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第4章 秘密の寝所 ①
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夜、景文が仕事から戻った。
玄関で出迎えた私を見て、彼はなぜかきょとんとした顔をしていた。
「……どうした?」
「……その。」
私は少しだけ視線を逸らしてから言った。
「ここに、置いてってくれるって言ったけど……私の意思で置いてもらいたいの。」
景文は数秒の沈黙のあと、ふっと笑った。
「……ああ。」
その短い返事に、全部わかってると言われたような気がして、私は胸の奥が少しだけあたたかくなるのを感じた。
そのままふたりで、いつもの食事処へ。
座って膳を並べていると、景文がふと話題を切り出した。
「そういえば、翠蘭がいなくなった件だけどな。」
「……う、うん。」
急に現実に引き戻される。
後宮では、さぞ大騒ぎになっているはず――そう思っていた。
「――あっけなく、行方不明で終わった。」
「……えっ⁉」
思わず声が上ずる。
「……ただの、行方不明⁉」
「うん。あれこれ探しはしたみたいだけど、後宮の中にはいなかったし、宮殿の外にまで手を伸ばす前に、報告が上がってこなくなった」
「そ、そんな……」
私がいなくなっても、**あっけなく“消えた妃”**として処理されてしまったというの?
景文は少しだけ真顔になって言った。
「――後宮は、失われた妃を追う場所じゃない。新たに迎える場所だからな。」
冷たい現実だった。
けれど、それが今の私の居場所を、より確かにしてくれた気がした。
湯船から上がったあと、私はふと――困った。
「……寝る場所が、ない。」
寝殿も後宮もない。
ここには、私専用の部屋があるわけでもない。
思い返せば、この屋敷に来てから眠ったのは、あの一夜限りの、景文の寝所だけだった。
でも――
私たちは夫婦でも、恋人でもない。
そんな私が、また彼の寝所に入るなんて……。
湯上がりの髪を手ぬぐいで押さえながら廊下をうろうろしていると、ちょうど同じく湯から出てきた景文と鉢合わせた。
「……どうした?」
濡れた髪を無造作に結い上げた彼は、薄い浴衣姿で、湯気のように落ち着いた雰囲気だった。
「……ああ、その。」
私は気まずそうに笑って、視線を逸らす。
「どこで寝たらいいのか分からなくて」
言った瞬間、頬がほんのり熱くなる。
すると景文は無言でこちらを見つめ、ふと身を翻し、自分の寝所の扉をそっと開けた。
「寝所はここだが?」
景文が開けた寝所の扉の向こうには、見覚えのある寝台が静かに佇んでいた。
私は一歩、後ずさった。
「こ、ここって……あなたの寝所でしょう?」
「――そなたの寝所でもある。」
そのまっすぐな返答に、頬が一気に熱を帯びた。
「だ、だって……」
思わずもじもじと足を動かしてしまう。
「夫婦でもない男女が、一緒に寝るなんて……」
言い終えるか終えないかのうちに――
玄関で出迎えた私を見て、彼はなぜかきょとんとした顔をしていた。
「……どうした?」
「……その。」
私は少しだけ視線を逸らしてから言った。
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景文は数秒の沈黙のあと、ふっと笑った。
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「……えっ⁉」
思わず声が上ずる。
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「――後宮は、失われた妃を追う場所じゃない。新たに迎える場所だからな。」
冷たい現実だった。
けれど、それが今の私の居場所を、より確かにしてくれた気がした。
湯船から上がったあと、私はふと――困った。
「……寝る場所が、ない。」
寝殿も後宮もない。
ここには、私専用の部屋があるわけでもない。
思い返せば、この屋敷に来てから眠ったのは、あの一夜限りの、景文の寝所だけだった。
でも――
私たちは夫婦でも、恋人でもない。
そんな私が、また彼の寝所に入るなんて……。
湯上がりの髪を手ぬぐいで押さえながら廊下をうろうろしていると、ちょうど同じく湯から出てきた景文と鉢合わせた。
「……どうした?」
濡れた髪を無造作に結い上げた彼は、薄い浴衣姿で、湯気のように落ち着いた雰囲気だった。
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「どこで寝たらいいのか分からなくて」
言った瞬間、頬がほんのり熱くなる。
すると景文は無言でこちらを見つめ、ふと身を翻し、自分の寝所の扉をそっと開けた。
「寝所はここだが?」
景文が開けた寝所の扉の向こうには、見覚えのある寝台が静かに佇んでいた。
私は一歩、後ずさった。
「こ、ここって……あなたの寝所でしょう?」
「――そなたの寝所でもある。」
そのまっすぐな返答に、頬が一気に熱を帯びた。
「だ、だって……」
思わずもじもじと足を動かしてしまう。
「夫婦でもない男女が、一緒に寝るなんて……」
言い終えるか終えないかのうちに――
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