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ヴァルシャ帝国編

盗賊?

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「やっぱりあるんだな、こう言う展開………」

 やはりと言うべきか、想像した通りそこでは異世界モノのテンプレ的事態が起きていたのだ―――そう、馬車に乗る商人と数人の護衛が盗賊に襲われていると言う事態が―――。

「どうするのだ?」
「どうするも何も助ける他ないだろ……」

 盗賊の数は数えたところ、ざっと十人ほどであった。中でもその身にまとう雰囲気や研ぎ澄まされた殺気などが一線を画している者が五人おり、気になった俺は、其奴らのステータスを【技能】《観察眼》で確認してみる。



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 ガガルギウス(人間) Lv59

  【体力】5735

  【魔力】5735


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 リティークセオ(人間) Lv54

  【体力】5210

  【魔力】5210


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 フォートリオ(人間) Lv54

  【体力】5315

  【魔力】5315


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 ブラッシュアブー(人間) Lv52

  【体力】5105

  【魔力】5105


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 カスティーン(人間) Lv50

  【体力】4936

  【魔力】4936


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「レベル50代か……って事は、他の奴はそれ以下だな」
「何をそんなに慎重になる必要があるのだ。妾たちは、あの迷宮で何度もの修羅場を潜り抜けたのだ。今更盗賊如き、大した事ないのだ」
「いや、別に慎重になってたつもりは無いんだが。ただ、ちょっと気になることがあったから調べてただけだ。…まぁでもリリムの言う通り大した事ないな。……って事で彼奴らは俺一人で相手する。リリムは、俺以外に見られないように霊体化しててくれ!」
「うむ、わかったのだ!」











 ♢♢♢♢♢♢












 ♢とある行商人の護衛

 俺の名前は、ロッソ。
 幼馴染のヴェルドゥラ 、ヴェルデ、アルジェンドと共にパーティーを組んで、ヴァルシャ帝国を拠点として活動している、しがない冒険者だ。

 今日も今日とて冒険者として依頼を受けている。

 今回受けた依頼の内容は、隣国アルカナ王国の王都ルシアスまでの護衛で先程国境を越えてアルカナ王国に入国したところだ。

 それから数時間―――。

「はい、これで上がり」
「あ゛ぁぁ負けたぁぁ!」
「くそっ!後ちょっとだったのに!」
「アルジェすごーい!」

 最初はしっかり護衛として周りを警戒していたが、ここまで何事も無かったから今ではこうして《六勇者》の一人、ジャック・A・ハインツが発案したトランプと呼ばれているハート、ダイヤ、スペード、クローバーのマークがついたカードがそれぞれ十三枚とジョーカーと呼ばれるカードが一枚で計五十三枚からなるカードゲームで遊んでいた。

 トランプには色々な遊び方があり、次は何よしようかなと互いに意見を出し合っていた。そんな次の瞬間―――。

「うおっ!?」
「きゃっ!」
「な、なんだ!?」

 馬車を引いている馬の、まるで焦りとも取れる鳴き声と同時に俺たちの身体が大きく揺さぶられた。
 馬車が急停止したのだ。

「どうしたおっさん!?」

 俺は、御者席に腰掛けている、今回の依頼主である行商人のおっさんにどうしたのかと自体の説明を求めた。

「と、盗賊です!」

 最悪の返答だ。

 ここまで何事も無かったから大丈夫だろう、簡単な依頼だなと高を括っていたところでまさかの盗賊に遭遇するとは……。

 そういえば道中、おっさんを混ぜてみんなで話に花を咲かせていた時、おっさんが言ってたな。確かこう言うのをフラグだっけ?なんかそれを折るとか。まぁどうでもいいか。兎に角馬車を降りないと!

「マジかよ」
「ついてないわね私たち…」
「もーさいあく~」
「くそっ!」

 馬車を降りると其処には、十人ほどの盗賊たちが馬車の周りを囲っていたのだった。こうして俺たちは、盗賊との戦いを強いられるのであった。





 ♢




「はぁ…はぁ…はぁ」
「どうなってるの!?」
「あり得ない強過ぎ…」
「本当にこいつら盗賊かよ!?」

 盗賊と戦い始めてから十分以上は経った。

 今まで何度も盗賊と戦ったことがあるがここまで時間が掛かっているのは今回が初めてだ。しかも未だ決着がつかず、少しこちら側が押されている状態だ。原因は盗賊たちの中に五人程、変な奴らが混じっていたからだ。其奴らは、盗賊とは思えない連携や身のこなしで俺たちを翻弄していた。

「奥義!《いっ―――」

 兎に角この現状を打破すべく大技を仕掛けようとした刹那、ヴェルデが危機迫る感じで俺の名前を呼びながら叫ぶ。

「ロッソ危ない!」
「え?」

 くそっ!いつの間に背後に―――!?

「ぐはぁっ!」

 俺は咄嗟に回避しようとするも間に合わず、その身に攻撃を受けてしまう。

 そして続けざまに盗賊の持つ剣が振り下ろされる。

「ロッソ!―――もうっ!邪魔よアンタ達!」

 盗賊の振り下ろした鋭利な刃がトドメを刺さんと言わんばかりに迫って来る。

 もはやヴェルデの助けも間に合わない。そう思い俺は目を瞑り死を覚悟する……がいつまで経っても死が顔をのぞかせることはなかった。そして―――

「がはぁっ!」

 それは俺から発せられたモノでは無く、今まさに俺を斬りかかろうとしていた盗賊によるモノだった。

 恐る恐る目を開けてみると其処には、左胸の心臓がある所から黒い棒状の物を生やして息絶えている盗賊とそれを殺ったであろう黒い衣を身に纏った長髪の人がいた。

「貴様!何者だ!?」
「通りすがりのかめ....正義の味方だ!覚えとけ!」

 男?いや、女か?でも男の声をしていたような……うーん、わからん!取り敢えず男って事で。

 男は盗賊から黒い棒状の物を抜くと、こちらを見向きもせず、残りの盗賊の方に向かって駆け出した。


 そこからはまるで、獲物を狩る獅子の如く圧倒的な戦いであった。
 俺たちがまるで歯が立たなかった例の五人も、その男の前では成すすべなかった。
 男は盗賊たちを、まるで子供を相手しているかのようにあしらっていた。
 それから盗賊たちが地に伏せるまで十分もかからなかった。

 ……いや強くね?
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