【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
14 / 75
3章 二人の遭遇

レインの書~遭遇・1~

しおりを挟む
 アイリスさんが白の神殿から出て行った。
 ん~絶対にデュラハンだと思ったのにな。

「もうーボクまで恥をかいたじゃないか」

 膨れ面をしたジョシュアがぼやいている。
 だってあのおじさんの言っていた事は本当だと思ったし、アタシの勘もこの神殿にデュラハンいるって自信があったんだもん……。



 ◇◆数刻前◇◆

 さてリリクスの街に戻ったし、さっそくデュラハンが行きそうな魔力のが集まる場所の情報収集といきますか。
 その辺に居る人に片っ端から話しかけるのもいいけど、それだと時間が掛かるわよね。
 となると、人が集まっていて情報が聞きやすい場所といったら……酒場か。

「ねぇジョシュア、リリクスに酒場ってあったかしら?」

「酒場? ……えーと、確かリリクスの街の西際辺りにあったはずだよ」

 あるのなら行く場所は決まりね。

「それじゃあ、その酒場に行ってみましょう」

「了解。人が居ればいいけど……」

 そこは別に気にする事はないのに。
 仮に人が居なくても、営業さえしていれば問題は無し。
 酒場のマスターなら客から聞いたとかで情報を持っている可能性はあるし、マスターは色んな人とも出会っている。
 だから、そういった事に詳しい人を紹介してもらえばいいだけの話。

「そんな事は気にしなくていいわよ。ほら、行くよ」

「はーい」

 ただ、問題があるとすればこの時間に営業しているかどうかなんだけどね……まぁ営業していなかったらその時はその時で、また別の方法を考えればいいか。



 良かった、この時間でも酒場はやっていた。
 しかも思ったより人がいるわね。
 とはいえ、まずはマスターに話を聞いてみましょう。

「ちょっといいかしら?」

「ん? なんだい?」

 これまた屈強な体をしたマスターね。
 コップを磨くより、剣を磨いている方がしっくりきそう。

「この辺りで魔力が集まる場所とか魔力に関わる場所ってないかしら?」

「魔力の集まる場所だ? んな事を聞いてどうするんだい」

「ちょっと色々あってね」

 流石にデュラハンがこの街の傍にいたなんて言えないよね。
 余計な混乱は避けるべきだし。

「色々ねぇ……まぁいいや、何か事情があるみたいだしこれ以上は聞かねぇよ」

「助かるわ」

 空気を読んでくれるマスターで良かった。
 たまにいるのよね、言いたくないのにしつっこく聞いてくる人が。

「んー魔力の集まる場所か。それなら俺に聞くより、あの親父に聞いた方がいいぜ」

 マスターが顎をしゃくった。
 その先にはテーブルに座ってお酒を飲んでいる、アフロヘアーでまん丸メガネをかけたちっこいおじさんがいた。

「……えっ? ええっ!? あの人に!?」

 ジョシュアが怪訝な顔をして驚いている。
 正直、アタシも同じ顔をしているかもしれない。

「ああ、あの親父はこの辺りでは有名な変じ……物知りなんだ」

 今変人って言いかけたよね。
 絶対に言いかけたよね。

「だから詳しく聞けると思うぜ」

「わっわかったわ……ありがとう」

 う~ん……情報を得るためとはいえ、なんか話し掛け辛いな。
 なんか怪しい人なんだよね。
 見た目で判断しちゃいけないけど……よし、こうなったら。

「さっジョシュア、あの人に声を掛けて」

 ジョシュアに押し付けよう。

「……へっ! ボクが!? なんで!?」

「ほら、早く」

 ジョシュアの脇腹を肘でツンツンする。
 ジョシュアって脇腹が弱いんだよね。

「ちょっ! やめてよ! もーしょうがないなー……はぁーこういう事はいっつもボクにやらせるんだから……」

「何か言った?」

「いいえ……何も……」

 ジョシュアがアフロのおじさんに近づいて行った。
 アタシは少し離れて後ろについて行く。

「あのーすみません。ちょっといいですか?」

「む、あなたは誰ですかな?」

 アフロのおじさんがジョシュアの方を向いた。
 う~ん……やっぱり怪しい人にしか見えない。

「あっボクはジョシュアと言います。で、彼女はレインです」

 こいつ、道連れにしやがった!
 おじさんもこっちを見ているし。
 これは何かしらアクションしないと駄目だよね。

「えと、どうも」

「どうもですな、私はジェイゴローと言いますな。で、私に何か用ですかな?」

「マスターに、この辺りで魔力が集まる場所とか魔力に関わる場所はジェイゴローさんに聞けばわかるとお聞きしまして」

「なるほどですな。ふむ、この周辺ですとアカニ村の近くに枯れた魔樹の跡地があるですな」

「アカニ村……ですか」

 枯れた魔樹の跡地か。
 魔樹は魔力を生み出しているからデュラハンが狙う可能性は十分あり得るわね。
 これからはそこも視野に入れる様にしよう。

「あと私の仮説が正しければ、白の神殿も怪しいですな」

「白の神殿? そこはどういう所なの?」

「この街の近くにある神殿ですな。今は誰も住んでいない上に、中にはモンスターも潜んでいるので誰も寄り付かない場所ですな」

 なにそれ。
 聞く限りだとただの廃墟の感じじゃない。

「どうして、そこが怪しいと?」

「歴史を調べて見ると非常におかしいのですな!」

 何やらジェイゴローさんが声を荒らげ始めた。
 なに? 急にどうしたの?

「ふむふむ、歴史に何かあったんですか?」

 ジョシュアはそんな事を気にせずにジェイゴローさんに質問をしている。
 何故だろう、アタシはこれ以上この人の話を聞いてはいけない気がする。

「逆ですな! 何もなかったのですな!」

「「はい?」」

 何も無かった?
 この人は一体何を言っているんだろう。

「あの様な神殿なのに何一つ資料が残っていないのですな! いつ建てられたのかも謎ですな! 伝承も無いですな! 昔話でも伝わっていないですな! ここまで何も残っていないのは明らかに不自然ですな! あのにあの神殿の中には罠がいっぱいですな! まるで何かを守るか隠そうとしている様ですな! そう考えるときっと奥には何かがあると思うのですな!」

 急にジェイゴローさんがテーブルの上に立ち熱弁をし始めた!
 なに? なんなの!? なんか鬼気迫る感じで怖いんですけど!

「はあ……こいつのスイッチを入れてしまったようだな」

 酒場のマスターが呆れ顔でアタシたちの傍にやって来た。

「嬢ちゃん達、一度話し出すと一晩この親父は止まらんぞ。用事があるならさっさと行った方がいいぜ、このまま聞くなら話は別だがな」

 アタシの嫌な予感がしたのはこれだったのか!

「しかしですな! そこから推測するに私の考えでは、私の先祖が――」

 マスターが間に入ったのに止まる気配がない。
 そして何故か自分の先祖話になって来ているし。

「……いえ、遠慮します」

「ボクも……」

 この感じだと本当にしゃべり続けそう。
 情報をくれたのはありがたいけど、流石に一晩も話を聞いていられないわ。

「だろうな。おーい、ムタ! すまんがジェイゴローの親父の家に行ってカミさんを連れて来てくれないか!」

「はあ? またなの? わかったわ、ちょっと待ってて!」

 店の奥から女性が出て来て、走って出て行った。
 何かすごく申しわけない気分になって来た。

「あの、すみません。ご迷惑を……」

 自然と謝罪の言葉が口から出て来た。

「何を言ってんだ、嬢ちゃん達のせいじゃないさ。ここは気にしないで、行った行った」

「はい……失礼します……」

 アタシ達はマスターに頭を下げ、酒場を静かに出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...