10のベッドシーン【R18】

日下奈緒

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その瞳の奥に、恋を落とした夜

また来た、と思った。

朝のオフィス、席に着くと同時に隣から声をかけてくる、あの子犬みたいな男。

桐谷悠真、27歳。

入社して4年目の営業部の後輩。

仕事はできるし、明るくて誰にでも優しい。

女子社員に人気があるのも納得だけど──なぜか、私ばかりをターゲットにしてくる。

「神崎先輩、今日も髪、ツヤツヤですね。何使ってるんですか? 教えてください」

「それ聞いてどうするの。使わないでしょ、あなた」

「先輩のこと知りたいんですってば」

軽口に返す声も、冗談みたいに笑ってる顔も、何もかもがまぶしい。

まぶしすぎて、見てると苦しくなる。

だから私は、なるべく冷たくあしらうようにしていた。

「私に構わないで。仕事に集中したら?」

「してますって。でも、仕事の前に、先輩チャージも必要なんですよ。」

まるで懲りる様子はない。

それどころか、どんどん距離を詰めてくる。

ランチを誘われれば「忙しいから」と断り、飲み会の帰り道で「送りますよ」と言われれば「必要ない」と言ってタクシーに乗った。

それでも翌朝、デスクには私の分のコーヒーが置かれていたりするから、彼のしつこさと優しさの両方に、こっちがまいる。

──でも。

最近、ふと思うことがある。

こんな風に何かを続けられたの、いつぶりだろう。

誰かの視線に、毎日、心が揺れるのは。

「神崎先輩、週末空いてますか?」

「……なに?またお誘い?」

「はい。おいしいパスタの店見つけたんです。もしよかったら、一緒にどうかなって。」

「……やめとく。私、そういうの興味ないから。」

「……そっか。」

さすがに少し傷ついた顔をした彼に、胸がチクリとした。

私、言いすぎたかな。

でも、これ以上近づいたら、きっと私は自分を保てない。

「誰かを好きになるのが怖い」なんて、今さら口にできる年でもない。

ふと見ると、悠真はいつもの笑顔に戻っていた。

「じゃあ、また今度、誘わせてください」

その一言が、優しすぎて。

困ったように、私は小さくため息をついた。

彼の笑顔の奥にあるもの──

あれが本気だと、どうして分かってしまうんだろう。

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