花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜

木村 巴

文字の大きさ
6 / 59

儀式・後

しおりを挟む


 逃亡について考えを巡らせてしまったのを、ギフトが貰えないかもしれないと怯えていると捉えたマデリンは高笑いしながら定位置に戻っていった。

 いや、もちろんギフトないのは怖いけど……今は逃亡ルートが危険だなって考えてただけだよ。まあ、あの子は私を虐めてストレス発散したいとだけだからいいや、放っておこう。


 さあ、私の人生がかかってる。生きていける事に特化したギフトだといいな、と思いながら祭壇へ進む。


「フローラ様、こちらへ」
「はい」


 神官長に促されるままに祭壇に進み、そして水晶にそっと手で触れる。
 すると、先程のマデリンの時よりもいっそう強く……目を開けていられない程の眩しい光が水晶から放たれた。

 うええええええええ!
 そこまでは、そんなすごい事なんて望んでないよ!
 どうしよう!!


 一瞬の静寂の後、神官たちが大慌てで神語を書き写しだした。

 そして、ふと気がつく。

 …………読める。

 神語はもちろん神語として見えているのだけれど、まるで母国語のように読める。



 私の可愛いこども……
 あなたにふさわしい力を贈りましょう
『かいか』
『最上位』
 この力で、しあわせになりなさい




「少々おまちくださいっ」
「過去の文献を持てっ……いや! とにかく全て写せるだけ写すのだ! 正確にだ!!」



 私には読めたけど……神官さん達は新しい神語の羅列で現場は大混乱だ。
 文献の前に待機していた人や壁際に待機していた人達までも集まって、書き写すのに必死だ。


「おやおや、フローラ様少しお待ち頂いてもよろしいですかの? 本当に素晴らしい。これまでにない特殊なギフトのようですな……私も初めて見ます。
 いやいやそれよりも、まずはギフトを賜れました事、おめでとうございます」

 神官長様は、好奇心が抑えられないように満面の笑みを浮かべているが……こんな神語見たことがないと、いつもは開いているのか開いていないのかわからない目が、かっぴらいちゃってる。
 少しの間私のとなりで成り行きを見ていたが、興味を抑えられなくなったようで「ちょっと失礼して……」と解読する神官様達に加わった。



 私、どうしよう……? 神語を読めちゃったと伝えても、困った事になりそうだし……え? 部屋に帰っていいかな?

 今後の事も、力の事もゆっくり考えたい。




「……ありえない!! こんなのありえないわ!」

 突然の大きな声に振り返ると、マデリンがプルプル震えながら鬼の形相で叫んでいた。

 こわっ! はぁ……この子はどんだけ私が嫌いなんだろう。


「あんたなんか、ギフト無しの無能がお似合いなのに!」
「マデリン様!!」
 神官の記録担当の中から一人の神官様が、怒りの表情で前に進み出る。

「女神様からのギフトを否定されるのですか? まだ詳細はわかりませんが、信託はくだりました。女神様の名のもとに第三王女フローラ様はギフト持ちでございます。我ら神官一同、お祝い申し上げます」

 その宣言の後、神官様たちはザッと一斉に神への祈りと同じ祈りの型で頭をさげた。



「な……なによ……」

 マデリンはじりじりと後退しながら「私は、認めないんだから!」と、走り去って行った。


 私は、その光景をただ見ていた。

「フローラ様、解読には少々……いえ、かなりの時間がかかってしまうと思いますので、後ほど報告に伺いますので、その時でよろしいでしょうか? ギフトに関してはご自身で使い方と解るものらしいので、試してみて頂いてもよろしいでしょうか?」


 私はこの場を離れられるのならば何でも良いとばかりに、急いで退出した。


 とにかく今は、一人で考えたかった。



 女神様はなんて?
 この力でしあわせに?


 …………逃げてもいいの?


 本当は、から逃げたい私になんて、ギフトはないものだと思っていた。

 だって、この国の王様の子孫にだけ文字通り与えられるギフト。
 更には、子孫であれば絶体貰える訳でもない力。

 現に義母兄である第三王子にはギフトはない。


 ギフトを貰える側に、何か共通点があるのか。何か理由があるのか。様々な研究が長年されているが、理由も何もかも不明らしい。

 女神様の気まぐれなのか、何か理由があるのか……全ては神のみぞ知るってヤツらしい。





 だから、本当は……本当はものすごく怖かった。

 ギフトが無くても、今後の人生がものすごく危険しかないのはわかっていた。
 後宮での虐めはもっと苛烈になるだろうし、外に逃げてもよほど運が良くなければ売られるか死ぬしかないと思っていた。

 だから、出来る事なら身を守る力が欲しかった。

 でもこの国を逃げ出したいと考えている私には、この国を愛する女神様から力を貰える訳なんてあると思えなかった。



 でもいいんだ。

 この力で、幸せになっていいんだって。


 女神様、お母様。見ていて、私は絶対この国を出て勝手に幸せになってみせるわ!






 気持ちを新たにギフトについて考えてみる。『かいか』普通に考えると開花かな? お花? えっと……?

 あ、うん。わかるかも。神官様も言っていたけど、なんとなく使い方がわかる。
 なんていうのかな? 『歩ける』のと同じ感じ。特に意識して歩いていないけど、歩けるっていうか……右足出して左足出すと歩けるって、そんなギャグあったっけ。でもそんな感じ。


 そっと窓から庭を見る。私の敷地内に基本的にほとんど人はいない。裏庭はお母様が好きだった花がいくつかと、手入れが行き届いていないせいか、自然の姿のままの草花が……まぁ、いわば荒れた裏庭だ。
 花もいくつか咲いているが、蕾も見える。

 蕾に向かって「咲け」と力を込めてみた。


 すると、ポポポンとその木の全ての蕾が咲いてしまった。なるほど、開花か。
 人差し指で離れた所にある草を指差してみれば、一本だけ咲かす事も出来た。

 そして目を閉じて、身体の中の力を確認してみる。うん。出来そう。



 私は前世に好きだった、かすみ草を部屋いっぱいに咲かせた所で――――意識を失った。





 そして、夢を見た。お母様がたくさんのかすみ草を抱えて、こっちを見て笑ってた。
 お母様が笑ってる。

 いやお母様、逃げるのに役にたつかなぁ?
 そもそも役に立つギフト? これ?

 ねえ、お母様がお花屋さんしたいって言ってたからお花のギフトになったのかな?

 そう考えるとなんだか笑えてくる。
 お母様! 私、原価無しでお花屋さん出来そうだよ。丸儲けだね。


 そう言ったらお母様は、ますます笑って、私に一つの林檎をくれた。

 お母様が笑ってるからいいか。
 お花、大好きだもんね。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。 ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。 同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。 ※♡話はHシーンです ※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。 ※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。 ※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...