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第9章 初めての春 ③
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そう言って笑うと、王景殿も口元を緩めた。
「その様子なら、心配はなさそうだな。……景文の顔を見ても、ようやく安心できた。」
私の隣に立つ景文が、「まったく」と肩をすくめる。
「突然、俺に向かって“何かあったのか”と詰め寄って来たんだ。――まぁ、ありがたいことだけどな。」
王景殿はふっと息をついた。
「沈妃が倒れたと聞いて、いてもたってもいられなかったのだ。」
その真っ直ぐな瞳に、私は思わず微笑んだ。
「……すみません、ご心配をおかけして。」
「うむ。しかし、どうも気になるな。咳や熱は?」
「いえ、ただ……朝になると、どうしても気分が悪くて……」
すると、王景殿の瞳が一瞬鋭くなった。
「沈妃、それは……ひょっとして、身に宿されたのでは?」
「えっ……?」
目を瞬かせた私の横で、景文の表情も固まった。
「……子だ。」
王景殿はゆっくりと頷いた。
薬部の医師が、慎重に私の脈を取り終え、顔を上げる。
「……月のモノも来ていない、吐き気、そしてこの脈拍の乱れ。すべてが整っています。ご懐妊とみて、よろしいかと存じます。」
その言葉に、私は目を丸くしたあと、すぐに隣の景文を見た。
「……本当に? 私……」
景文も一瞬目を見開いたが、次の瞬間、ぱっと笑顔を咲かせた。
「そうか……! 翠蘭……俺たちの子が……!」
「うん……!」
思わず二人で顔を見合わせ、ぱちん、と手を打ち合わせる。
拍手をするというより、気持ちが溢れて自然と重なった、そんな喜びの音だった。
「俺も、父親になるのか……」
景文の声には、喜びと戸惑い、そして何より深い感慨がこもっていた。
すると――その様子を襖の外でこっそり見ていた王景殿が、思わず中に入ってきた。
「……よかった! よかったぞ、景文!」
そう言って、彼はまっすぐ景文の元へ歩み寄り、その肩を強く叩いた。
「お前が父親か……ふふ、歳をとったな、私も。」
「ありがとうございます、王景殿。」
景文の顔には、少年のような笑みが浮かんでいた。
王景殿の目が少し潤んでいるのを見て、私はそっと微笑む。
――王景殿は、本当に景文を息子のように思っているのね。
それは血のつながりではない。けれども、情の深さは、それ以上のもので――
「きっと、良い父親になります。」
私がそう言うと、王景殿は頷いた。
「間違いない。……それに、君が母になるなら、なおさらだ。」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
私たちの新しい物語が、静かに、そして力強く始まろうとしていた。
そして、あっという間に十月十日が流れた――。
幾度かの波を超えて、私はついに産声を聞いた。
「――あぎゃあああ!」
産室に響く、元気な産声。それは命のはじまりの音だった。
「はいはい、元気のいい男の子ですよ。」
取り上げた女官が、まだ血のぬくもりの残る赤子をそっと私の胸元に乗せてくれる。
「その様子なら、心配はなさそうだな。……景文の顔を見ても、ようやく安心できた。」
私の隣に立つ景文が、「まったく」と肩をすくめる。
「突然、俺に向かって“何かあったのか”と詰め寄って来たんだ。――まぁ、ありがたいことだけどな。」
王景殿はふっと息をついた。
「沈妃が倒れたと聞いて、いてもたってもいられなかったのだ。」
その真っ直ぐな瞳に、私は思わず微笑んだ。
「……すみません、ご心配をおかけして。」
「うむ。しかし、どうも気になるな。咳や熱は?」
「いえ、ただ……朝になると、どうしても気分が悪くて……」
すると、王景殿の瞳が一瞬鋭くなった。
「沈妃、それは……ひょっとして、身に宿されたのでは?」
「えっ……?」
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「……子だ。」
王景殿はゆっくりと頷いた。
薬部の医師が、慎重に私の脈を取り終え、顔を上げる。
「……月のモノも来ていない、吐き気、そしてこの脈拍の乱れ。すべてが整っています。ご懐妊とみて、よろしいかと存じます。」
その言葉に、私は目を丸くしたあと、すぐに隣の景文を見た。
「……本当に? 私……」
景文も一瞬目を見開いたが、次の瞬間、ぱっと笑顔を咲かせた。
「そうか……! 翠蘭……俺たちの子が……!」
「うん……!」
思わず二人で顔を見合わせ、ぱちん、と手を打ち合わせる。
拍手をするというより、気持ちが溢れて自然と重なった、そんな喜びの音だった。
「俺も、父親になるのか……」
景文の声には、喜びと戸惑い、そして何より深い感慨がこもっていた。
すると――その様子を襖の外でこっそり見ていた王景殿が、思わず中に入ってきた。
「……よかった! よかったぞ、景文!」
そう言って、彼はまっすぐ景文の元へ歩み寄り、その肩を強く叩いた。
「お前が父親か……ふふ、歳をとったな、私も。」
「ありがとうございます、王景殿。」
景文の顔には、少年のような笑みが浮かんでいた。
王景殿の目が少し潤んでいるのを見て、私はそっと微笑む。
――王景殿は、本当に景文を息子のように思っているのね。
それは血のつながりではない。けれども、情の深さは、それ以上のもので――
「きっと、良い父親になります。」
私がそう言うと、王景殿は頷いた。
「間違いない。……それに、君が母になるなら、なおさらだ。」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
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「はいはい、元気のいい男の子ですよ。」
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