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青春短し、恋せよ乙女――ただし人狼の。 01
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――だって……気付いちゃったんだもの……――
その日の朝、午前八時。通学中の、校門の前。
あたし、蘭馨は、気付いてしまった。前から感じていた、その気持ちに。
「……蘭ちゃん?」
――山田君……あたし……――
「蘭ちゃん?蘭ちゃんってば?」
――あたし、あなたに……――
「シカトこいてへんと、蘭ちゃんってばさ」
唐突に、あたしの目の前で、星が散った。
「目ェ醒めたか?」
手加減抜きのハイキックを顔面にモロに食らい、鼻っ柱を押さえて踞るあたしの後頭部の方で、親友にして悪友の昴銀子の、にやけの入った声がする。
「みんなの迷惑やさかい、校門の前で立ったまま寝とったらあかんで?なあ?」
――この、ドクソアマ……――
ツーンと、独特の痛みが走る鼻を押さえたまま、あたしは、腹の中で悪態をつく。
関西出身の銀子は、何かというと誰彼構わず間髪入れずにツッコむ癖がある。たいがいは裏拳でポンとはたく程度、男子相手でもせいぜい手刀でトンとするくらいだが、相手があたしの時だけは、結構な確率で全力の回し蹴りか、場合によっては踵落としが飛んでくる。しかも、制服のスカート、ミニ丈にしたチェックの巻きスカートの裾のガードも、どういうわけか鉄壁と来ている。
もちろん、あたしもそれに対応出来ないほどボンクラではない。滅多にまともにもらった事はない、のだが……今朝は完全に油断してた。
とはいえ。ここまでキレイに回し蹴りを顔面にもらったのは久しぶりだ。大体、あたしより身長のある銀子の、体重の乗った蹴りをまともに食らったら、普通は痛いじゃ済まない。銀子も、もちろんそれを知っているから、あたし以外には絶対に本気を出さない。けど、逆にあたし相手なら、絶対に痛いで済む事も知っているから、あたしには容赦なく全力の蹴りを繰り出して来やがる。
「ほらほら、お銀ちゃんも蘭ちゃんも、油売ったはったら遅刻しますえ」
そんなあたしの様子を見ても全く意に介せず、はんなりと言ってのけて、親友にして悪友その2の八重垣環が通り過ぎる。
「せやな、さっさと学校行かな」
「……あんたたち……酷くない?」
まだ傷む鼻を押さえつつ、そう言って立ち上がったあたしの、涙でうるみ、にじむ視界の中、銀子と環は振り向きもせずに、さっさと校門をくぐって行きやがった。
「で?朝は何考えて突っ立ってたん?」
昼休み。校庭の隅の木陰で弁当を広げつつ、百均の携帯クッションの上であぐらをかいた銀子があたしに聞いた。
あたし達が居るのは、東京の郊外にある学校の校庭。数年前までは男子校で、場所も都心だったらしいけど、今はここ、国分寺の駅チカに移転した、某大学付属の共学の私立高校。あたしが住んでるのは東村山のアパートだから、都心にあるより通い易くて助かるっちゃ助かる。
その学校の校庭の隅、あまり強い日差しに当たるのを避けたい環の為もあって、あたし達はいつもこの木陰で弁当を広げている。
「何って……」
ちょっと恥ずかしくて、同じくクッションの上で体育座りのあたしは口ごもる。興味しんしんの銀子の、聞いておきながらも実は気付いていそうな感じの見える濃い狐色の目と、気付いているのかいないのか、その奥の読めない環の紅い目があたしを見つめている。
自分で作ったお弁当を箸でつつきながら、あたしは答える。
「……山田君、の、事……」
その日の朝、午前八時。通学中の、校門の前。
あたし、蘭馨は、気付いてしまった。前から感じていた、その気持ちに。
「……蘭ちゃん?」
――山田君……あたし……――
「蘭ちゃん?蘭ちゃんってば?」
――あたし、あなたに……――
「シカトこいてへんと、蘭ちゃんってばさ」
唐突に、あたしの目の前で、星が散った。
「目ェ醒めたか?」
手加減抜きのハイキックを顔面にモロに食らい、鼻っ柱を押さえて踞るあたしの後頭部の方で、親友にして悪友の昴銀子の、にやけの入った声がする。
「みんなの迷惑やさかい、校門の前で立ったまま寝とったらあかんで?なあ?」
――この、ドクソアマ……――
ツーンと、独特の痛みが走る鼻を押さえたまま、あたしは、腹の中で悪態をつく。
関西出身の銀子は、何かというと誰彼構わず間髪入れずにツッコむ癖がある。たいがいは裏拳でポンとはたく程度、男子相手でもせいぜい手刀でトンとするくらいだが、相手があたしの時だけは、結構な確率で全力の回し蹴りか、場合によっては踵落としが飛んでくる。しかも、制服のスカート、ミニ丈にしたチェックの巻きスカートの裾のガードも、どういうわけか鉄壁と来ている。
もちろん、あたしもそれに対応出来ないほどボンクラではない。滅多にまともにもらった事はない、のだが……今朝は完全に油断してた。
とはいえ。ここまでキレイに回し蹴りを顔面にもらったのは久しぶりだ。大体、あたしより身長のある銀子の、体重の乗った蹴りをまともに食らったら、普通は痛いじゃ済まない。銀子も、もちろんそれを知っているから、あたし以外には絶対に本気を出さない。けど、逆にあたし相手なら、絶対に痛いで済む事も知っているから、あたしには容赦なく全力の蹴りを繰り出して来やがる。
「ほらほら、お銀ちゃんも蘭ちゃんも、油売ったはったら遅刻しますえ」
そんなあたしの様子を見ても全く意に介せず、はんなりと言ってのけて、親友にして悪友その2の八重垣環が通り過ぎる。
「せやな、さっさと学校行かな」
「……あんたたち……酷くない?」
まだ傷む鼻を押さえつつ、そう言って立ち上がったあたしの、涙でうるみ、にじむ視界の中、銀子と環は振り向きもせずに、さっさと校門をくぐって行きやがった。
「で?朝は何考えて突っ立ってたん?」
昼休み。校庭の隅の木陰で弁当を広げつつ、百均の携帯クッションの上であぐらをかいた銀子があたしに聞いた。
あたし達が居るのは、東京の郊外にある学校の校庭。数年前までは男子校で、場所も都心だったらしいけど、今はここ、国分寺の駅チカに移転した、某大学付属の共学の私立高校。あたしが住んでるのは東村山のアパートだから、都心にあるより通い易くて助かるっちゃ助かる。
その学校の校庭の隅、あまり強い日差しに当たるのを避けたい環の為もあって、あたし達はいつもこの木陰で弁当を広げている。
「何って……」
ちょっと恥ずかしくて、同じくクッションの上で体育座りのあたしは口ごもる。興味しんしんの銀子の、聞いておきながらも実は気付いていそうな感じの見える濃い狐色の目と、気付いているのかいないのか、その奥の読めない環の紅い目があたしを見つめている。
自分で作ったお弁当を箸でつつきながら、あたしは答える。
「……山田君、の、事……」
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