【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
16 / 75
4章 二人の修理と盗賊

アースの書~修理・1~

しおりを挟む
 ◇◆アース歴9年 6月13日◇◆

 リリクスを出発してはや2日。
 俺達は馬車を乗り継いでアカニ村へと向かっていた。

「……うう……お尻が痛イ……」

 俺の中に居るラティアが唸っている。
 それはそうだ、この2日間この馬車の揺れに加えて金属の俺の中に入っているのだから。

「すぴ~すぴ~」

 誰もいない俺の右隣から寝息が微かに聞こえる。
 不可視魔法で姿が見えないエイラが寝ているみたいだ。
 姿は消えていてもエイラの存在自体は消えるわけじゃない。
 だから普通に声も聞こえるし、物体を通り抜ける事も出来ない。
 今は馬車に乗っている人が少ないからエイラが乗っているが、人が多い時は馬車の中には入れない。
 その時は仕方なく馬車の天井の上にいるか、飛んで馬車と並走をしているらしい。
 毎回外に出る時は雨が降ってきませんようにと祈っている。
 うーん……ラティアを含め、もうちょっと快適な旅にする方法を考えないといけないな。
 どうすれば2人の負担が減らせるだろうか。

「あれ? なんか馬車が止まりましたヨ」

 本当だ。
 考え事をしていて馬車が止まった事に気が付かなかった。

『おかしいな、まだ停車する場所でもないのに』

 他の客も馬車が止まった事に動揺をしている。

「すみません。ちょっとお待ちください」

 御者が俺達に一声かけて馬車から降りて行った。

『んー?』

 外を覗いて見ると、プレートアーマーをきた3人組が道を塞いでいる。
 その3人の御者が近づき何やら話している。

「何かあったんですかネ?」

 あの3人の佇まいやプレートアーマーの具合を視るに、どこかの兵士っぽい。
 もしかして俺達を捕まえる為にレインが包囲網を引いたんじゃないだろうか。
 もしだとすれば、すぐに逃げる様にしておかないと。

「あ、御者さんが戻ってきましたヨ」

 御者が何やら焦っている様子で馬車に戻って来た。

「お客さん、この先に盗賊が住み着いて馬車を襲っているらしいです」

 それで兵士が道を塞いでいたのか。
 レインの包囲網じゃなくてよかった。
 いや、盗賊が馬車を襲っているのだから良くないか。

「ですので、この件が解決するまで先に行けません。申し訳ないのですが、この馬車はこの近くにあるアルガムまでとさせて頂きます」

 そうなるよな。
 まぁこの場で降ろされるよりはましか。

「アース様、どうしましょウ」

 近くにレインがいるのならさっさと逃げたいところだが、この2日は全く見ていない。
 この通行止めも包囲網じゃないとなれば焦る必要もないよな。

『こればかりは仕方ない。アルガムで様子を見よう』

「わかりましタ。そうしましょうカ」

「すぴ~……」

 ※

 ここがアルガムか。
 思ったより大きい街だな。
 ……あ、だったら鍛冶屋があるかもしれんぞ。

『なあ、宿屋へ行く前に鍛冶屋を探さないか?』

 鍛冶屋があるのなら、頭の凹みを治しておきたい。
 レインが目印にしているし、俺的に凹んでいるというのは気分的に嫌だ。

「鍛冶屋ですカ?」

「なになに? 新品の体にするの?」

『違うよ、俺の頭の凹みを直したく……って、新品の体? それはつまり、俺の魂を別の鎧に入れ替えられるって事か?』

 それが出来るのならば、頭の凹みなんて気にしなくていいじゃないか。
 それどころか常に体を入れ替えればレインを簡単にまける。
 なんだ、早く言ってくれよな。

「アースの魂はアーメットに付着しているから、別の鎧に乗せれば体は入れ替えられるよ。とは言っても、すぐに動けるってわけでもないけどね。新たに魔力を鎧に纏わせないといけないから1~2日はかかちゃうかな」

 なんだ一番変えたかったアーメットは無理なのか。
 鎧もこれと同じようなタイプでないと駄目だな。
 でないと、組み合わせ次第で逆に目立ってしまう。
 鎧が金銀で豪華なのにアーメットだけ普通って不自然過ぎるぞ。

『そっか、それは残念……ちょっと待て、俺の魂がアーメットに付着ってじゃあこの頭が破損をした場合は……』

「もちろん、アースの魂は消滅しちゃうね」

 やっぱりか!!
 あっぶねぇ! あの時のレインの一撃で俺が消えていたかもしれなかったのか。
 頭が凹んだだけで済んで良かった……本当に良かった。

「あの~……アーメットを直す方向になっていますが……私としては、その……アース様を脱ぎたくないでス……」

 そうだった。
 自分の頭の事ばかり考えていて、ラティアの事を忘れていた。

『すまない、ラティアは素顔を出したくないから俺の中に入っていたんだったな』

「それもありますけド、(アース様に包まれているというこの状況を捨てるのは勿体なイ……)」

『ん? 何か言ったか?』

「あッ! いやッ! ナンデモナイデス! アハハハハハ!」

 レインを誤魔化した時みたいに、片言で声が高くなっているのは何故だろう。
 いまそんな事をする必要は無いんだが……まぁいいや、それよりもこの状況を考えなければ。

『どうしたものか……うーん』

 とは言っても、俺の頭の凹みを直すには脱ぐしかない。
 しかし、脱いでしまうとラティアの顔が出てしまう。
 両方は無理だし……まさにあちら立てればこちらが立たぬだ。
 こういうのが一番難しいんだよな。

『そもそも、俺はラティアの眼は綺麗だと思うから別に隠す必要なんてないと思うんだがな……』

「――ッ!!」

 ラティアの眼を見てからずっとそう思っていた。
 しかし、それで虐められてラティアの心に傷ついてしまった事も事実だ。
 やはりここはラティアの事を優先して……。

「いっいいいいいま、なっなんておっしゃいましたカ!?」

『へっ? 今?』

 俺、何か言ったっけ?

「わっわわ私の眼が……その……きっききききき綺麗とかなんとカ……」

『っ!』

 しまった! さっき思ったのが声に出してしまっていたか!
 これはやってしまった!

『すまない! 決して変な意味で言ったんじゃないんだ! ラティアの眼は本当に綺麗で――』

「アース様に綺麗だと言われタ、この眼ヲ……綺麗だト……――ッ! 鍛冶屋さんを探しましょウ! そして、アース様の頭を直しましょウ!」

『え、でもそれだと君の顔が……』

「大丈夫でス! 何の問題もありませン! さぁ行きましょウ!」

 えっ? えっ? 何がどうなったんだ?
 ラティアが急にスキップを踏んで歩き出したぞ。
 一体ラティアの身に何が起こったんだ!?



「ん~この辺りにはあの追っかけて来る人間は居ないみたいだし、ラティを知っている人間もいない。だったら、普通に前髪を下ろせばいいだけだったんぢゃ? ……まぁいいか、ラティが嬉しそうだし黙ってよっと……ちょっと待って、あ~しを置いて行かないで~」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...