【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

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8章 二人の病気と看病

レインの書~看病・1~

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 さてと、アイリスさんに頼まれたアーメットの修理は鍛冶屋に依頼したから、これで良し。
 修理に5日もかかるって言われたけど、アイリスさんの入院期間もそれくらいだし問題は無いでしょ。
 後は果物でも買って病院に戻ろうかな。
 それにしても占い師の付き添いで加工屋に行っただけなのに、こんな事になるとは思いもしなかったな~。



 ◇◆アース歴9年 7月8日◇◆

 朝日の光が顔に当たり、アタシは目を覚ました。

「ふあ~……んん~……」

 アタシは占い師の好意で1晩家に泊めてもらった。
 炭鉱での疲れもあったのかぐすっりと眠れた……眠れたけど……。

「……はあ~……気持ちの方は、まだ沈んだ感じ……寝たら立ち直れると思ったんだけどな……」

 昨晩の占い師が言った一言が、予想以上に心のダメージになってしまっているようね。
 水晶の完成に約1週間はかかる……その言葉を聞いたアタシはよほどショックな顔をしていたのか、占い師に「わたしは一人暮らしだから、水晶が完成するまで居て良いぞ」と言ってくれた。
 それについては宿屋代も浮いて非常にありがたいけど、流石に約1週間もここで泊めてもらう訳にもいかない。
 それに今後ジョシュアとの合流の事も考えると宿屋に泊まった方が良いしね。

「……ん? ……いい匂いがしてきたわ」

 どうやら占い師が朝ごはんを作ってくれているっぽい。
 だとすると呑気に寝ている場合じゃない、早く支度をして手伝わなくちゃ。
 色々と世話になっているからそれくらいはしないと罰が当たるわ。
 アタシはベッドから飛び降り、急いで着替えて部屋から出た。

「おはようございます!」

「ああ、おはよう。もうじき出来るからそこに座って待っていなさい」

 遅かったか。
 テーブルの上には焼いたパン、そして台所には目玉焼きを作っている占い師の姿。
 これはもうアタシのやる事は無いわね。

「……はい」

 言われた通り、ここは大人しく椅子に座っておこう。
 もう少し早く起きれていれば……。

「ほれ、出来たぞ」

 目の前に半熟の目玉焼きが置かれた。
 アタシは固焼き派なんだけど……でも、そんな我儘を言っちゃ駄目だ。
 おいしくいただかなくちゃね。

「ありがとうございます」

 アタシは占い師が食べ始めるのを待った。
 礼儀としてこういうのは大事だしね。
 まぁ相手がジョシュアだったら気にせず先に食べ始めちゃうけど……。
 占い師が自分の分の目玉焼きをテーブルに置きつつ椅子に座り、口を付け始めた。

「いただきます」

 それを見てから、アタシも目玉焼きを口に入れた。
 ……おっこの玉子、味が濃厚で美味しいわね。
 初めて食べたけど一体何の卵かしら? そう思いつつ、ふと台所へ目を向けた。
 そこには全体が真っ青で、白の縦縞が入っている割れた卵の殻が置いてある。
 ……うん……何の卵か聞くのは止めよう……聞いたらこれ以上食べれない気がするし、何より後悔しそうだわ。

「あの……今日から宿屋に泊まろうと思うので、ある場所を教えてもらえませんか?」

 アタシは殻を見なかった事にして、これからの事を話す事にした。

「モグモグ……ん? そんな事せずとも、ここに泊まればいいじゃろ?」

「いえ、やっぱりそこまで甘えるわけには……それに連れももうすぐこの町に着くと思いますし」

 ちゃんと伝言が伝わっていればだけど。

「そうか、お嬢ちゃんがそう言うのなら……で、宿屋の場所じゃったな」

「はい。あと、できれば安いところがありがたいです」

 ジョシュアから渡されたお金はまだあるけど、何があるかわからないしね。
 節約していくにこしたことはないわ

「安いところか……そうなると、ボロボロとサッギになるが……長期だと後者のほうがいいかの」

「サッギの方ですか?」

「そうじゃ。ボロボロは部屋が狭くてな、1人用のベッド1台で部屋が埋まるほどでな。じゃから、ドアを開けると即ベッドがある状態なんじゃ」

 それはいくら何でも狭すぎでしょ!
 確かに1晩ならともかく長期は無理だわ。

「サッギも多少狭いが標準的じゃな。建物がものすごく古くてあちらこちら痛んでいる状態じゃが……」

 安いのには理由があるもの。
 古いくらい問題は無いわ……ただ、聞いている限り雨漏りの覚悟はした方が良さそうではあるけど。
 
「わかりました。なら、サッギに泊まる事にします」

「うむ……あっそうじゃった! すまんが宿屋に行く前に、少し手伝ってほしい事があるんじゃが良いかの?」

 手伝ってほしい事? 一体なんだろう。

「はい、勿論です」

 少しでも恩を返したいし、何でも言ってくださいな。

「それは助かるわい。隣にある物置の中から出したい物があるんじゃが、それを1人で出すのが大変だったんじゃよ」

「なるほど」

 占い師はお婆さんだし、重い物を出すのは辛いわよね。
 それはアタシの出番だわ。

「わかりました、アタシに任せて下さい!」

 アタシは意気揚々と両手で力こぶを作るポーズを取った。
 しかし、このポーズをとるのは無意味だったと物置に行って知るのだった。

 占い師は中から出す物が重いなんて一言も言っていない。
 1人で出すのが大変と言っていただけだ。
 そう……物置の中はあらゆる物が散乱としていて足の踏み場もない。
 小物すら出すのに苦労しそうなくらいだ。
 結局、占い師の目当ての物が出てくるまで夕方までかかってしまい、もう1晩占い師の家に泊まる事になってしまった……。



「ここがわたしが通っている加工屋じゃ」

 物置の片づけ後、アタシは占い師と一緒に結晶を加工するお店まで行った。
 特殊な結晶を加工できるお店がどんな感じなのか気になったからだ。

「お邪魔するよ。坊主はおるかい?」

 占い師が店の中に入っていったので、アタシも後に続いて店へ入った。

「へぇ~ここでその結晶を加工出来るんだ」

 ……店の中はいたって普通の加工屋ね。
 なんか期待していたのと違うわ。
 こう~結晶を削る特殊な道具が在ると思っていたんだけどな。

「……ん?」

 カウンターの前にプレートアーマーを着た人が立っているわ。
 でもってアーメットには大きな凹み……流石にもう間違わないわよ。

「あれ、アイリスさんじゃないですか。こんな所で会うなんて奇遇……」

 と、声を掛けた瞬間。

「――っ! ハイ! ソウデ~ス! 私ハアイリスデ~ス!」

「ちょっ!」

 アイリスさんが、いきなりアーメットを両手で持ち上げた。
 もはや条件反射みたいになってしまっているみたいだわ。

「わかってますから急にそんな……って、どうしたんですか!? 顔が真っ赤じゃないですか!」

 いつもの様にあったアイリスさんの顔が、びっくりするほど真っ赤に染まっていた。
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