ラグジュアリーシンデレラ

日下奈緒

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第5話 一人占めしたい

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家に帰って来てから、青志の様子がおかしかった。

「どうしたのよ。」

「別に。」

聞いても、何も答えない。

「何も言ってくれなきゃ、分からないでしょ。」

青志はちらっと、私の方を見た。


「じゃあ、言わせてもらうけれど。」

青志は、髪をぐしゃぐしゃにした。

「あの人は、姉ちゃんに合わないと思う。」

「あの人って、林人さんの事?」

「そう。」

私は落ち着いて、青志の隣に座った。

「どういうところが?」

「あの人、俺達の事、見下してるでしょ。」

「そんな事ないわよ。」

「いいや、あるね。」

青志はそう言うと、テレビの電源を着けた。

「それに、身分が違い過ぎるよ。」

「それは……」

それは、私が一番気にしている部分なのに。

「あの人、御曹司だって言ってたじゃん。御曹司だったら、結婚相手も社長令嬢だって、決まってるよ。」

「えっ……」

「よくある話だろ。政略結婚ってヤツ。」

私は何も、答えられなかった。

「姉ちゃんには、もっといい人が現れると思う。」

「そんな事言ったって。他にいないわよ。」

「いるよ。これから見つかるって。とにかく、あの人とは反対。」

あんなに恋愛に関して、背中を押してくれた青志が、林人さんの事は反対だなんて。

林人さんと、会わせなきゃ、よかったかな。


青志に言われた事、仕事中にもふと、思い出してしまった。

「手が止まってるよ。」

「斉藤さん。」

そう言えば斉藤さんは、林人さんの事、背中を押してくれたけれど、御曹司だって言ったら、どう思うのだろう。

「何か悩みがあるんだったら、言ってごらん。」

「仕事での悩みではないんです。」

「あら、私の悩み相談は、オールマイティーだよ。」

斉藤さんは、明るいな。

私も見習いたい。

「……この前、井出さんに弟を合わせたんです。」

「おっ!それで?」

「あの人はダメだって、反対されたんです。」

「あら。」


斉藤さんに言ってみると、堰を切ったように言葉が出てきた。

「井出さん、井出グループっていう大きな不動産の御曹司みたいで。身分違いだって。結婚相手も政略結婚で決まっているって。」

「それで?もう社長の事、諦めるの?」

私は、ううんと首を横に振った。

「それでいいじゃない。社長を信じて、前に進むだけだよ。」

斉藤さんは、ニコニコ笑っている。


「もしかして、斉藤さんも同じような恋愛を?」

「私が?ない。」

私の足がガクッとなった。

「でも恋愛なんて、皆そんなものじゃない。相手に似合うかどうか、いつも気にして。」

そうだ。

たぶん、相手が林人さんじゃなくても、青志は私に似合うかどうか、言ってきただろう。

「負けちゃ駄目よ。どうせ結婚すれば、弟さんだって分かってくれるわよ。」

「そう……ですよね。」

そう言うと、斉藤さんはニヤニヤしている。

「そう答えるって事は、もう結婚の話、出てるの?」

「えっ、いやっ!」

「気が早いね、社長さんも。」

少なくても、斉藤さんは喜んでくれている。林人さんとの事。

1人でも味方がいれば、やっていけるよね。

よし!頑張らなきゃ。


「結野ちゃん、早速来たよ。」

斉藤さんが指さす方向には、林人さんがいた。

私に気づいて、手を挙げてくれる。

「さて、邪魔者は消えようか。」

斉藤さんは、ニヤニヤしながら、次の仕事に行った。

「結野。お疲れ様。」

「お疲れ様です。」

まずは、この前の青志の事、謝らなきゃと思った。

「林人さん、この前の青志の失礼な態度、ごめんなさい。」

「全然。姉思いの部分が伝わって来て、こんなにも弟さんに想われているなら、もっと結野を大切にしようと思ったよ。」

「り、林人さん……」

また恥ずかしい事を、ズバズバと。

「それよりもどうだった?帰った後青志君、俺の事何か言っていた?」

「それが……」

言っていいものか、分からない。

でも、林人さんとの間に、隠し事なんて嫌だ。

「……青志に、反対されたんです。」

「反対?俺との事?」

「はい。御曹司だったら、政略結婚で結婚相手が決まってるはずだって。」

林人さん、困っている。

やっぱりそうなのかな。

「正直、そういう話も出ているけれど、全部断っているから。」

私は、林人さんを真っすぐ見た。

「今は、結野しか見てないよ。俺。」


ああ、キスしたい。

イチャイチャしたい。

林人さんに、ぎゅっと抱きしめて貰いたい。


「結野、やばいって。」

「えっ?」

「そんなエロい目で見られたら、俺、我慢できなくなる。」

かぁーっと、顔が熱くなる。

「ちょっと、こっちに来てくれる?」

「はい?」
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