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闇②
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放課後、そんな話を聞きながら亮は、グランドで野球の練習を続けた。
長い黒髪。
それを耳にかけている幽霊。
亮の脳裏には美奈子が映った。
「でもさ、それってなんか……」
「ん?」
「2ヶ月前に死んだ、高月美奈子みたいじゃねえ?」
仲間は亮の方を見た。
亮は聞いてない振りをして、練習を続けた。
「いくら好きだったとはいえ、幽霊じゃな……」
「な……」
亮はその会話を聞くと、練習を一旦止めた。
「俺は幽霊でも、高月に会いたいよ。」
「今林……」
仲間は切なそうに、顔を見合わせた。
亮は、脳裏に次々と浮かんでくる、美奈子との思い出を振り払うかのように、練習に没頭した。
一方絵美は、恐怖のあまり学校へ、いや外に出る事ができなくなっていた。
「絵美、今日も学校に行かないの?」
朝、決まって母親がかけてくる言葉。
布団にくるまった絵美の答えは、いつも一緒だった。
「行きたくない。」
母親はため息をつき、部屋を出て行った。
恵を連れ去った美奈子の顔。
あれは間違いなく、恨みのこもっている顔だ。
恵だけじゃない。
美奈子は、私も連れて行こうとしてるんだ。
絵美の身体が、ブルッと震えた。
ちょうどその時、二階へ上がってくる、父親の声が聞こえた。
「絵美、入るぞ。」
父親は部屋のドアを開けると、真っ直ぐにベッドに向かい、絵美の布団をはいだ。
「具合はよさそうじゃないか。」
絵美は身体を丸めた。
「これ以上、学校を休むなんて、許さないぞ!」
学校。
その言葉に、絵美は異常に反応した。
「い、嫌っ!」
「何?」
絵美は耳を押さえた。
「学校なんて行きたくない!」
「絵美!」
「行かない!私、学校へ行かない!」
絵美は再び、布団の中に入って、出てこなかった。
そんな絵美の姿を見て、父親は諦めたのか、よほどの理由があると察したのか、何も言わずに部屋を出て行った。
もう学校には行きたくない。
行ったら私は、二度と家には戻れない。
絵美はそう確信していた。
そして、何時間経っただろうか。
そのまま絵美は、布団の中で、一日の大半を過ごした。
そっと布団から外を見ると、日は暮れ始めている。
「もうこんな時間……」
絵美がそう言った時に、お腹が鳴った。
「なんにも食べてなかったからだ。」
絵美は布団から出て、お腹をさすった。
その時だ。
絵美は寒さで、体がブルッと震えた。
「え?どうして?」
絵美は窓を見た。
窓が開いている。
朝、母親が開けてくれたんだろう。
「夕方になったから、冷えて来たのかな。」
絵美は体をさすりながら、窓を閉めた。
そして絵美は、自分の腕を見て驚いた。
濡れている。
雨も降っていないのに。
一日中、布団の中にいたというのに。
「あっ……」
そういえば、首の辺りが冷たい。
「ウソ……」
恵と一緒だ。
順番に自分の体が、濡れていっている。
肩、
両腕、
胸、
お腹辺りも濡れている。
「い、いやあ!」
絵美は叫び、部屋を出ようと、扉の方に身体を向けた。
その瞬間、絵美は体が動かなくなった。
美奈子だ。
美奈子が自分の部屋に、座っているのだ。
どうして……
一体どうして?
美奈子が現れるのは、学校だけじゃなかったの?
「み、美奈子!」
― 絵美、私、寒い ―
一緒だ。
恵の時と一緒だ。
「そ、それは美奈子がもう、死んでるからだよ!」
絵美がそう言うと、美奈子は涙をこぼしながら、泣き始めた。
― 嫌だよ……寂しいよお…… ―
絵美は強気に出た。
「だから何なのよ!私はあんたと一緒に、行かないわよ!」
― ……どうして? ―
「あんたなんか、知らないもん!」
― 知らない? ―
「友達なんかじゃないもん!振りをしてただけだもん!」
― 振り? ―
「友達の振りしてれば、美奈子は何でもやってくれるから!そうじ当番も、宿題写すのも、今林君の事も!」
― 私の事、都合のいい人だと思っていたの? ―
「じゃなかったら、あんたみたいな暗い子!誰が話しかけんのよ!」
絵美はありったけの声で叫んだ。
「絵美はそう言うと思ってた。」
耳元で美奈子の声がした。
心臓が止まりそうなくらいに驚いて、美奈子が後ろを振り返った。
そこには、鋭い目で自分を射抜く美奈子がいた。
長い黒髪。
それを耳にかけている幽霊。
亮の脳裏には美奈子が映った。
「でもさ、それってなんか……」
「ん?」
「2ヶ月前に死んだ、高月美奈子みたいじゃねえ?」
仲間は亮の方を見た。
亮は聞いてない振りをして、練習を続けた。
「いくら好きだったとはいえ、幽霊じゃな……」
「な……」
亮はその会話を聞くと、練習を一旦止めた。
「俺は幽霊でも、高月に会いたいよ。」
「今林……」
仲間は切なそうに、顔を見合わせた。
亮は、脳裏に次々と浮かんでくる、美奈子との思い出を振り払うかのように、練習に没頭した。
一方絵美は、恐怖のあまり学校へ、いや外に出る事ができなくなっていた。
「絵美、今日も学校に行かないの?」
朝、決まって母親がかけてくる言葉。
布団にくるまった絵美の答えは、いつも一緒だった。
「行きたくない。」
母親はため息をつき、部屋を出て行った。
恵を連れ去った美奈子の顔。
あれは間違いなく、恨みのこもっている顔だ。
恵だけじゃない。
美奈子は、私も連れて行こうとしてるんだ。
絵美の身体が、ブルッと震えた。
ちょうどその時、二階へ上がってくる、父親の声が聞こえた。
「絵美、入るぞ。」
父親は部屋のドアを開けると、真っ直ぐにベッドに向かい、絵美の布団をはいだ。
「具合はよさそうじゃないか。」
絵美は身体を丸めた。
「これ以上、学校を休むなんて、許さないぞ!」
学校。
その言葉に、絵美は異常に反応した。
「い、嫌っ!」
「何?」
絵美は耳を押さえた。
「学校なんて行きたくない!」
「絵美!」
「行かない!私、学校へ行かない!」
絵美は再び、布団の中に入って、出てこなかった。
そんな絵美の姿を見て、父親は諦めたのか、よほどの理由があると察したのか、何も言わずに部屋を出て行った。
もう学校には行きたくない。
行ったら私は、二度と家には戻れない。
絵美はそう確信していた。
そして、何時間経っただろうか。
そのまま絵美は、布団の中で、一日の大半を過ごした。
そっと布団から外を見ると、日は暮れ始めている。
「もうこんな時間……」
絵美がそう言った時に、お腹が鳴った。
「なんにも食べてなかったからだ。」
絵美は布団から出て、お腹をさすった。
その時だ。
絵美は寒さで、体がブルッと震えた。
「え?どうして?」
絵美は窓を見た。
窓が開いている。
朝、母親が開けてくれたんだろう。
「夕方になったから、冷えて来たのかな。」
絵美は体をさすりながら、窓を閉めた。
そして絵美は、自分の腕を見て驚いた。
濡れている。
雨も降っていないのに。
一日中、布団の中にいたというのに。
「あっ……」
そういえば、首の辺りが冷たい。
「ウソ……」
恵と一緒だ。
順番に自分の体が、濡れていっている。
肩、
両腕、
胸、
お腹辺りも濡れている。
「い、いやあ!」
絵美は叫び、部屋を出ようと、扉の方に身体を向けた。
その瞬間、絵美は体が動かなくなった。
美奈子だ。
美奈子が自分の部屋に、座っているのだ。
どうして……
一体どうして?
美奈子が現れるのは、学校だけじゃなかったの?
「み、美奈子!」
― 絵美、私、寒い ―
一緒だ。
恵の時と一緒だ。
「そ、それは美奈子がもう、死んでるからだよ!」
絵美がそう言うと、美奈子は涙をこぼしながら、泣き始めた。
― 嫌だよ……寂しいよお…… ―
絵美は強気に出た。
「だから何なのよ!私はあんたと一緒に、行かないわよ!」
― ……どうして? ―
「あんたなんか、知らないもん!」
― 知らない? ―
「友達なんかじゃないもん!振りをしてただけだもん!」
― 振り? ―
「友達の振りしてれば、美奈子は何でもやってくれるから!そうじ当番も、宿題写すのも、今林君の事も!」
― 私の事、都合のいい人だと思っていたの? ―
「じゃなかったら、あんたみたいな暗い子!誰が話しかけんのよ!」
絵美はありったけの声で叫んだ。
「絵美はそう言うと思ってた。」
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心臓が止まりそうなくらいに驚いて、美奈子が後ろを振り返った。
そこには、鋭い目で自分を射抜く美奈子がいた。
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