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その瞳の奥に、恋を落とした夜
①
また来た、と思った。
朝のオフィス、席に着くと同時に隣から声をかけてくる、あの子犬みたいな男。
桐谷悠真、27歳。
入社して4年目の営業部の後輩。
仕事はできるし、明るくて誰にでも優しい。
女子社員に人気があるのも納得だけど──なぜか、私ばかりをターゲットにしてくる。
「神崎先輩、今日も髪、ツヤツヤですね。何使ってるんですか? 教えてください」
「それ聞いてどうするの。使わないでしょ、あなた」
「先輩のこと知りたいんですってば」
軽口に返す声も、冗談みたいに笑ってる顔も、何もかもがまぶしい。
まぶしすぎて、見てると苦しくなる。
だから私は、なるべく冷たくあしらうようにしていた。
「私に構わないで。仕事に集中したら?」
「してますって。でも、仕事の前に、先輩チャージも必要なんですよ。」
まるで懲りる様子はない。
それどころか、どんどん距離を詰めてくる。
ランチを誘われれば「忙しいから」と断り、飲み会の帰り道で「送りますよ」と言われれば「必要ない」と言ってタクシーに乗った。
それでも翌朝、デスクには私の分のコーヒーが置かれていたりするから、彼のしつこさと優しさの両方に、こっちがまいる。
──でも。
最近、ふと思うことがある。
こんな風に何かを続けられたの、いつぶりだろう。
誰かの視線に、毎日、心が揺れるのは。
「神崎先輩、週末空いてますか?」
「……なに?またお誘い?」
「はい。おいしいパスタの店見つけたんです。もしよかったら、一緒にどうかなって。」
「……やめとく。私、そういうの興味ないから。」
「……そっか。」
さすがに少し傷ついた顔をした彼に、胸がチクリとした。
私、言いすぎたかな。
でも、これ以上近づいたら、きっと私は自分を保てない。
「誰かを好きになるのが怖い」なんて、今さら口にできる年でもない。
ふと見ると、悠真はいつもの笑顔に戻っていた。
「じゃあ、また今度、誘わせてください」
その一言が、優しすぎて。
困ったように、私は小さくため息をついた。
彼の笑顔の奥にあるもの──
あれが本気だと、どうして分かってしまうんだろう。
朝のオフィス、席に着くと同時に隣から声をかけてくる、あの子犬みたいな男。
桐谷悠真、27歳。
入社して4年目の営業部の後輩。
仕事はできるし、明るくて誰にでも優しい。
女子社員に人気があるのも納得だけど──なぜか、私ばかりをターゲットにしてくる。
「神崎先輩、今日も髪、ツヤツヤですね。何使ってるんですか? 教えてください」
「それ聞いてどうするの。使わないでしょ、あなた」
「先輩のこと知りたいんですってば」
軽口に返す声も、冗談みたいに笑ってる顔も、何もかもがまぶしい。
まぶしすぎて、見てると苦しくなる。
だから私は、なるべく冷たくあしらうようにしていた。
「私に構わないで。仕事に集中したら?」
「してますって。でも、仕事の前に、先輩チャージも必要なんですよ。」
まるで懲りる様子はない。
それどころか、どんどん距離を詰めてくる。
ランチを誘われれば「忙しいから」と断り、飲み会の帰り道で「送りますよ」と言われれば「必要ない」と言ってタクシーに乗った。
それでも翌朝、デスクには私の分のコーヒーが置かれていたりするから、彼のしつこさと優しさの両方に、こっちがまいる。
──でも。
最近、ふと思うことがある。
こんな風に何かを続けられたの、いつぶりだろう。
誰かの視線に、毎日、心が揺れるのは。
「神崎先輩、週末空いてますか?」
「……なに?またお誘い?」
「はい。おいしいパスタの店見つけたんです。もしよかったら、一緒にどうかなって。」
「……やめとく。私、そういうの興味ないから。」
「……そっか。」
さすがに少し傷ついた顔をした彼に、胸がチクリとした。
私、言いすぎたかな。
でも、これ以上近づいたら、きっと私は自分を保てない。
「誰かを好きになるのが怖い」なんて、今さら口にできる年でもない。
ふと見ると、悠真はいつもの笑顔に戻っていた。
「じゃあ、また今度、誘わせてください」
その一言が、優しすぎて。
困ったように、私は小さくため息をついた。
彼の笑顔の奥にあるもの──
あれが本気だと、どうして分かってしまうんだろう。
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