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7章 二人の炭鉱探索

レインの書~炭鉱探索・5~

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「せいっ!」

「ピギャッ!」

 これでもう何匹目のロックワームを倒したのかしら。
 20? 30? いや、もっとかもしれない。
 なんにせよ、ここまでロックワームを相手にしたのは初めてだわ

「…………」

 これ以上、ここで襲って来る気配はないわね。
 なら、ちょっと休憩しよう。
 この先もまだロックワームが出てくる可能性は十分に考えられるしね。
 休めるうちに休んでおく方が得策だわ。
 アタシは手に持っていたランプを床に置き座り込んだ。

「ふぅ~……」

 占い師に言われた6番の炭鉱内は、予想以上にロックワームの数が多い。
 たいして強くはないとはいえ、大量に相手にするのは骨が折れる。
 それにしても、これはどういう事なのだろう。
 ロックワーム自体は群れで行動するモンスターだけど、明らかに異常な数だわ。
 それにアタシに対して襲いかかって来ているというより、怯えて狂暴化しているって感じ。
 この炭鉱内にロックワーム達が怯えるほどの何かがいるのかしら。
 例えば凶悪なモンスターとか……まさか、デュラハン?

「……仮にそうだとしても、こんな入り組んだ炭鉱で見つけるのは無理ね」

 デュラハンもこの水晶の破片みたいに近くに居たら光る、とかならまだ見つけられるんだけどね。
 まぁこれが光る所は未だに無いんだけどね……もっと奥に行かないと駄目っぽいな。

「……行きますか」

 アタシは立ち上がり、当てもなく炭鉱の奥へと向かって行った。



 炭鉱に入ってから結構な時間が経った。
 もしかしたら、外はもう日が落ちてしまったかもしれない。
 今日はここまでにして町に戻った方がいいかな。
 疲労もたまって来たし、お腹もすいた。

「え~と、木枠に付けた印は…………あれ?」

 なんか水晶の破片が光っている様に見える様な……気のせいかしら。
 もしかしたら……アタシはランプの灯を弱め、片手を破片に覆った。
 すると破片はうっすらとだが間違いなく白く光っていた。
 という事はこの近くにあるんだわ。

「一体何処に……ん?」

 少し先に横穴があるわね。
 立っては無理だけど四つ這いで進めるくらいの大きさの穴。
 もしかしてと思い、アタシは横穴の方へと行き、水晶の破片をかざしてみた。
 予想通り破片の光はより強くなった。
 という事は、この穴の奥に目的の結晶があるんだわ!

「やった! 見つけた! ――よいしょっと」

 アタシはその横穴の中へと入って行った。
 ……が、すぐ穴の異変に気付いた。
 ジメジメするし妙に生暖かい、おまけに地面も異様に柔らかい。
 まるで生き物の体内みたいに脈を打っている様な……。

「…………まさか!?」

 ――バクン!

 嫌な予感を感じた瞬間、入り口が閉まってしまった。

「げっ!! やっぱり!!」

 ここは普通の穴じゃない、モンスターの体内だったんだ!
 冗談じゃない! 早くこんな所からでないと!

「この! この!」

 モンスターの口らしき所に蹴りを入れてみるがびくともしない。
 それならと今度は右手であちらこちらを殴ってみる。
 しかし、打撃の威力は柔らかい肉に吸収されるのかモンスターが苦しんでいる様子もない。
 メイスで殴ろうにもこの四つん這いの体勢ではメイスを振ることは出来ない。
 つまり、こいつとアタシは相性最悪だ。
 どうしよう……このままだと溶かされてこいつの栄養にされちゃう。
 こんな終わり方は嫌だ! どうにかして出てないと!

「え~と……え~と……そうだ! モンスターも動物、入り口があるんだから当然出口もある。このまま奥に進んで行けば……って、それは嫌だああああああああああああああああ!」

 仮にそれで外に出られたとしても、そんな出口から絶対に出たくない!
 もっといい脱出方法を考えないといけない。
 今手に持っているのは水晶の破片にランプか……そうだ、これを使えば出られるかもしれないわ。
 アタシはランプを床? に置き、右手に叩き潰した。
 壊れたランプから油と火の粉が飛び散りモンスターの体内を焼き始めた。
 これなら打撃に強くてもダメージが……おっ苦しがっているのか、モンスターの体内がうねうねと動き出した。
 さあ、そのまま口を開けなさい、開けた瞬間に飛び出してやる。
 そう思って構えた瞬間、モンスターの体内の奥から勢いよく何かが迫って来て、アタシはそれに飲み込まれてしまった。
 そして、堅い何かに叩きつけられてしまった。

「……うう……いたたた……一体……なにが……」

 正面を見ると大きいワーム型のモンスターがもがき、大小の石が混じった体液を口から吐き出していた。
 そして穴の奥へと引っ込んでいった。

 なるほど……アタシは勢いよく外に吐き出されたんだね。
 その証拠にアタシの体はベトベトの液体まみれだし、大小の石がアタシの体に付いていたり周辺に散らばっている。
 うん……出られたのは良かったんだけど……こういう形で出るというのも精神的にきつい。

「……まぁ助かったから良しと……あれ?」

 ランプが無いのに妙に周りが明るい。
 何でだろう、ここは日の光が入ってこないのに。
 辺りを見わたすと、体液にまみた大き目の結晶が白く光っていた。
 もしやと思い割れた水晶の欠片を取り出してみると、その欠片も白く光っている。
 という事は……これが目的の結晶! そうか、あのモンスターが偶然にも飲み込んでいたんだ!

「やった! やったわ!」

 アタシは結晶を拾い上げ、スキップしながら町へと戻った。



 炭鉱から出ると予想通り辺りは真っ暗だった。
 光る結晶のおかげで夜道は歩ける状態だけど、そこである2つの失敗をしていた事に気が付いた。
 1つ目は占い師の家の場所を聞いていない事。
 だから、結晶をどこに届ければいいのかわからない……。
 2つ目は宿屋の場所を聞いていない事。
 待機をする場所がない、何よりもこのベトベトになってしまったこの体を綺麗にすることが出来ない。

「……終わった……」

 何をしているのよアタシ……。

「ありゃ。やっぱりお嬢さんじゃないか」

 この声は占い師だ。
 声のした方向を見るとランプを片手に持った占い師が立っていた。

「わたしの家がこの近くでな。窓から白く光っているのが見えて、もしやと思って来てみたんじゃよ」

「そうだったんですか……あの、これ! これであっていますよね!?」

 アタシは占い師に近づき光る結晶を目の前に出した。

「あ……ああ、これに間違いない……」

 良かった。
 これで違っていたら倒れていたかもしれない。

「……ところで、その格好はどうしたのじゃ?」

「…………色々とありまして……」

 その言葉を聞いた占い師は悟ってくれたのか、それ以上何も聞かず自分の家へと招いてくれた。
 お風呂を貸してもらい、温かい食事を頂き、寝床まで用意してくれた。
 その優しさに涙がこぼれそうになったけど、水晶に加工するまで約1週間はかかると言われ涙が一瞬で枯れてしまった。
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