚なんだが今は私の方が雑魚だからな……。
『了解しました、ですが自然での魔力回復には相当時間がかかると思いますが』
自然での魔力回復だと?
「何を言っておるのだ、人間の魔力を吸収すればいいではないか」
『その人間が強者であれば……しかし一般の者では魔力が低すぎて完全回復には何千、いえ何万になるかもしれないです』
何千、何万だと!? さすがにそれは非効率すぎる、人間の魔力はそこまで低いのか。
「……考えていてもしかたない、今は時間がないからな」
人間界で体を癒す間に計画を立てておかねばならんしな。
――天界の者達に必ず復讐してやるからな!!
※
「ふぅ……これで北の国【カルリック】は大丈夫だな、大きな国である西の国【バルガス】、東の国【マレリス】も結界石を渡した。ふぅ……人間界【ディネッシュ】に来て約1週間か、思った以上に時間がかかったな……天界はどうなっているのだろうか」
やっと見つけた。
「いや、俺は俺の使命を果たさねば。え~と、後は南の国【アルムガム】だな」
油断しすぎだ、真上ががら空きだぞ。
「……そうか、ではその南の国【アルムガム】へは私が行ってやるっ!」
「え? な!? ――がはっ!!」
こいつ程度でも背中から奇襲せねば倒せないとは情けない。
「……そんな……エリン……貴様、生きていた……の……か……」
クスクス、いい顔だ、その絶望した顔は……実にな。
「ご苦労だったな、後は任せて貴様は休むといい」
――魔力を私に渡して永遠に、な。
……痛い……という事は、私は……生きているのか……?
……あれで生きているとは、我ながら悪運が強いものだな。
『大丈夫ですか、マスター?』
「……ああ……何とかな……いっつ! 私は……気を失っていたのか……?」
『はい、数秒ですが』
「……そうか、うっ」
体の痛みが激しいが……致命傷的な傷もなさそうだし、両手両足も動く。
あの大爆発の割にダメージが少ないような……。
『急に動いてはいけません、今治療中ですから』
なるほど、気を失っている間にアブソーヘイズが治療をしていたのか……実に助かる。
……あれからどうなったのだ? シルバは? ここは? 状況把握をしなければ。
「……森の中……そして……あそこには見覚えのある壁……という事は……ここは神殿の外の森か……?」
『はい、爆発直前にあの天使の束縛が緩んだため吸収していた魔力で防御壁を張り、ある程度のダメージを防ぎましたが爆風でこの森の中まで吹き飛ばされました』
爆発直前、先にシルバが力尽きたのか。しかしあの時にそんな事をしていたとはな、そのおかげで怪我はしているが五体満足、やはり私は悪運が強いみたいだ……いや、違うな。
「治療だけではなく、あの状況でそこまでしていたのか……お前は優秀だな……」
運がいいのだ、こいつに出会った事が。
いい魔剣だ……動ける範囲の縛りさえ除けばな。
『いえいえ、私の役目を果たしているだけですから。それと現在、爆発の影響で周辺に魔力が漂い魔力感知が出来ないようです。捜索もされないみたいですし、しばらくここに潜んでいましょう』
ん? 探索もされないとはどういう事だ? 私の生死を確認する為に捜索されるはずだ。
「なぜ捜索されないと分かるのだ?」
『なぜって、神殿内の天使達がそう言っていますから』
は!? 神殿の天使達が言っているだと!?
…………ガヤガヤと話し声は聞こえるが内容はまったくわからないんだが……。
「お前、神殿の中の声が聞こえるのか?」
『はい、そうですが……何かおかしいですか?』
おかしいと言うかなんと言うか……地獄耳って奴なのだろうか、そもそも剣に耳なんて……まぁいい利用できる物は利用せんとな。
「気にするな、では爆発後からの天使達の会話を私に話せ」
『了解です』
※
「シルバがエリンと共に爆発したぞ!」
「――2人の姿がない、どうなったんだ?」
「まだエリンが生きているかもしれん、動けるものは捜索を――」
「……シルバもエリンもあの大爆発じゃ……もはや生きてはおらぬじゃろ……」
「リカルド様、まだ治療がすんでいません、今動かれてはお体に……」
「……ワシは大丈夫じゃ、仮にエリンが生きていたとしてもあの爆発じゃ……虫の息じゃろうて。それに魔力爆発の影響で周辺に魔力が漂い魔力感知が出来ん……それに今、弱った奴を探す事より早急に行わなければならぬ事がある」
「早急に行わなければならない事……ですか?」
「そうじゃ、天使族がほとんどやられてしまったこの状態を魔界の者に知られれば一大事じゃ、報告によればこの天界を常に見張っているやからもいるらしいからの。もし今、魔族に攻め込まれでもすればこの天界は滅びてしまう」
「なるほど……確かにそうですが、どうするおつもりなのですか?」
「……うむ、天界に結界を張り一時的に外部との接触を断つのじゃ」
「な、しかしそんな強力な結界をどうやって張るおつもりですか? ――まさか!?」
「そうじゃ、これよりワシは神殿の地下へ行き、大結界を発動させる」
「やはり! そんな事をなさっては大結界の核となり、リカルド様が消滅してしまいます!」
「その核の役目は私がやります! ですから――」
「……これは大天使であるワシにしか出来ん事じゃ、おぬし等も分かるであろう?」
「……っ」
「……ですが魔族に我々がこの天界からも出られないと判れば、人間界を襲い始めてしまうのでは?」
「そうじゃ、じゃからこれを人間界に託そうと思う」
「なるほど……結界石ですか。――分かりました、私が人間界へと赴きこの結界石を授けてまいります。私が出たと同時に結界を張ってください」
「それではお主が天界に戻れなくなってしまうぞ」
「かまいません、何時魔族が攻めてくるかわからないのに私を待っていては意味がありません。そのまま人間界の行く末を見届けます」
「すまぬ……」
※
なるほど、そんな事になっていたのか。
しかし私より魔族を脅威と取るか、まぁアブソーヘイズが防御壁と治療が出来る事を知らぬからそうなるか、私も同じ結論に至るだろう。
……だとすれば行動を開始せねば。――よし、羽は動く様にはなったようだし、何とか飛べそうだ。
魔界だと今の私では簡単に魔族にやられてしまう、だとすれば――
「アブソーヘイズ、会話と治療はもういい。今すぐに人間界に降りて身を隠し、改めて治療と魔力を回復させるぞ」
グズグズしていたら天界に閉じ込められてしまうし、あの人間界に降りる天使に見つかってしまうかも知れん、普通なら雑魚なんだが今は私の方が雑魚だからな……。
『了解しました、ですが自然での魔力回復には相当時間がかかると思いますが』
自然での魔力回復だと?
「何を言っておるのだ、人間の魔力を吸収すればいいではないか」
『その人間が強者であれば……しかし一般の者では魔力が低すぎて完全回復には何千、いえ何万になるかもしれないです』
何千、何万だと!? さすがにそれは非効率すぎる、人間の魔力はそこまで低いのか。
「……考えていてもしかたない、今は時間がないからな」
人間界で体を癒す間に計画を立てておかねばならんしな。
――天界の者達に必ず復讐してやるからな!!
※
「ふぅ……これで北の国【カルリック】は大丈夫だな、大きな国である西の国【バルガス】、東の国【マレリス】も結界石を渡した。ふぅ……人間界【ディネッシュ】に来て約1週間か、思った以上に時間がかかったな……天界はどうなっているのだろうか」
やっと見つけた。
「いや、俺は俺の使命を果たさねば。え~と、後は南の国【アルムガム】だな」
油断しすぎだ、真上ががら空きだぞ。
「……そうか、ではその南の国【アルムガム】へは私が行ってやるっ!」
「え? な!? ――がはっ!!」
こいつ程度でも背中から奇襲せねば倒せないとは情けない。
「……そんな……エリン……貴様、生きていた……の……か……」
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