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卒業しても、好きでした
②
「送りますよ、駅まで」
同窓会の二次会が解散となり、ちらほらと帰路に着く人々の中で、私はふと振り返った。
すると、彼――高橋先生が、少し離れた場所で手を振っていた。
「大丈夫ですよ、一人で帰れますから」
「そりゃそうだろうけど。夜道だし、心配するくらいは、まだ先生させてくれよ」
苦笑混じりの声に、思わず口元が緩む。
変わらない。
あの頃と同じ、でも少しだけやわらかくなった笑顔。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
ふたり並んで歩く夜道。
会場の近くの並木道は、少し湿った空気と街灯の光に包まれていた。
「今日は、楽しかったですね」
「うん。懐かしかったよ。みんなずいぶん変わってたけど……佐伯は、あんまり変わってないな」
「それ、どういう意味ですか?」
「いい意味で。目の奥にあるものが、当時のままだなって」
彼の言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
そういうところ。
ずっと、ずるいなって思ってた。
「先生って、あの頃からそういうとこ、変わらないですよね」
「そういうとこ?」
「……優しすぎるところ」
彼は、少し黙ってから歩調をゆるめた。
私も無意識に、距離を詰めていたのかもしれない。
「あの頃、先生のことが……好きだったんです。たぶん」
空気が静かになった。夜の冷たさと、心の中の熱とが交差する。
彼は立ち止まり、こちらを見つめた。
「たぶん、って何だ?」
「本当は“今も”って言いたいけど、それはずるいから」
小さく笑った。酔いがほんのり残っていたのもあって、口が軽くなっていたのかもしれない。
けれど、後悔はなかった。
ずっと胸にしまっていた言葉を、ようやく口にできた気がした。
「……困らせました?」
「いや……ちょっと驚いただけだ」
彼は歩き出す。私は、その隣に並ぶ。
「高校生の君に言われたら、全力で拒否したと思う。でも……今の君なら」
その言葉の続きを、私は聞けなかった。
なぜなら、彼がふと、私の肩を引き寄せてきたから。
ほんの少し。
その仕草は、恋人のようでも、保護者のようでもなくて。
「佐伯」
「……はい」
「今日のことは、忘れないでくれ」
「……先生も?」
同窓会の二次会が解散となり、ちらほらと帰路に着く人々の中で、私はふと振り返った。
すると、彼――高橋先生が、少し離れた場所で手を振っていた。
「大丈夫ですよ、一人で帰れますから」
「そりゃそうだろうけど。夜道だし、心配するくらいは、まだ先生させてくれよ」
苦笑混じりの声に、思わず口元が緩む。
変わらない。
あの頃と同じ、でも少しだけやわらかくなった笑顔。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
ふたり並んで歩く夜道。
会場の近くの並木道は、少し湿った空気と街灯の光に包まれていた。
「今日は、楽しかったですね」
「うん。懐かしかったよ。みんなずいぶん変わってたけど……佐伯は、あんまり変わってないな」
「それ、どういう意味ですか?」
「いい意味で。目の奥にあるものが、当時のままだなって」
彼の言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
そういうところ。
ずっと、ずるいなって思ってた。
「先生って、あの頃からそういうとこ、変わらないですよね」
「そういうとこ?」
「……優しすぎるところ」
彼は、少し黙ってから歩調をゆるめた。
私も無意識に、距離を詰めていたのかもしれない。
「あの頃、先生のことが……好きだったんです。たぶん」
空気が静かになった。夜の冷たさと、心の中の熱とが交差する。
彼は立ち止まり、こちらを見つめた。
「たぶん、って何だ?」
「本当は“今も”って言いたいけど、それはずるいから」
小さく笑った。酔いがほんのり残っていたのもあって、口が軽くなっていたのかもしれない。
けれど、後悔はなかった。
ずっと胸にしまっていた言葉を、ようやく口にできた気がした。
「……困らせました?」
「いや……ちょっと驚いただけだ」
彼は歩き出す。私は、その隣に並ぶ。
「高校生の君に言われたら、全力で拒否したと思う。でも……今の君なら」
その言葉の続きを、私は聞けなかった。
なぜなら、彼がふと、私の肩を引き寄せてきたから。
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