10のベッドシーン【R18】

日下奈緒

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卒業しても、好きでした

「送りますよ、駅まで」

同窓会の二次会が解散となり、ちらほらと帰路に着く人々の中で、私はふと振り返った。

すると、彼――高橋先生が、少し離れた場所で手を振っていた。

「大丈夫ですよ、一人で帰れますから」

「そりゃそうだろうけど。夜道だし、心配するくらいは、まだ先生させてくれよ」

苦笑混じりの声に、思わず口元が緩む。

変わらない。

あの頃と同じ、でも少しだけやわらかくなった笑顔。

「……じゃあ、お言葉に甘えて」

ふたり並んで歩く夜道。

会場の近くの並木道は、少し湿った空気と街灯の光に包まれていた。

「今日は、楽しかったですね」

「うん。懐かしかったよ。みんなずいぶん変わってたけど……佐伯は、あんまり変わってないな」

「それ、どういう意味ですか?」

「いい意味で。目の奥にあるものが、当時のままだなって」

彼の言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

そういうところ。

ずっと、ずるいなって思ってた。

「先生って、あの頃からそういうとこ、変わらないですよね」

「そういうとこ?」

「……優しすぎるところ」

彼は、少し黙ってから歩調をゆるめた。

私も無意識に、距離を詰めていたのかもしれない。

「あの頃、先生のことが……好きだったんです。たぶん」

空気が静かになった。夜の冷たさと、心の中の熱とが交差する。

彼は立ち止まり、こちらを見つめた。

「たぶん、って何だ?」

「本当は“今も”って言いたいけど、それはずるいから」

小さく笑った。酔いがほんのり残っていたのもあって、口が軽くなっていたのかもしれない。

けれど、後悔はなかった。

ずっと胸にしまっていた言葉を、ようやく口にできた気がした。

「……困らせました?」

「いや……ちょっと驚いただけだ」

彼は歩き出す。私は、その隣に並ぶ。

「高校生の君に言われたら、全力で拒否したと思う。でも……今の君なら」

その言葉の続きを、私は聞けなかった。

なぜなら、彼がふと、私の肩を引き寄せてきたから。

ほんの少し。

その仕草は、恋人のようでも、保護者のようでもなくて。

「佐伯」

「……はい」

「今日のことは、忘れないでくれ」

「……先生も?」

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