【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
57 / 75
8章 二人の病気と看病

レインの書~看病・2~

しおりを挟む
 アイリスさん、どう見ても熱があるわよね。
 目も虚ろだし。
 とはいえ、ちゃんと触って確認した方が良いか。

「――っちょっと失礼しますね!」

「ふエ……?」

 アタシはアイリスさんの傍に駆け寄り、手をおでこに当ててみた。
 うん……思った通りだ。

「かなり熱い。高熱がありますね」

 恐らく38……もしかしたら40度はあるかもしれない。

「アイリスさん、よくそんな状態で普通に立っていられますね……」

 こんな高熱を出していたら、立っていられるわけがない。
 熱に強いタイプなのかな。
 いや、それにしてもふらつく位はしそうで――。

「……へッ? それはどう――あふッ!!」

「アイリスさん!?」

 って、言った傍からアイリスさんが倒れちゃったよ!
 アタシが余計な事を言っちゃったせい!?

「お嬢さん! 大丈夫かい?」

「お客さん!」

 占い師と店員さんがアイリスさんの傍に駆け寄ってきた。
 なんかごめんなさい! この状況を作ったのはアタシのせいかもしれません!

「お客さん! しっかりしてください!」

「お嬢さんや!」

 2人がアイリスさんに呼び掛けている。
 そうだ、反省するのは後。
 今はアイリスさんが最優先だ。

「アイリスさん! アイリスさん!」

 アタシはアイリスさんの体を揺らしながら必死に呼びかけた。

「……だっ大丈夫……でス……」

 いや、誰がどう見ても大丈夫じゃないよ。
 意識が朦朧として来ているのか、アタシと目線が合わない。
 これは駄目だ、病院に連れて行かないと。

「全然大丈夫じゃないですよ……これは危険だわ。あの、病院の場所を教えてください! アタシが病院まで運びます!」

 アタシは急いでソフィーナさんを背負った。
 ……うっプレートアーマーを着ているとさすがに重いわね。
 けど、そんな弱音は吐いちゃ駄目だ。
 頑張って走って行かないと!

「ああ、病院ならこの店を出て……」

 占い師が病院の場所を説明してくれようとしている。
 大丈夫かな……初めて来た町だから、わかりやす場所にあればいいんだけど。

「ちょっと待った。この辺りはややこしいから俺が道案内をするよ」

 おおっ! それは非常に助かる。
 優しい人で良かった。

「ありがとうございます! アイリスさん、もう少しの辛抱ですからね!」

「こっちです!」

 アタシと店員さんは店の外へと飛び出した。

「じゃあ俺について来て下さいね」

「はい!」

 店員さんが走り出し、アタシはその後を追いかけた。
 ややこしいって言っていたから見失わない様に気を付けないと。
 路地を右に曲がり左に曲がり、穴の開いた壁を通り抜け……。

「……って! ここって人様の庭じゃないんですか!?」

 穴を出た場所は手入がされた芝が広がっていた。
 炭鉱の町にもこんな立派な庭に大きなお家があるんだ。
 ……これ、不法侵入になるんじゃ……?

「大丈夫です!」

 大丈夫って……店員さんの知り合いの家なのかしら?
 ハッ! まさか、店員さんのお家――。

「見つからなければ、何も問題はありませんから!」

「はい!?」

 完全に赤の他人の家だった!
 というか、見つからなければって見つかったらやばいって事!?
 そんな所をを通らないでよ! こっちは病人を背負っているのよ!

「……ん? おい! そこのお前たち何をしている!!」

 やばっ私兵らしき兵士に見つかっちゃった。

「チッ! ここを突っ切れば目の前が病院だっていうのに……よし、俺はあいつを引き付けますので、お客さんはその間に塀を超えて病院へ向かってください!」

 塀を超えてって、ちょっと待って。
 高さがアタシの身長の2倍くらいあるんですけど!
 アタシ1人ならともかく、アイリスさんを背負っている状態であれを超えるのは無理があるわよ!

「……生きてまた会いましょう、ご武運を! おら、ノロマ! こっちだよ!」

「なっ! 馬鹿にしやがって!」

 店員さんが兵士に挑発をして反対側へと走って行った。
 生きて会いましょうって、一体何処の敷地に入り込んだ訳?
 というか、この塀をどうやって登れば?

「…………いや、もうあれこれ考えても仕方ない。今はアイリスさんだ!」

 流石に塀に穴を開けるわけにもいかない。
 となれば、ジャンプで飛び越えるしかないわね。
 着ている服の一部を破り、アイリスさんを落とさない様にアタシの体に結び固定をした。
 そして塀に向かって勢いよく走り、手前で思いっ切りジャンプをした。

「――くっ!」

 が、やはり人を背負っている状態だと塀の上までは届かない。
 駄目だと思った瞬間、突風が吹きアタシの体が押し上げられた。
 そのおかげで塀の上に手が届き、よじ登ることが出来た。

「よいしょっ! ……はあ~はあ~……助かった」

 あのタイミングで突風が吹くなんて運が良いわね。
 ……あ、病院らしき建物が見える。
 本当に目の前にあったのね。
 アタシは塀から飛び降り、病院へと駆け込んだ。

(ふぅ~……まったく危ないな~。ラティを背負っているんだから気を付けてよね)



「ふむ……」

 お医者さんがアイリスさんの体に聴診器をあて診察をしている。
 幸いにも今日は他に患者はいなくて、すぐにアイリスさんを診てくれる事になった。

「……ん? ……これは……」

 お医者さんが何かに気付き、アイリスさんの左腕を凝視し始めた。
 そこには小さい赤い点が1つあるわね。
 あの赤い点は一体なんだろう。

「なるほど……原因がわかりました」

「なんですか?」

「サソリノミというノミに刺されたせいです」

「サソリノミ……?」

 って何だろう。
 名前的にノミっぽいけど……ジョシュアなら知っているかしら。

「この辺りに生息している固有のノミです。毒素は弱くて刺されると痒み程度で済むのですが、体質によってはこの方の様に高熱が出てしまうんです。これなら、薬を投与すれば容体も落ち付きますよ」

 そう言ってお医者さんはアイリスさんに注射を打ってくれた。
 へぇ~そんなノミがいたのね。
 アタシも刺されるとどうなるかわからないから、気を付けないといけないわ。

「それと疲労も溜まっているのも悪化の原因でしょうね……様子見もかねて5日ほど入院となりますが、宜しいですか?」

 5日か。
 ん~アタシが勝手に決めちゃってもいいのかな。
 とはいえ、入院が必要と言われたからには仕方ないし……よし、決めた。

「わかりました。よろしくお願いします」

 アタシの独断で申し訳ないけど、アイリスさんにはちゃんと体を治してもらおう。
 で、入院中はアタシがアイリスさんの看病をしよっと。
 ジョシュアや水晶待ちで1週間はこの町から出られないし、何だかアイリスさんを放ってはおけないしね。

「――お客さんは大丈夫ですか!?」

 診察室にあの店員さんが入って来た。
 どうやら無事に逃げ切れたようね。
 丁度良かった、この人に事情を話して付き添いの事を占い師に伝えてもらおう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処理中です...