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王都学園編
エリナ②
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暫くして王都に着いた私とアル君は、目の前の光景に唖然とした。
「……列…長いな」
「…うん……アル君がちゃんと普通に起きていればこんな事にはならなかったと思うよ?」
「うっ…返す言葉も有りません…」
教会前には私達と同じく儀式を受ける人達が並んでいたけど、その人数が余りに多くて長蛇の列になっていた。
そりゃそうだよね、王国内の色んな所から儀式を受けに王都に集まってくるんだから。
私はアル君と話しながら自分達の順番が来るのを並んで待っていた。
「……エリナごめん。俺のせいで並ぶ事になって……あと、今日は起こしてくれて有難う」
「え?…あ、う、うん!いいよそんな気にして無いから!」
え、なに急に?そんな真剣に謝られても大して気にしてないのに……もしかしてさっき言ったこと結構真に受けちゃってる?どどどどうしよう、ちょっと揶揄おうと思って言っただけなのに!……そ、それに有難うだなんて……べ、別に私はアル君を起こすの嫌じゃないし、むしろ嬉しいってゆうか………ってなにを考えてるの!!………と、取り敢えず話題を変えなきゃ!
「そ、それよりなんか緊張するね!ちょっとドキドキして来たよ!アル君は?なんか緊張して来ない?」
「俺か?……俺は…別に」
「えぇ~本当に?私なんて昨日からずっと儀式の事ばかり考えちゃって緊張しまくりだよ。アル君のその落着きようを私にも分けて欲しいよ。あぁ~こんな事考えてたら余計に緊張してきちゃったよ!しかももう少しで私達の番じゃん!ほ、本当にどうしようアル……アル君?」
「……」
「お~い、アル君」
「……」
―――まただ、またその表情だ。
行きの馬車の中でも私と話している時、たまに外の景色を見ながら何か考え事でもしているかの様に眉間に眉を寄せて今みたいに険しい表情をしていた。どのタイミングかは分からないけど、多分途中から私の話なんて聞こえてないよね。
はぁ~……ん?てことは私さっきから一人で喋ってたって事!?うわぁーーー何それ!凄く恥ずかしいよ!!なんかさっきから前の人がチラチラ見てくるなぁって思ったら、何!?そうゆう事!?そうゆう事なの!?絶対変な人って思われたよ!!うぅ~アル君のバカ!!人の話聞かないなんてあり得ないんだから!!もう怒っちゃうんだからね!
「アル君!!」
「うおぉ!?ビックリした。……なんだよ急に」
「急じゃないよ!さっきからずっと呼んでるよ!!」
ようやく気付いたアル君に私は声を荒立てた。
「では、次の者」
暫くすると教会の神父が声を掛けてきた。
(き、来た!私の番だ!)
「では、この水晶に触れてください」
「は、はい!!」
神父に促されるままに緊張して震えてる左手を目の前の水晶に触れる。そして其れを確認した神父は儀式の言葉を口に出した。
「彼の者に祝福を―――」
すると次の瞬間―――。
「きゃっ!?」
水晶から物凄い光が発生した。
咄嗟に目を瞑るが少し遅れしまい―――眼が少し焼かれるような熱い感覚がした。
(め、眼がぁぁあ、眼がぁぁぁぁあ!)
と叫びたくなるけど、何かいけない気がして心の中に留めて必死に堪える。
「うぅ~~」
「――っ!?エ、エリナ大丈夫か!?」
……あ、でももう大丈夫な気がする。熱いって言っても最初の一瞬だけだったし、うん…もう大丈夫だね!大丈夫!大丈夫!
「う、うん……」
それにしても今の光……私の前に居た人達は水晶に触れると少し光る程度だったのにそれ以上に光るって……本当に何なの今の……?
「お、俺も分からん…」
あ、声に出しちゃってたよ。
私や周囲の誰もが混乱している中、突然目の前の神父が水晶に触れている私の左手を観て驚愕の叫びを上げた。
「おぉ!!こ、これは!……す、素晴らしい!『五枚羽』だ!」
何事かと私も自分の左手に視線を移すと其処には―――今まで観たことの無い形の天使紋が出現していた。
(何…これ…?)
お父さんとお母さんのとも違う、二人共確か羽の枚数は三枚だった気がする。でも私のは……五枚?これはいったい……そう言えばさっき神父が『五枚羽』?って言ってた様な…何か知っているなら聞いてみなくちゃ!
そう思い神父の方に視線を移す。―――ってうわぁ~何その顔、怖い怖いよ!絶対に聖職者がしていい顔じゃないよ!うぅ何か声掛けるのやだなぁ、でも聞かないと分かんないし……頑張れ!頑張るのよ私!
「あ、あのぉ………」
神父から自分の天使紋の事を教えてもらった。どうやらこんな事今までになくて、とにかく凄いという事は分かった。―――でも何で私なんだろ?特に普段から特別な事をしてる訳でも無いのに……。そう思うと何だか複雑な気持ちになってきた。
「どうした?嬉しく無いのか?」
私の様子に気づいたのかアル君が声を掛けてきた。
誰かに聞いて欲しかったのか気付けばアル君に自分の思っていた事を話していた。
「………まぁ気にする必要ないだろ」
「えっ?」
「加護を与えてくれるのは女神様だ。俺達がなんでとか考えたところで分かるわけないだろ。それに、女神様がお前には『五枚羽』が相応しいって決めて加護を与えたんだ。だったらもっと素直に喜んで良いんじゃないか?」
女神様が決めた…か確かにそうだよね私がどうこう考えたって分かる訳ないよね!だったら素直に喜んだ方が気持ちも楽になるし良いよね!……うん、そう思ったら何かスッキリしたよ!―――話を聞いてくれたのがアル君で良かったなと心から思った。
「…うん…そう……だよね!ありがとう!アル君!!」
私の番も終わりアル君に順番が回ってくる。
「この水晶に触れて下さい」
それにしても本当に落ち着いてるなぁ
「彼の者に祝福を―――」
アル君は元冒険者の叔父さんからたまに剣の稽古をして貰ってるから私より絶対凄いだろうなぁ。
そう期待に胸を膨らませながら水晶とそれに触れている彼の左手を見詰めていた。―――しかし
「「「…………」」」
水晶に変化は無く、アル君の左手の甲にも天使紋は出現していなかった。其処でふと頭の中で嫌な思いがよぎった。
(まさか…ね、そんな事は……)
「……逆の手で触れてみてください」
そ、そうだよ!きっと右手でやれば大丈夫だよ!……うん左手さんは中指の中節骨辺りを痛めちゃって多分調子が悪かったんだよ!……だから次は絶対に……!
「ではもう一度……彼の者に祝福を―――」
「「「…………」」」
だがやはり、水晶にもアル君の手にも変化は無く何も起こらなかった。
そんな……ありえないよ!だってアル君は私よりも凄いんだから!こんなの何かの間違いだよね!?……そうだよきっと水晶の調子が悪かっただけだよ!
「……失礼なことをお聞きしますが……貴方は、アルカナ王国民で間違いありませんか?」
「はい。リーベルの街出身です……。」
「……そうですか。…ではやはり貴方は――――――」
駄目!それ以上先は言わないで!絶対にそんな事あるはずないんだから!
「『紋無し』です」
幾ら心の中で必死に叫んでも話し出した神父の口は止まる訳もなく、聞きたくなかった現実が告げられた。、
「うそ……アル君が…」
♢♢♢♢♢♢
「……それじゃあアル君……また明日」
「おう、じゃあな」
アル君の家の前で別れを告げた私は彼が玄関に向かって歩くのを唯見詰めていた。
本当にこのまま帰らせて良いのかな?……なんだろう、何故かアル君が何処かへ行ってしまいそうな気がする。そう思い気付いたらアル君を呼び止めていた。
「あ、アル君っ!!」
「ん?……どうした?」
ど、どうしよう咄嗟に声掛けたせいで何話せば良いか分かんないよぉ~…………アル君『文無し』になっちゃったけど、それでも明日から一緒に学園に行くよね?
「何が?」
また声に出しちゃってたよ………でも良いや、このまま聞いちゃえ!
「明日から!……私と一緒に…学園に行くよね!?」
「…………あぁ、勿論行くよ」
「…本当に?」
「あぁ、本当だ」
「っ!?じゃ、じゃあまた明日起こしにくるからね!?絶対だからね!?………また明日!」
アル君の口から学園に行くと聞けたことが嬉しかったのか、リーベルの街に着くまで重かった足取りも今は少し軽くなり自分の家まで走りながら帰った。
「……列…長いな」
「…うん……アル君がちゃんと普通に起きていればこんな事にはならなかったと思うよ?」
「うっ…返す言葉も有りません…」
教会前には私達と同じく儀式を受ける人達が並んでいたけど、その人数が余りに多くて長蛇の列になっていた。
そりゃそうだよね、王国内の色んな所から儀式を受けに王都に集まってくるんだから。
私はアル君と話しながら自分達の順番が来るのを並んで待っていた。
「……エリナごめん。俺のせいで並ぶ事になって……あと、今日は起こしてくれて有難う」
「え?…あ、う、うん!いいよそんな気にして無いから!」
え、なに急に?そんな真剣に謝られても大して気にしてないのに……もしかしてさっき言ったこと結構真に受けちゃってる?どどどどうしよう、ちょっと揶揄おうと思って言っただけなのに!……そ、それに有難うだなんて……べ、別に私はアル君を起こすの嫌じゃないし、むしろ嬉しいってゆうか………ってなにを考えてるの!!………と、取り敢えず話題を変えなきゃ!
「そ、それよりなんか緊張するね!ちょっとドキドキして来たよ!アル君は?なんか緊張して来ない?」
「俺か?……俺は…別に」
「えぇ~本当に?私なんて昨日からずっと儀式の事ばかり考えちゃって緊張しまくりだよ。アル君のその落着きようを私にも分けて欲しいよ。あぁ~こんな事考えてたら余計に緊張してきちゃったよ!しかももう少しで私達の番じゃん!ほ、本当にどうしようアル……アル君?」
「……」
「お~い、アル君」
「……」
―――まただ、またその表情だ。
行きの馬車の中でも私と話している時、たまに外の景色を見ながら何か考え事でもしているかの様に眉間に眉を寄せて今みたいに険しい表情をしていた。どのタイミングかは分からないけど、多分途中から私の話なんて聞こえてないよね。
はぁ~……ん?てことは私さっきから一人で喋ってたって事!?うわぁーーー何それ!凄く恥ずかしいよ!!なんかさっきから前の人がチラチラ見てくるなぁって思ったら、何!?そうゆう事!?そうゆう事なの!?絶対変な人って思われたよ!!うぅ~アル君のバカ!!人の話聞かないなんてあり得ないんだから!!もう怒っちゃうんだからね!
「アル君!!」
「うおぉ!?ビックリした。……なんだよ急に」
「急じゃないよ!さっきからずっと呼んでるよ!!」
ようやく気付いたアル君に私は声を荒立てた。
「では、次の者」
暫くすると教会の神父が声を掛けてきた。
(き、来た!私の番だ!)
「では、この水晶に触れてください」
「は、はい!!」
神父に促されるままに緊張して震えてる左手を目の前の水晶に触れる。そして其れを確認した神父は儀式の言葉を口に出した。
「彼の者に祝福を―――」
すると次の瞬間―――。
「きゃっ!?」
水晶から物凄い光が発生した。
咄嗟に目を瞑るが少し遅れしまい―――眼が少し焼かれるような熱い感覚がした。
(め、眼がぁぁあ、眼がぁぁぁぁあ!)
と叫びたくなるけど、何かいけない気がして心の中に留めて必死に堪える。
「うぅ~~」
「――っ!?エ、エリナ大丈夫か!?」
……あ、でももう大丈夫な気がする。熱いって言っても最初の一瞬だけだったし、うん…もう大丈夫だね!大丈夫!大丈夫!
「う、うん……」
それにしても今の光……私の前に居た人達は水晶に触れると少し光る程度だったのにそれ以上に光るって……本当に何なの今の……?
「お、俺も分からん…」
あ、声に出しちゃってたよ。
私や周囲の誰もが混乱している中、突然目の前の神父が水晶に触れている私の左手を観て驚愕の叫びを上げた。
「おぉ!!こ、これは!……す、素晴らしい!『五枚羽』だ!」
何事かと私も自分の左手に視線を移すと其処には―――今まで観たことの無い形の天使紋が出現していた。
(何…これ…?)
お父さんとお母さんのとも違う、二人共確か羽の枚数は三枚だった気がする。でも私のは……五枚?これはいったい……そう言えばさっき神父が『五枚羽』?って言ってた様な…何か知っているなら聞いてみなくちゃ!
そう思い神父の方に視線を移す。―――ってうわぁ~何その顔、怖い怖いよ!絶対に聖職者がしていい顔じゃないよ!うぅ何か声掛けるのやだなぁ、でも聞かないと分かんないし……頑張れ!頑張るのよ私!
「あ、あのぉ………」
神父から自分の天使紋の事を教えてもらった。どうやらこんな事今までになくて、とにかく凄いという事は分かった。―――でも何で私なんだろ?特に普段から特別な事をしてる訳でも無いのに……。そう思うと何だか複雑な気持ちになってきた。
「どうした?嬉しく無いのか?」
私の様子に気づいたのかアル君が声を掛けてきた。
誰かに聞いて欲しかったのか気付けばアル君に自分の思っていた事を話していた。
「………まぁ気にする必要ないだろ」
「えっ?」
「加護を与えてくれるのは女神様だ。俺達がなんでとか考えたところで分かるわけないだろ。それに、女神様がお前には『五枚羽』が相応しいって決めて加護を与えたんだ。だったらもっと素直に喜んで良いんじゃないか?」
女神様が決めた…か確かにそうだよね私がどうこう考えたって分かる訳ないよね!だったら素直に喜んだ方が気持ちも楽になるし良いよね!……うん、そう思ったら何かスッキリしたよ!―――話を聞いてくれたのがアル君で良かったなと心から思った。
「…うん…そう……だよね!ありがとう!アル君!!」
私の番も終わりアル君に順番が回ってくる。
「この水晶に触れて下さい」
それにしても本当に落ち着いてるなぁ
「彼の者に祝福を―――」
アル君は元冒険者の叔父さんからたまに剣の稽古をして貰ってるから私より絶対凄いだろうなぁ。
そう期待に胸を膨らませながら水晶とそれに触れている彼の左手を見詰めていた。―――しかし
「「「…………」」」
水晶に変化は無く、アル君の左手の甲にも天使紋は出現していなかった。其処でふと頭の中で嫌な思いがよぎった。
(まさか…ね、そんな事は……)
「……逆の手で触れてみてください」
そ、そうだよ!きっと右手でやれば大丈夫だよ!……うん左手さんは中指の中節骨辺りを痛めちゃって多分調子が悪かったんだよ!……だから次は絶対に……!
「ではもう一度……彼の者に祝福を―――」
「「「…………」」」
だがやはり、水晶にもアル君の手にも変化は無く何も起こらなかった。
そんな……ありえないよ!だってアル君は私よりも凄いんだから!こんなの何かの間違いだよね!?……そうだよきっと水晶の調子が悪かっただけだよ!
「……失礼なことをお聞きしますが……貴方は、アルカナ王国民で間違いありませんか?」
「はい。リーベルの街出身です……。」
「……そうですか。…ではやはり貴方は――――――」
駄目!それ以上先は言わないで!絶対にそんな事あるはずないんだから!
「『紋無し』です」
幾ら心の中で必死に叫んでも話し出した神父の口は止まる訳もなく、聞きたくなかった現実が告げられた。、
「うそ……アル君が…」
♢♢♢♢♢♢
「……それじゃあアル君……また明日」
「おう、じゃあな」
アル君の家の前で別れを告げた私は彼が玄関に向かって歩くのを唯見詰めていた。
本当にこのまま帰らせて良いのかな?……なんだろう、何故かアル君が何処かへ行ってしまいそうな気がする。そう思い気付いたらアル君を呼び止めていた。
「あ、アル君っ!!」
「ん?……どうした?」
ど、どうしよう咄嗟に声掛けたせいで何話せば良いか分かんないよぉ~…………アル君『文無し』になっちゃったけど、それでも明日から一緒に学園に行くよね?
「何が?」
また声に出しちゃってたよ………でも良いや、このまま聞いちゃえ!
「明日から!……私と一緒に…学園に行くよね!?」
「…………あぁ、勿論行くよ」
「…本当に?」
「あぁ、本当だ」
「っ!?じゃ、じゃあまた明日起こしにくるからね!?絶対だからね!?………また明日!」
アル君の口から学園に行くと聞けたことが嬉しかったのか、リーベルの街に着くまで重かった足取りも今は少し軽くなり自分の家まで走りながら帰った。
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