社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

文字の大きさ
79 / 105
第21話 彼女に会わないで

しおりを挟む
「週末……」

週末はいつも、私と会っていたのに。

「心配するなって。礼奈は、平日でも会えるだろう。」

「えっ……」

信一郎さんはおもむろに、キーホルダーから一つの鍵を取り出した。

「俺の家の鍵。」

「……合い鍵って事?」

「そう。」

私の手の平に入る小さな鍵。

それが、信一郎さんとの、大きな未来を握っている。

「平日はこれを使って、俺の家においで。」

「うん。」

私は、信一郎さんに抱き着いた。

「ありがとう、信一郎さん。」


この合い鍵のおかげで、元気が出た。

私は信一郎さんを信じているし、信一郎さんも私を愛してくれている。

それに嘘はなくて。

きっと、信一郎さんなら、芹香が納得する諦め方を、探してきてくれると思う。


「上手くいくといいね。」

「ああ。」

私は信一郎さんの温かさに、酔いしれていた。

そして、週末。

そうは言っても、どうしても心配で仕方がない。

私は二人に内緒で、デートについて行く事にした。


また芹香の家に張り付いて、彼女が出てくるのを待った。

もうこうなったら、探偵みたいなものだ。

そして、芹香が家から出て来た。

白いワンピース。清楚系のお嬢様に見える。

もしかして、信一郎さんは清楚系の私を気に入ってくれたって、私が話したから?

信一郎さんに、気に入られようとしている?


案の定、沢井家の車に乗った。

私も手配していたタクシーに乗って、その車を追いかけた。


車は中心街に向かって行く。

結構、お金持ちが集まるお店が多い場所だ。

こんなところ、信一郎さんが場所を決めたのかな。

だとしたら、ちょっと傷つく。

私の時には、こんな場所、来た事ないのに。


そして車は、あるお店の前に停まった。

中から芹香が出て来て、お店の中に入った。

私も後から、気づかれないようにお店の中に入って行く。

「芹香さん。」

「黒崎さんっ!」

芹香は、まるで彼女のように、信一郎さんに近づいて行った。

「今日はお時間作って頂いて……」

「いいんです。私も黒崎さんに会いたかったから。」

そう言って、芹香は信一郎さんの腕にタッチ。


ちょっと芹香、積極的なんじゃないの?

そして、二人は大きな高級ソファーに座った。

「コーヒーを二つ。」

「畏まりました。」

店員さんが行ったところで、私は二人の側の椅子に座る。


「お客様、ご注文は如何でしょうか。」

「えっと、コーヒー。」

「畏まりました。」

私はふとメニューを見て、驚いた。

ここのコーヒー、一杯1200円するの⁉

どんなコーヒーなのよ⁉


いやそれどころじゃない。

二人が何の話をしているか、聞いておかないと。


「今日は、素敵なお召し物ですね。」

「ふふふ。ありがとうございます。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」  出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。  冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?  

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら
恋愛
「二度目は偶然だが、三度目は必然だ。三度目がないことを願っているよ」 (三度目はないからっ!) ──そう心で叫んだはずなのに目の前のエリート役員から逃げられない! 「俺と君が出会ったのはつまり必然だ」 倉木莉桜(くらきりお)は大手エアラインで日々奮闘する客室乗務員だ。 ある日、自社の機体を製造している五十里重工の重役がトラブルから莉桜を救ってくれる。 それで彼との関係は終わったと思っていたのに!? エリート役員からの溺れそうな溺愛に戸惑うばかり。 客室乗務員(CA)倉木莉桜 × 五十里重工(取締役部長)五十里武尊 『空が好き』という共通点を持つ二人の恋の行方は……

【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています

22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。 誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。 そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。 (殿下は私に興味なんてないはず……) 結婚前はそう思っていたのに―― 「リリア、寒くないか?」 「……え?」 「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」 冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!? それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。 「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」 「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」 (ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?) 結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

ハイスペックでヤバい同期

衣更月
恋愛
イケメン御曹司が子会社に入社してきた。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

処理中です...