【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

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6章 二人の戦闘と取逃

レインの書~取逃・6~

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 とはいえ、これで帝国の裏の一部を握れるのは大きい。
 ここは証拠になる書類関係をジョシュアに集めて貰って、アタシは上にあがって逃げ道を確認してこよう。
 この枚数だとアタシの場合、数枚は証拠品見逃してしまう可能性があるしね。
 その点は細かいところまで見れるジョシュアがするのが一番。

「ジョシュア、帝国の幹部とのつながりがある書類を集めておいて。それまでアタシは出口の安全確保をしてくるわ」

「いいけど、その体で大丈夫?」

「戦闘さえしなければ大丈夫よ」

 けど、もしデュラハンが居たら……。

「……デュラハンが居ても突撃しないでね……」

「うぐっ!」

 心を読まれてしまった。

「はあー……今は痛み止めが効いているだけで、怪我自体は治っていないんだからね。お願いだから無茶な事はしないでよ」

 笑顔だけどジョシュアの目が笑っていない。
 温厚な人ほど、こういう目をするのが一番怖いのよね。

「……はい。じゃあ行ってきます……」

 アタシはジョシュアの目線を外しそそくさと部屋の外に出た。
 いや~久々に見たわね、ジョシュアのあの目。



 辺りを警戒しつつ通路を少し進むと階段を発見。
 アタシはゆっくりとその階段を上り、上の階へと進んだ。

「……静かね」

 何も物音がしない。
 この階には誰もいないような感じがする。
 いや、油断をしては駄目だ。
 アタシはジョシュアみたいに索敵能力がいいわけでもないもの。
 ここの通路も慎重に進んで……。

「?」

 通路の先が明るいわね。
 出口が近いのかしら? ……いや、それはおかしい。
 アタシが落ちたのは施設の奥の方、少し歩いた程度で出口があるわけがない。
 となると、考えられるのは一つ。

「やっぱり、部屋から光が漏れ出てる……」

 それもアタシが扉をぶっ壊した部屋だわ。
 となると、部屋の中にはデュラハンがいる可能性がある。
 ジョシュアに釘を刺されたけど、覗く位はいいわよ……ね?
 戦う訳じゃないし……うん、今は気持ちも落ち付いているから大丈夫大丈夫。
 そう自分に言い聞かせて、部屋の中を覗き込んでみた。

「…………いないか」

 部屋の中にはデュラハン、使い魔、ラティアちゃん、そしてサソリ型モンスターの姿もなかった。
 さっきと違うのは、壁に大きな穴が空いていてそこから外が見えている。
 あの穴を開けたはデュラハンかしら?
 出口に行くのは面倒くさい的な感じで……だとすれば、すごい横着な奴ね。

「ん? 何か落ちてる」

 ふと、こぶし大のほどある紫色の石が床に落ちているのが目に入った。
 アタシは床が崩れない様に注意しつつ部屋の中に入り、その石を手に取った。

「……これって魔石だわ」

 こんな物、アタシが穴に落ちる前には無かったと思うけど……壁に空いた穴……床に落ちている魔石……あ、もしかしたらあのサソリ型モンスターに埋め込まれていた奴かも。
 どういう意図があったのかわからないけど、デュラハンが日の光でサソリ型モンスターを倒したと考えられるわね。
 なら証拠になるかわからないけど、一応これも回収してっと……ついでに、この部屋も書類があるから何枚か拾っていきましょ。
 もしかしたら、物的証拠になるものがあるかもしれないしね。
 アタシは散らばっていた紙を数枚適当に拾い上げ、床が抜けるかもしれない部屋から抜け出し通路に出た。

「……う~ん、拾ったのを見てもやっぱり何を書いてあるのかよくわから……ベリオーブ・セイジの人工妖精論?」

 名前だけならアタシでも知っている。
 錬金術師ベリオーブの事よね。
 ここは魔晶石や魔石の研究をしていたのだから、それらに関わっているベリオーブの資料があっても不思議じゃない。
 けど、なんだろう……何かが引っかかる。
 そんな奇妙な思いを持ちつつ、ベリオーブの資料を流し読みをしているとある町の名前が書いてあった。
 山の町【ヴァルガ】、鉱石の加工技術の職人たちが住んでいる町。
 地下にあった魔晶石や魔石をヴァルガの職人に頼んで加工をしてもらっていたっぽい。
 その職人たちが実験の内容まで知っていたかどうかはわからないけど、これも持ってひとまずジョシュアの元へ戻ろう。
 出口はここに出来ていた事だしね。



「どう?」

 魔樹の部屋に戻ると、ジョシュアは何枚もの紙を道具袋に詰め込んでいるところだった。
 ええ……そんなにあったの? 思ったより闇が深そうね、これ。

「あ、おかえり。こっちはばっちりだよ、そっちは?」

「デュラハン達の姿は無し。サソリ型モンスターもデュラハンにやられたみたい。で、恐らくこの魔石がサソリ型モンスターに組み込まれていたんだと思う。後、こんな物も見つけたわ」

 手にしていた魔石とベリオーブの資料をジョシュアに渡した。
 ジョシュアは興味深そうに魔石を見た後、資料に目を通し始めた。

「……ベリオーブの人工妖精論か。サソリ型モンスターの実験にはこれを元にして行われていたみたいだね」

「……そこにヴァルガの名前があるでしょ? そこに行ってみようと思うの」

「え? 別にいいけど……デュラハンを追わなくていいの?」

 アタシの言葉が意外だったのか、ジョシュアが不思議そうな顔をしている。
 何でそんな不思議そうな顔をしているのよ。

「その町にデュラハンが向かったと思うのよ」

「どうして?」

「なんとなく」

「なんとなくって!」

 そう、これは完全にアタシの勘。
 資料に書かれていただけだから、デュラハンが向かったのかどうかなんてわからない。
 でも、何故かそこへ向かったという自信があった。

「アタシでもよくわからない。ただデュラハンはヴァルガに向かったって確信だけはあるの」

「…………信じてもいいの、それ?」

「アタシの勘を信じ……」

 言い切る前に、アタシは口を塞いだ。
 《勘違いに注意》という言葉が頭を過ぎったからだ。
 もしかしたら、通路の事じゃなくてヴァルガへ向かう事が勘違いだとすれば?

「…………よし、マレスに戻りましょう」

 あの占い師に、もう一度ちゃんと占ってもらった方がいい!
 アタシ達は急いでマレスへ戻り、ジョシュアと一緒に占い師を探した。
 しかし、占い師を見つけることは出来なかった。
 あの占い師は一体何者だったのだろうと思いつつ、デュラハンの事を聞いておくべきだったと後悔しまくるアタシであった。
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