お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました 【完結】

日下奈緒

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第6章 寵を知ってしまった妃 ③

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景文は、私の肩を抱き寄せる。

「これからは、俺がずっと、君の味方だ。」

やさしい温もりに包まれながら、私は静かに涙を流した。

こんなにも心が救われる日が来るなんて――夢のようだった。

それから――景文の溺愛は、嵐のように始まった。

「ん……ああ、景文……もう……」

まだ陽が高く天に昇っているというのに、私は彼の腕の中で何度も甘く震えていた。

「まだだよ、翠蘭。……君が足りないんだ。」

景文の声は低く掠れて、どこまでも熱を帯びていた。

何度重ねた肌なのに、彼の欲望は尽きることを知らず、私の深くまで、愛を刻みつけてくる。

「んんっ……あっ……ああっ……!」

指先が、舌が、熱が――全てが私を求めてくる。

恥ずかしいくらいに、私の奥底まで、彼の愛が注がれていく。

「……君が、あの男に奪われたと思うと……」

「景文……」

「何度でも、俺のものだって……教えなきゃ……」

その言葉とともに、景文がさらに深く突き上げた。

「ああっ、もう……っ、だめ……!」

快楽に慣れた身体が、容赦ない愛撫に敏感に反応してしまう。

何度も、何度も、頂きに昇っては落ち、また高みへと連れて行かれる。

「翠蘭……美しい……君が壊れるまで、俺のものにしたい。」

その囁きは甘く、狂おしいほどに私の心を揺さぶる。

「んっ……景文……愛してる……」

「俺もだ。……何があっても、君を離さない。」

唇が重なる。深く、甘く、溺れるほどに。

愛と欲望の境界線が、もうどこにも見えない。

――この人に抱かれている限り、私はきっと幸せだ。

そう思えるほどに、私の身体も心も、景文のものになっていった。

そして、何度かの情熱を交わした後――私は心地よい疲労と幸福感に包まれて、景文の寝台で眠っていた。

「景文殿。……王景です。」

低く、品のある声が扉越しに聞こえた。

寝所の空気が、ひやりと引き締まる。

「……ああ、すみません。今、人がいますので。」

慌てて寝衣を整えた景文が、静かに立ち上がり、扉を開けた。

すると、そこに現れたのは――威厳と優しさを兼ね備えた、一人の壮年の男だった。

その男は、景文の姿を一目見るなり、ふっと目を細め、そして扉の敷居の前に静かに膝をついた。

――この人が。
景文を育てた、父とも言える存在。
刺青をもつ子――皇帝陛下の落胤である景文を、血縁ではないのに引き取り、育ててくれた恩人だという。

「その方が、陛下の妃だという――翠蘭様か。」

王景の声が静かに響く。

私は寝台の中で、思わず息を殺して寝ているふりをした。

微かにまぶたを伏せたまま耳を澄ませる。

「……はい、父上。」

景文の声が応える。

その言葉に、胸がきゅっと痛んだ。

――父上。

陛下ではなく、王景殿を“父”と呼ぶその声が、どこか切なくて、遠く感じた。
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