63 / 75
9章 二人の航海
アースの書~航海・4~
しおりを挟む
どうしてなんだ?
直しても直しても同じ場所が凹むのは……。
何かの呪いでもかかっているのではないだろうか。
もはやそうとしか考えられん。
「え~と……その……なんというか……」
俺が頭を気にしているのを見たソフィーナさんが言いよどんでいる。
その気持ちはわかる、俺がソフィーナさんの立場なら同じ様になるだろうな。
「……あ、あノ……ア……アース……様……」
俺の中から弱々しいラティアの声が聞こえてきた。
おっとそうだ、ソフィーナさんとの会話の為にラティアを連れて来たんだった。
頭の事で衝撃ですっかり忘れていた。
この状況をちゃんと話しておかないといけないな。
『ああ、すまん。ソフィーナさんがこの船に乗――』
「……そう……でス……」
……ん? 今なんて言ったんだろう。
ラティアの声が小さくてよく聞こえな――。
「…………うぷッ!」
っ!
何を言っていたのか、今ので全部わかった!!
『ちょっちょっと我慢してくれ!』
俺は急いで自分御頭を外し、甲板の手すりまで走った。
そして海に向かってラティアの頭を出した。
「オロロロ~」
と同時にラティアの胃の中の物が海に向かって発射された。
調子が悪いのに無理やり動かしたからこうなっちゃうのは当たり前だよな。
これはラティアには可愛そうな事をしてしまった。
そう考えると、大人しく部屋で隠れていた方が良かったかもしれん。
「あ~なるほど……ずっと無口だったのは船酔いをしていたせいだったんですね」
ソフィーナさんが俺達の傍に寄って来て背中をさすってくれた。
本当はそうじゃないけど、そういう事にしておこう。
ただ、俺の体の部分をさすっても意味がないんだけども……。
「……あウ……うッ……オロロロ~」
「それにしても、よくもまあこんな状態なのにあれだけ動けましたね……」
あの時は中身がいませんでしたから。
「今といい高熱を出した時といい……まるで鎧に意思があって、アイリスさんとは別に動いている様だわ」
うぐっ! 流石に怪しまれてしまったか。
誤魔化そうにもラティアがこの状態だし……これは困ったぞ。
「なんて、そんな馬鹿な事があるわけないか。高熱を出した時は自覚してない感じだったし、今回もクラーケンを相手にして船酔いどころじゃなかったものね」
よっ良かった。
よくわからないが自己完結してくれたようだ。
うーん、これからはもっと注意深くして行動しないといけないな。
「オロロロロ~」
というか、さっきからラティアがまずいな。
この状態だと下手に動かせないし……。
「えと……部屋に戻りますか? それともここに……」
「オロロロロ~……」
「……今は動かさない方が良さそうですね……」
の方が良さそうです。
結局ソフィーナさんはラティアが落ち着くまで傍についていてくれたのだった。
◇◆アース歴9年 7月19日◇◆
その後クラーケンが再び襲って来る事もなく、俺達は無事に北の大陸の港町ザレスへ到着した。
『ここが北の大陸か……』
この大陸のどこかにオリバーがいるのか。
俺は窓から見える景色を見つつ、爺さんに渡された石を取り出した。
改めて見てもやっぱりただの石にしか見えないな……。
あいつはこの石をどうするつもりなんだろうか。
「お待たせしました! ザレスに到着です! 下船の際、お荷物のお忘れない様にお気を付けくださいね!」
船長の声が船内に響き渡る。
俺はすぐには出ず、扉を少し開け通路の様子を見る事にした。
少し経つと、ソフィーナさんがジョンさんを背負って甲板へ向かって行った。
『……行ったみたいだな』
挨拶をしないのはどうかとは思うが……。
「……うウ……」
「……うう……」
ベッドの上で寝込んでいるこの2人。
この状態でソフィーナさんと鉢合わせすると、また面倒な事になりそうだしな。
こればかりは仕方ない。
『とはいえ、俺達も船から降りないとな』
俺はラティアを自分の中に入れ、エイラを背負って甲板へ向かった。
「乗船ありがとうございましたー! またご利用宜しくお願いしまーす!」
「お願いしまーす!」
甲板に出ると、頭に包帯を巻いた船長と副船長が笑顔で見送ってくれた。
もうこの船に乗る事は無いだろう……いや、あってたまるか。
そう固く決意し、俺は船を降りた。
『とうとう着いたな!』
北の大地に足を付けると、なんかこう新天地! って感じで気分が高まるな。
「うう……船から……降りたのに……まだ……揺れてる……感覚がするんだけど……」
「私モ……でス……」
『……』
今の2人はそれどころではないらしい。
『陸酔いって奴だな……船から降りても、しばらくは体が揺れている感覚が残るんだよ』
こればかりは自然に治るのを待つしかない。
「ええ……そんな……せっかく……船から……降りれたのに……」
エイラが半泣き状態になってしまっている。
まぁそうなるよな。
「…………」
一方ラティアは俺の中に居るから表情が見えない。
ただ、恐らくエイラみたいになっているだろう。
『……仕方ないか。少しこの辺りで休もう』
流石にこの状態でリックに向かうのは酷だよな。
結局、オリバーがいると思われるリックに着いたのは半日後になるのだった。
直しても直しても同じ場所が凹むのは……。
何かの呪いでもかかっているのではないだろうか。
もはやそうとしか考えられん。
「え~と……その……なんというか……」
俺が頭を気にしているのを見たソフィーナさんが言いよどんでいる。
その気持ちはわかる、俺がソフィーナさんの立場なら同じ様になるだろうな。
「……あ、あノ……ア……アース……様……」
俺の中から弱々しいラティアの声が聞こえてきた。
おっとそうだ、ソフィーナさんとの会話の為にラティアを連れて来たんだった。
頭の事で衝撃ですっかり忘れていた。
この状況をちゃんと話しておかないといけないな。
『ああ、すまん。ソフィーナさんがこの船に乗――』
「……そう……でス……」
……ん? 今なんて言ったんだろう。
ラティアの声が小さくてよく聞こえな――。
「…………うぷッ!」
っ!
何を言っていたのか、今ので全部わかった!!
『ちょっちょっと我慢してくれ!』
俺は急いで自分御頭を外し、甲板の手すりまで走った。
そして海に向かってラティアの頭を出した。
「オロロロ~」
と同時にラティアの胃の中の物が海に向かって発射された。
調子が悪いのに無理やり動かしたからこうなっちゃうのは当たり前だよな。
これはラティアには可愛そうな事をしてしまった。
そう考えると、大人しく部屋で隠れていた方が良かったかもしれん。
「あ~なるほど……ずっと無口だったのは船酔いをしていたせいだったんですね」
ソフィーナさんが俺達の傍に寄って来て背中をさすってくれた。
本当はそうじゃないけど、そういう事にしておこう。
ただ、俺の体の部分をさすっても意味がないんだけども……。
「……あウ……うッ……オロロロ~」
「それにしても、よくもまあこんな状態なのにあれだけ動けましたね……」
あの時は中身がいませんでしたから。
「今といい高熱を出した時といい……まるで鎧に意思があって、アイリスさんとは別に動いている様だわ」
うぐっ! 流石に怪しまれてしまったか。
誤魔化そうにもラティアがこの状態だし……これは困ったぞ。
「なんて、そんな馬鹿な事があるわけないか。高熱を出した時は自覚してない感じだったし、今回もクラーケンを相手にして船酔いどころじゃなかったものね」
よっ良かった。
よくわからないが自己完結してくれたようだ。
うーん、これからはもっと注意深くして行動しないといけないな。
「オロロロロ~」
というか、さっきからラティアがまずいな。
この状態だと下手に動かせないし……。
「えと……部屋に戻りますか? それともここに……」
「オロロロロ~……」
「……今は動かさない方が良さそうですね……」
の方が良さそうです。
結局ソフィーナさんはラティアが落ち着くまで傍についていてくれたのだった。
◇◆アース歴9年 7月19日◇◆
その後クラーケンが再び襲って来る事もなく、俺達は無事に北の大陸の港町ザレスへ到着した。
『ここが北の大陸か……』
この大陸のどこかにオリバーがいるのか。
俺は窓から見える景色を見つつ、爺さんに渡された石を取り出した。
改めて見てもやっぱりただの石にしか見えないな……。
あいつはこの石をどうするつもりなんだろうか。
「お待たせしました! ザレスに到着です! 下船の際、お荷物のお忘れない様にお気を付けくださいね!」
船長の声が船内に響き渡る。
俺はすぐには出ず、扉を少し開け通路の様子を見る事にした。
少し経つと、ソフィーナさんがジョンさんを背負って甲板へ向かって行った。
『……行ったみたいだな』
挨拶をしないのはどうかとは思うが……。
「……うウ……」
「……うう……」
ベッドの上で寝込んでいるこの2人。
この状態でソフィーナさんと鉢合わせすると、また面倒な事になりそうだしな。
こればかりは仕方ない。
『とはいえ、俺達も船から降りないとな』
俺はラティアを自分の中に入れ、エイラを背負って甲板へ向かった。
「乗船ありがとうございましたー! またご利用宜しくお願いしまーす!」
「お願いしまーす!」
甲板に出ると、頭に包帯を巻いた船長と副船長が笑顔で見送ってくれた。
もうこの船に乗る事は無いだろう……いや、あってたまるか。
そう固く決意し、俺は船を降りた。
『とうとう着いたな!』
北の大地に足を付けると、なんかこう新天地! って感じで気分が高まるな。
「うう……船から……降りたのに……まだ……揺れてる……感覚がするんだけど……」
「私モ……でス……」
『……』
今の2人はそれどころではないらしい。
『陸酔いって奴だな……船から降りても、しばらくは体が揺れている感覚が残るんだよ』
こればかりは自然に治るのを待つしかない。
「ええ……そんな……せっかく……船から……降りれたのに……」
エイラが半泣き状態になってしまっている。
まぁそうなるよな。
「…………」
一方ラティアは俺の中に居るから表情が見えない。
ただ、恐らくエイラみたいになっているだろう。
『……仕方ないか。少しこの辺りで休もう』
流石にこの状態でリックに向かうのは酷だよな。
結局、オリバーがいると思われるリックに着いたのは半日後になるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる