【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
23 / 75
4章 二人の修理と盗賊

アースの書~修理・3~

しおりを挟む
 ―カーン、カーン

 作業場に金属を打つ音が鳴り響く。
 汗水流して作業している店主を俺はぼーっとしながら見ていた。
 こうして武器が作られるんだなーと勉強にはなるが……この光景をずっと見ているだけというのも実に辛い。

『……もう夕方か』

 窓から入る日の光がいつの間にか赤くなっている。
 1日がもうすぐ終わるか。
 
「おーい、ジェームスいるか?」

 店の方で男性の声がした。
 どうやらお客さんが来たようだ。

「今日は客が多いな、作業が進まん……よいしょっと」

 店主が作業を辞めて店の方へといった。
 にしても、レインが短時間で戻って来た時は一瞬焦ったなー。
 俺の正体に気付いたかと思った。
 でも、そんな事はなかったしそこで良い事も聞けた。
 レインは今、協会って所に所属していてそこから緊急招集の連絡が来て戻る事になったらしい。
 またいつ追いかけて来るかはわからないけど、しばらくの間は警戒しなくてすむ。
 そう思うだけで実に心が軽い。

「らっしゃい……お、町長じゃないか。まだ武具は全部仕上がってないんだが……」

「いや、もう武具を作る必要なくなったからそれを言いに来たんだ」

 必要が無くなった?
 もう帝国兵が来て盗賊を討伐したのだろうか。

「ん? どう事だ?」

「旅をしている剣士ソフィーナさんとジョンさんが盗賊を捕まえてくれたんだよ」

 なんと。
 帝国兵でも敵わなかった盗賊相手にたった2人で捕まえたのか。
 へぇーやっぱどの時代にも強者はいるもんだな。

「何だって! おいおい、それは本当の話か?」

「ああ、私も確認をしたから間違いない」

「そうか、わかった。解決して何よりだが、出来た分の武具はどうするよ?」

 俺の目の前にはざっと5人分の武具が並んでいる。
 こいつらが無駄にならなきゃいいが……じゃないと可哀想だ。
 俺の体が鎧になってしまったせいか、そんな風に思ってしまう。

「出来た分の請求書を頼む。物の方は倉庫に保管しておくから、明日に人を連れて取りに来るよ。今回みたいな事がいつ起きるかわからんしな……まあそういうのが起きないのが一番いいんだが」

 何だかんだ言いつつも、こいつ等が使われない方が平和って事になるか。
 ……処分されなかったけど、使われもしないかもしれない。
 うーん、実に複雑な気分だ。

「そうだな……わかった、請求書は明日取りに来た時に渡すよ」

「おう。また明日な」

「…………うーむ、今作っている奴は明日には間に合わないし……しょうがない省くか」

 店主が作業場に戻って来た。
 そして俺の方をじっと見て来る。

「となると、修理依頼のこいつをやっちまうかな」

 店主はそう言いながら俺を手に持ち、作業台に座りこんだ。
 やった、この時間からでも俺の修理に取り掛かってくれるのか。

 ―カーン、カーン

 俺の頭の中で金属を打つ音が鳴り響く。
 凹みを外側に叩き出す作業をしているみたいだが……感触はないものの、自分の頭の中を叩かれるっていい気分じゃない。
 早く終わってくれ。

「うーん……」

 店主が俺の頭を持ち上げ、あらゆる角度から見て来る。
 やっぱり、ジロジロ見られるのは恥ずかしい。

「ある程度凹みを戻したが、やっぱ凹んだ跡が残っちまうな」

 ええ、完全には無理なんですか。

「見た目もよくねぇし、溶かして再利用した方が……」

 はっ!?
 ちょっと、それだけはやめて下さい!!

「修理依頼の物だからそれは出来ねぇか。まっ時間はあるから、手は尽くして見るか」

 はあー……良かった。
 溶かされるなんて想像しただけでおっかないよ。


 
 ◇◆アース歴9年 6月14日◇◆

 早朝、店主は俺の頭を持って宿屋に来ていた。
 町長が来るとそっちの対応に追われるから、朝のうちに渡してしまおうという考えらしい。

「わざわざ届けて頂き、ありがとうございまス」

 ラティアが俺の頭を受け取り店長に頭を下げる。

「いや、こちらこそ朝からすまんな。色々と事情が変わっちまって……それに完全に修復できなかった」

 店主のプライドなのか、何だかんだ言いつつほぼ徹夜で俺の頭を直そうとしてくれた。
 でも、やはり限界がありどうしても凹みの跡を直しきれなかったらしい。
 一体どう残っているのか俺には見る手段が無いから何とも言えないが、頑張ってくれている姿を見ているので文句はない、むしろ感謝しているくらいだ。

「とんでもないです、綺麗になりましたヨ。あっ修理費はおいくらですカ?」

「そうだな、結局完全じゃねぇし……300ゴールドでどうだ?」

 おお、結構まけてくれた。
 大体500ゴールド位するのに。

「わかりましタ……はい、300ゴールドでス」

 ラティアは財布をとりだし、300ゴールドを店主に渡した。

「まいど。じゃあまたな」

「はい、ありがとうございましタ!」

 店主が宿屋から出て行った。
 それを見届けたラティアは、すぐさま2階にあがり自分が泊まっている部屋に入った。
 そして、俺の頭をベッドの上に置いた。
 いや、椅子に座らせてある俺の体……鎧の方に乗せてほしかったんだが、まぁいいか。

「アース様! かっこよくなりましたネ!」

『あ、ああ、ありがとう……』

 凹みを直しただけだから、かっこよくなったっておかしくないか?
 まぁそう言われて嫌な気分じゃないけども。

「かっこよく? 凹みは直ったけど他は同じぢゃんか」

 エイラの声がするが姿が見えない。
 宿屋の中でも姿を消しているのか。

「凹みが直ったからかっこいいんだヨ!」

 エイラの顔が見えないが、たぶんラティアは何を言っているんだろうと不思議そうな顔をしているだろう。
 俺も表情が変えられるのなら同じような顔になったと思う。
 おっと、今はそんな事よりも話事があったんだった。

『ラティア、盗賊の事なんだが……』

「あ、捕まったそうですネ。昨日はその話で持ち切りでしたヨ」

 あーそれはそうか。
 アルガムに直接関わっている事だからすぐ話が広まるわな。

「アカニ村に行く馬車もすぐ再開するそうですヨ」

 おお、馬車も再開するのか。

『それは良かった。いやはや、旅の剣士達には感謝しないといけないな』

「そうですネ~」

 一体どんな人なんだろう。
 名前からすると男女のようだけど……あ、男女と言えば。

『ラティア、レインに会ったか?』

「レイン様ですカ? いえ、会っていませんガ……えっ! もしかして、この町におられたんですカ!?」

 レインと会っていなかったか。
 良かった。

『ああ、昨日鍛冶屋に来たんだよ。でも、協会から緊急招集の連絡が来たから戻るって言っていたんだ』

「そうだったんですカ。オーウェン様の呼び出しでしたら戻らないとですものネ」

 ……ん? オーウェンからの呼び出し?

『えと……ラティア、それはどういう事だ? 協会とは一体……』

「あっそうか、アース様は知らないですよネ。えと、オーウェン様は帝国の手が届かない村や街がモンスターや物資不足で苦しんでいるのを見逃せなかったんでス。それで、帝国とは違う組織を立ち上げましてレイン様とジョシュア様はそこに所属しているんでス」

『あのオーウェンが組織を立ち上げただって!?』

 嘘だろ……あいつが組織を……? まるで想像がつかない。
 オーウェンがそこ所属しているの間違いじゃないのだろうか……いや、流石にそんな間違いはしないよな。
 復活してから俺の中で一番ショッキングな話だわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...