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Ep17
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「……え、ちょっと待ってください。これも、もう終わったんですか?」
ギルド職員のフィオが、信じられないものを見るような目で俺を見つめている。 カウンターに置かれたのは、三件の完了証明書。「下水路の泥詰まり箇所の特定」「古文書館の年代別仕分け」、そして「市場の荷受けミス調査」。どれも数日はかかるはずの、地味だが面倒な雑用ばかりだ。
「ああ。中身を把握して、適切な場所に動かす。それだけだよ」
俺が平然と答えると、背後で待機していた冒険者たちがざわつき始めた。 「おい、あの新人の魔法使い……少し前に誰も手を付けなかった倉庫の棚卸しを半日で終わらせた奴だろ?」
フィオは受理印を押し、俺に報酬の銀貨を差し出す。
「ケンジさん……正直、あなたのような人材を冒険者にしておくのは、この街の損失かもしれません」
「はは、買い被りだよ。まだ討伐依頼もろくにできていないひよっこさ」
俺は軽く手を振り、先にギルドを出たリィザの後を追った。
夕暮れの街を歩きながら、俺は隣を歩くリィザの「変化」に目を奪われた。 昨日までの彼女は、どこか力任せで、重厚な鎧に振り回されているような危うさがあった。だが、今の彼女はどうだ。
石畳を踏む足音は驚くほど静かで、背筋は天に引っ張られるようにスッと伸びている。 常時発動させている「身体強化」が、彼女の無駄な挙動をすべて削ぎ落としていた。
「どうしたんだ、ケンジ。私の顔に何かついてるか?」
「いや……歩き方が綺麗になったなと思って。騎士らしくなったというか、なんというか」
「そうか? ……ああ、自分でも驚いてるんだ。ノアが教えてくれる『感覚』を意識して魔力を流してると、重力から解き放たれたみたいに体が軽いんだよ」
リィザが嬉しそうに、くるりとその場で一回転してみせる。その動きはまるで舞踏会のダンスのように優雅で、それでいて隙がない。
『補足:リィザ様の魔力適応速度は、当初の予測を200%上回っています。現在は無意識下での魔力循環が定着し始めており、基礎身体能力が常時底上げされています』
(……ノア、お前の指導が的確だったってことだな)
『肯定。リィザ様の直感的な理解力に合わせ、魔力の流動を具体的な感覚イメージとして共有した結果です』
「なあノア! 次はもっと鋭く動ける方法を教えてくれ。剣を振る時、もっと風みたいになりたいんだ!」
『了解しました。リィザ様。夕食後は、魔力の密度を高めて爆発的に解放する制御の予習を行いましょう』
「おう、楽しみだ!」
脳内で楽しそうにやり取りする一人と一機を眺めながら、俺は苦笑した。 リィザは当初の「魔法が使えない落ちこぼれ」から、ノアという最高のナビゲーターを得たことで、「規格外の身体能力を持った戦士」へと脱皮しようとしている。
「さて、資金に余裕ができたことだし、そろそろ討伐依頼をするかな」
「ようやくか!ケンジ!」
リィザが満面の笑みで、親愛の情を込めて俺の背中をバンッ! と叩いた。 だが、今の彼女は「常時身体強化」状態だ。本人に悪気はなくても、その威力はもはや人間の域を超えている。
「あ、がっ!?」
衝撃と共に、俺の視界が高速で後ろに流れた。 体がふわりと浮いたかと思った次の瞬間、俺は数メートル先の石畳の上に派手に転がっていた。
「……あ、あちゃー! ごめんケンジ! まだ力の加減が完璧じゃなかったわ!」
慌てて駆け寄ってくるリィザの足音すら、以前より力強い地響きを立てている。
「……リィザ……。装備を……新調する前に……俺の治療費が、先に必要に、なりそうだ……」
地面に這いつくばったまま、俺は自分の相棒の「成長しすぎたパワー」を、全身の痛みで痛感していた。
ギルド職員のフィオが、信じられないものを見るような目で俺を見つめている。 カウンターに置かれたのは、三件の完了証明書。「下水路の泥詰まり箇所の特定」「古文書館の年代別仕分け」、そして「市場の荷受けミス調査」。どれも数日はかかるはずの、地味だが面倒な雑用ばかりだ。
「ああ。中身を把握して、適切な場所に動かす。それだけだよ」
俺が平然と答えると、背後で待機していた冒険者たちがざわつき始めた。 「おい、あの新人の魔法使い……少し前に誰も手を付けなかった倉庫の棚卸しを半日で終わらせた奴だろ?」
フィオは受理印を押し、俺に報酬の銀貨を差し出す。
「ケンジさん……正直、あなたのような人材を冒険者にしておくのは、この街の損失かもしれません」
「はは、買い被りだよ。まだ討伐依頼もろくにできていないひよっこさ」
俺は軽く手を振り、先にギルドを出たリィザの後を追った。
夕暮れの街を歩きながら、俺は隣を歩くリィザの「変化」に目を奪われた。 昨日までの彼女は、どこか力任せで、重厚な鎧に振り回されているような危うさがあった。だが、今の彼女はどうだ。
石畳を踏む足音は驚くほど静かで、背筋は天に引っ張られるようにスッと伸びている。 常時発動させている「身体強化」が、彼女の無駄な挙動をすべて削ぎ落としていた。
「どうしたんだ、ケンジ。私の顔に何かついてるか?」
「いや……歩き方が綺麗になったなと思って。騎士らしくなったというか、なんというか」
「そうか? ……ああ、自分でも驚いてるんだ。ノアが教えてくれる『感覚』を意識して魔力を流してると、重力から解き放たれたみたいに体が軽いんだよ」
リィザが嬉しそうに、くるりとその場で一回転してみせる。その動きはまるで舞踏会のダンスのように優雅で、それでいて隙がない。
『補足:リィザ様の魔力適応速度は、当初の予測を200%上回っています。現在は無意識下での魔力循環が定着し始めており、基礎身体能力が常時底上げされています』
(……ノア、お前の指導が的確だったってことだな)
『肯定。リィザ様の直感的な理解力に合わせ、魔力の流動を具体的な感覚イメージとして共有した結果です』
「なあノア! 次はもっと鋭く動ける方法を教えてくれ。剣を振る時、もっと風みたいになりたいんだ!」
『了解しました。リィザ様。夕食後は、魔力の密度を高めて爆発的に解放する制御の予習を行いましょう』
「おう、楽しみだ!」
脳内で楽しそうにやり取りする一人と一機を眺めながら、俺は苦笑した。 リィザは当初の「魔法が使えない落ちこぼれ」から、ノアという最高のナビゲーターを得たことで、「規格外の身体能力を持った戦士」へと脱皮しようとしている。
「さて、資金に余裕ができたことだし、そろそろ討伐依頼をするかな」
「ようやくか!ケンジ!」
リィザが満面の笑みで、親愛の情を込めて俺の背中をバンッ! と叩いた。 だが、今の彼女は「常時身体強化」状態だ。本人に悪気はなくても、その威力はもはや人間の域を超えている。
「あ、がっ!?」
衝撃と共に、俺の視界が高速で後ろに流れた。 体がふわりと浮いたかと思った次の瞬間、俺は数メートル先の石畳の上に派手に転がっていた。
「……あ、あちゃー! ごめんケンジ! まだ力の加減が完璧じゃなかったわ!」
慌てて駆け寄ってくるリィザの足音すら、以前より力強い地響きを立てている。
「……リィザ……。装備を……新調する前に……俺の治療費が、先に必要に、なりそうだ……」
地面に這いつくばったまま、俺は自分の相棒の「成長しすぎたパワー」を、全身の痛みで痛感していた。
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