【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
13 / 75
3章 二人の遭遇

アースの書~遭遇・4~

しおりを挟む
「では、失礼しますネ」

『ああ』

 今俺は体をバラバラに分解され、そのパーツをラティアが着けていく。
 エイラの考えたのはこうだ。

「ラティアをアースの中に入れるってのはどう?」

 自分の体の中に人を入れるって発想は流石になかった。
 それこそ本来のプレートアーマーの使い方ではあるんだが……。

「……すみませン……私、幼い頃に左右の目の色が違うって笑わたり虐められたのでス。それ以来人前で素顔を出せなくテ……」

『そうか……』

 なるほど。
 そのせいで前髪を長くして目元を隠していたのか。
 こればかりは安易な言葉を言わない方がいいよな。

「頭をつけさせていただきまス……よいしョ」

 ラティアは俺の体を全てつけ終わった。
 感覚はないにしろ俺の中に人が居るって不思議な気分だ。

『エイラ、どうだ?』

「うん、ばっちり! 全然ラティの顔が見えないよ」

 そりゃそうだよな。
 プレートアーマーなんだし。

『ラティアは?』

「あっはイ。私も問題は無いでス」

 おおう、体の中から声が聞こえる。
 これまた不思議な感じ。

『問題が無いのなら、これで旅に出るとして……路銀をどうするかだな』

 今は完全の無一文。
 現状だと宿はおろか旅の道具も揃えられん。

「それなら大丈夫でス。家に蓄えがありますかラ」

 んー……人のお金を使うのは気が引けるが、今はそうもいっていられないか。
 今回は甘えさせてもらおう。

『すまないが頼らせてもらうよ。なら、夜になってからラティアの家に戻るとしようか』

 流石によるならレインも寝ているだろうし、誰かに見られる心配もないだろう。

「そんな事をしなくても、あ~しが姿を消してひとっ飛びでサイフを取って来るよ」

 あーその手があったか。
 不可視魔法って便利だな。
 俺も使えたらこんな苦労はしないのに。

「じゃあ、お願いできル? お財布の場所はわかるよネ」

「うん、わかるよ~。それじゃあ行ってきま~す」

 エイラの姿が消えて風を切る音が聞こえた。
 颯爽と飛んで行ったようだ。

『ラティア、この辺りで魔力にまつわる場所ってあるか?』

「そうですネ…………あ、そういえばアカニ村の近くに枯れた魔樹の跡地があったはずでス」

『魔樹の跡地か』

 跡地となるとオリバーの手掛かりはなそうだが、今は他に行く当てもない。
 とりあえずアカニ村に行って情報を集めて……。

「おりゃあああああああああああああ!!」

『へっ?』
「え?」

 こっこの声は、まさか!
 後ろを振りかえると同時に強い衝撃が襲い、地面に倒れてしまった。

「ぐえッ! ――あだッ!」

 と同時に俺の中に居るラティアから変な声と、コーンという物が当たった音が聞こえた。

「ふん、まだこんな近くにいるとはね」

 俺達に馬乗りをしている奴は、やっぱりレインだ。
 まさかこんなに早くここまで追いかけて来るとは思いもしなかった。
 くそっエイラがいない時にかぎって。

『ラティア! 大丈夫か?』

「あウ~……お星さまが飛んでましゅ~」

 駄目っぽい。
 さっきの衝撃で頭を打ったのかもしれん。

「さあ、もう逃がさないわよ。観念しなさい」

 状況的に俺が何とかするしかないが……駄目だ、しっかりと押さえつけられていて体が動かん。
 そもそも、よく考えたらこの体は筋肉が無いじゃないか。
 つまり今の俺はこれを返す手段はないと……なんて非力な。

「レイン! 急に飛び出さないでよ! ちゃんと確認してから行動に移らなくちゃ」

 走って来た男性は……ジョシュアか。
 レイン同様成長はしているが、相変わらずの美形だからすぐにわかった。
 そうかジョシュアまでいたのか。

「そんな事をしなくてもいいわよ。こいつが追っていたデュラハンなんだから」

 俺だと確信しているのか。
 レインの勘は相変わらずに鋭いな。

「いやいや、そんなありふれたプレートアーマーを着た人なんてたくさんいるでしょ」

 失敬な。
 確かに見た目はそうかもしれないが、魂が入っているプレートアーマーはありふれてなんかいないぞ。

「はぁ~……さっきも言ったけど、このアーメットの凹みはアタシがつけたものに間違いはないわよ」

 ……え? 凹み? 俺の頭って凹んでいるのか?
 おいおい、それは教えてくれよ。
 そりゃあ俺だってわかっちゃうじゃないか。

「でも、念の為にアーメットを外して中身を確認した方がいいって……」

 ジョシュアの慎重さは全然変わっていないな。

「わかったわ。じゃあ、ジョシュアがこいつのアーメットを外してちょうだい」

「えっ! ボクが!?」

 まずい、中にラティアが居る事もバレてしまう。
 なんとかラティアの顔を隠さないと!

『ラティア! 目を覚ませ! ラティア!』

「むきュ~……」

 まだ星が飛んでいるみたいだ。
 これは万事休す。

「アタシは両手塞がっているからしょうがないじゃん。ほら、早く!」

「あう……失礼しまーす……よいしょっと」

 ジョシュアが俺の頭を手にとって外した。
 ああ、終わった。
 旅に出る前に終わった。

「……」

「……」

 ……?
 あれ、なんか2人が無言で固まっているぞ。
 どうしたんだろうか。

「……頭があるね……」

「……あるわね……」

 2人がラティアを見て困惑しているぞ。
 これはもしかして。

「……うッ……はえ? ……あッ」

 ラティアが目を覚まし、レインと目が合った。

「えと……貴女は……誰ですか?」

 やっぱり! レインはラティアだと気が付いていない様子だ。
 よし、これならごり押しで誤魔化せるかもしれないぞ。

「えと……私ハ……」

 ここで本名を名乗ってしまうと駄目だ。
 偽名を名乗らせないと。
 えと……えと……ああ、この名前しか思いつかん!

『アイリス・パーカーだ! ラティア、アイリス・パーカーと声を変えて名乗るんだ!』

 おばあちゃんごめん。
 名前を使わせてもらうよ。

「え? あッ! ウウンッ! アイリスデス! 私ハアイリス・パーカートイイマス」

 何故高い声で片言。
 まぁいいや、元々ラティアは独特な口調だったしこれならバレにくいだろう。

「ご、ごめんなさい! アタシったら早とちりしちゃって!」

 レインが上から退いてくれた。
 うまいこと騙せたようだ。
 いやはや助かった。

「だから言ったのに……すみません、これお返しします。本当にすみませんでした」

 ジョシュアが頭を下げながら俺の頭を返してくれた。

「イイエ~間違イハ誰デモアリマスカラ気ニシナイデ下サイ」

『よし、俺の頭も戻って来たしさっさここから出よう』

 長居をしてバレたらやばいしな。

「デハ、私ハコレデ失礼シマスネ~サヨウナラ~」

 俺とラティアはそそくさと神殿から出て行った。
 なんとか逃げられた……あー良かったー。

「……プハッ! しっ心臓が口から飛び出るかと思いましタ!」

『ああ、俺もそう思った……』

 心臓も無ければ、飛び出る口も無いけど。

「あれ? なんで外に出ているの?」

 姿は見えないがエイラの声が聞こえる。
 今戻って来たのか、もう少し早く戻ってきてほしかったな。

『説明は後だ。今すぐここから離れるぞ、エイラは不可視のまま着いて来てくれ』

「? よくわかんないけど、わかった」

 レイン達が神殿から出て来て、エイラの姿を見られたらおしまいだからな。
 ここはさっさと次の目的、アカニ村へ向かうとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...