【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
22 / 75
4章 二人の修理と盗賊

レインの書~盗賊・5~

しおりを挟む
 黒くて長い髪のモンスター、そして凹んだプレートアーマーを着た奴。
 宿屋で聞いた話と何一つ間違ってはいない……うん、間違ってはいない。
 ちゃんと詳しく聞かなかったアタシが悪い。
 はぁ~まったく紛らわしい奴らね。

「あいつがレ……ソフィーナが言っていたデュラハンか」

 ジョシュアが弓を手に取って戦闘態勢に入っている。
 デュラハンを直接見ていないから、こいつだと思っちゃうのも仕方がないよね。

「……そんなに警戒しなくてもいいわよ」

「え?」

「あれはデュラハンじゃない。あんなボロボロの奴じゃないから」

 よく見ると凹みの他に錆びている部分もある。
 かなり使い古したプレートアーマーのようね。

《あん? おい、今俺様の鎧がボロボロって言ったか?》

「そう言ったけど?」

《フン、わかってねぇな。これはな、歴戦の傷跡なんだよ! 言わば勲章だ、勲章!》

 そんなに胸を張られてもな。
 錆が見えている時点でそんな威厳なんて無いようなものじゃない。

「ねぇ本当にデュラハンじゃないの?」

 ええ……ジョシュアったら、この状況でもまだ疑うの?
 いくらデュラハンを見ていないからってあれは無いでしょう。

「アタシの言う事を信じないわけ?」

「だって、アイリスさんの件があるし」

「……」

 それを言われると何も言い返せない自分が悲しい。
 でも、こいつはデュラハンなんかじゃないのは間違いないもん!

《おい! こら! 俺様を無視してぺちゃくちゃとしゃべっているんじゃねぇ! 俺様を舐めているのか!? ――おめぇ等もてめぇ等だ! 何ぼさっとしていやがる! さっさとこいつ等の身ぐるみを剥ぎやがれ!!》

 こいつには記憶能力が無いのかな。
 待てって、あんたが止めたんでしょうが。

「え? でも、お頭がさっき……」

《早くしねぇか!》

 これは自分の気分次第でコロコロ意見が変わるタイプね。
 いるのよね~こういうめんどくさいタイプって……。

「へ、へい! なんだよ、まったく」
「お頭にも困ったもんだ」
「本当だよ」

 子分達が不満そうな顔をしつつ戦闘態勢に入った。
 こんなのでよくこいつに従っているわね。
 やっぱりあいつはデュラハンで子分達を洗脳している……?
 どうしよう、そう考えるとあいつがデュラハンじゃないって自信が無くなって来た。

「ソフィーナ! 来るよ!」

「っ!」

 今は他の事を考えている場合じゃない。
 あいつがどうであれ、今は戦闘に入っているのだから目の前の事を集中しないと。

「ジョン、6人の相手は出来る?」

「剣が2、短剣が3、斧が1。うん、ボク1人で十分だよ」

「了解。じゃあアタシは頭の方を叩く……わ!」

 背後をジョシュアに任せてアタシはボロアーマーに向かって走り出した。
 その行動が予想外だったのか、ボロアーマーは一瞬怯んだように見えたがすぐに毛玉モンスターの背後にまわった。

《っ黒毛! 火の魔法だ!》

「ギッ!」

 ボロアーマーの声に毛玉モンスターが両手を出し構えた。
 黒毛って、もう少しまともな名前を付けてあげなさいよ。
 ん~毛玉はモンスターだから本当は仕留めておきたい……でもそうしちゃうと、アルガムに対して帝国があれこれと言ってくる可能性がある。
 ただでさえアタシ達が勝手にやっている事だし、これ以上アルガムに迷惑をかけられない。

「仕方ない、かっ!」

 アタシは飛んで来た火の玉を避け、地面を思いっきり蹴って毛玉モンスターに向かって跳躍した。

「グギャ!!」

 そして、毛玉の横顔に蹴りを食らわせ――。

《っな!?》

 その勢いのまま、ボロアーマーの頭にメイスを叩きこんだ。

《――ブベラッ!!》

 変な断末魔をあげてボロアーマーが倒れ込む。
 手足がピクピクと動いていたが、やがて止まり動かなくなってしまった。
 気絶をしたふりをしているかもしれないから警戒しつつ、毛玉の方を確認。

「ウギギ?」

「っ!」

 毛玉はアタシに蹴られた左を擦りながら起き上がった。
 あの蹴りを食らっているのに平然と起き上がって来るとは相当強いモンスターのようね。
 なるほど、帝国兵がやられたのも納得だわ。
 これは手加減をすればアタシがやられ……。

「ウキャア! ウキャキャ!!」

 毛玉が急に踊り出した。
 一体何をしようとしているのかしら。

「キャハー!」

「えっ」

 毛玉が一声奇声をあげて、何処か走って行った。

「……逃げ……た?」

 なんで? どうして?
 本当に訳がわからない。

「えと……とりあえず、こいつの確認をしてみるか」

 アタシはボロアーマーに近づき、殴って大きな凹みが付いたアーメットを外した。
 中からは無精ひげを生やした中年の親父が鼻血を出し、白目を向いて気絶をしている。
 予想通りデュラハンじゃなかったわ。

「頭があるって事はデュラハンじゃなかったみたいだね」

 背後からジョシュアが近づいて来た。
 その後ろには、矢が刺さった盗賊6人が倒れている。
 ジョシュア特性麻痺矢を使ったとはいえ、ボロアーマーを含め実にあっけなさすぎる。
 こんな奴らに帝国兵が負けたって言うの? そこまで帝国兵のレベルが落ちたのかしら……。



 気絶したお頭、麻痺で動けない盗賊達をロープで木に結び付ける作業終了っと。
 後は周辺を捜索しに行ったジョシュアが戻ってくるのを待つだけね。

「戻ったよ」

 お、噂をすればなんとやら。
 ジョシュアが戻って来たわ。

「おかえり、どうだった?」

「近くに野営があってそこに盗った金品があったよ。で、周辺に仲間はなし。これで全員か、いても逃げていった感じかな」

 逃げた奴がいる可能性もあるか。
 まぁでも頭を潰したから大丈夫かな。

「わかったわ。こっちも、どうしてあいつ等がボロアーマーに従っていたのわかったわよ」

 アタシは手のひらサイズで文字が彫られた丸い水晶と、刻印が書かれている髪を取り出した。
 水晶はボロアーマーの体を調べたら出て来た物で、紙は毛玉のモンスターが逃げた方向に落ちていた。

「……ん? それって使役の刻印だよね」

「そう。ボロアーマーは術者で強い毛玉のモンスターを使役していた。それで手下は言う事を聞いていたわけ」

 昔はこの方法を使って、モンスターの軍を作ろうとした国もあったらしい。
 しかし、この使役の魔法には色々欠点があったせいで実現しなかった。
 使役できるのは1人につき1体が限界だから単純に人手不足。
 ボロアーマーの様に術者の意識が途切れると術が解けてしまう。
 だから、自分が寝る前には必ずモンスターも寝かせないといけない……などなど。

「なるほど、だからあの毛玉のモンスターは術が解けたから逃げて行ったわけだ。逆上して襲ってこなくてよかったね」

 まぁそうなったらそうなったで返り討ちにしてあげたけどね。

「さて、それじゃあ後の事はジムさんに任せてアカニ村へと向かうわよ」

 やっとこれで先に進めるわ。

「え? 歩くの!? アルガムに戻って馬車に乗ろうよ!」

「何言っているのよ。今アルガムに戻ったら意味ないでしょう」

「いやでもさ、馬車を使ってもあと1日はかかるよ!?」

「えっ」

 嘘、そんなに?
 馬車でも1日って……それじゃあ歩くとなると……やっぱり戻って馬車に……。

「……いやっ駄目よ、アタシ! ほらジョン行くよ!」

「えええ!! そんなー」

 アタシだって、そんなに歩きたくないわよ。
 でもこればかりはどうしようもない。
 はぁ~途中で馬車が通って、それに乗せてくれることを祈るしかないわね……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...