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第4部 彼の過去と、涙の痕跡
①
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この想いを絶ち切るはずだったのに——
むしろ私は、また隼人さんの誠実さに触れて、深く惹かれてしまっていた。
そんな矢先だった。
「今日から経理部に配属になる、早瀬 美羽(はやせ みう)さんだ。」
課長が紹介した瞬間、思わず姿勢を正した。
綺麗。スタイルも抜群。目を引くような、華やかなオーラ。
その時、隣にいた上林さんが私の耳元でそっと囁いた。
「彼女よ。桐生部長と付き合ってた人。」
「……え?」
「元モデル。バイトから入って、そのまま社員になったって。まさか経理部に来るなんてね。」
美羽さんは、にこやかに挨拶していた。清楚で、どこか余裕のある微笑み。
——こんな人と、隼人さんは付き合っていたの?
胸の奥が、ざわついた。
彼の過去に、私は勝てるの?
「じゃあ、篠原主任。」
「はい。」
ちょっと嫌な予感がした。
「彼女の教育係、お願いね。」
……やっぱり。まさか私に振るなんて。
「宜しくお願いします。」
「篠原です。」
名札を見せながら、なんとか笑顔を作った。
美羽さんはにこりと微笑んで、「早瀬です。よろしくお願いします」と頭を下げる。……この笑顔、ずるいくらいに綺麗だ。
案内された彼女の席は、まさかの私の隣。
午前中は、伝票の入力方法や社内申請書の扱い方を一通り教えた。彼女はメモを取りながら、真面目に話を聞いている。仕事はちゃんとできそう……でも、どうしても胸の奥がざわついてしまう。
そして——
「失礼します。」
その声に、私の指先が一瞬止まった。
見ると、桐生部長が申請書の束を手に、私たちのデスクに現れた。
「この伝票、こっちの部署に回すんだが……」
視線が一瞬、美羽さんに向けられる。
「……美羽。」
その小さな呟きに、空気が張り詰めた。
美羽さんは、ふわっとした表情のまま、少し首をかしげて答える。
「お久しぶりです、部長。」
……やっぱり、知ってるんだ。
一瞬、目が合った。桐生部長の瞳に浮かんだのは、驚き、戸惑い、そして——なぜか少しだけ、痛みのようなものだった。
私は、ただ黙って申請書を受け取った。何もなかったように。
けれど、心の奥では、何かがざわめき始めていた。
「……早瀬。どうして君がここに?」
「今日から経理部に配属になりました。」
桐生部長の声は、いつもの落ち着いたトーンだった。
でも、その一言に込められた微かな動揺を、私は聞き逃さなかった。
むしろ私は、また隼人さんの誠実さに触れて、深く惹かれてしまっていた。
そんな矢先だった。
「今日から経理部に配属になる、早瀬 美羽(はやせ みう)さんだ。」
課長が紹介した瞬間、思わず姿勢を正した。
綺麗。スタイルも抜群。目を引くような、華やかなオーラ。
その時、隣にいた上林さんが私の耳元でそっと囁いた。
「彼女よ。桐生部長と付き合ってた人。」
「……え?」
「元モデル。バイトから入って、そのまま社員になったって。まさか経理部に来るなんてね。」
美羽さんは、にこやかに挨拶していた。清楚で、どこか余裕のある微笑み。
——こんな人と、隼人さんは付き合っていたの?
胸の奥が、ざわついた。
彼の過去に、私は勝てるの?
「じゃあ、篠原主任。」
「はい。」
ちょっと嫌な予感がした。
「彼女の教育係、お願いね。」
……やっぱり。まさか私に振るなんて。
「宜しくお願いします。」
「篠原です。」
名札を見せながら、なんとか笑顔を作った。
美羽さんはにこりと微笑んで、「早瀬です。よろしくお願いします」と頭を下げる。……この笑顔、ずるいくらいに綺麗だ。
案内された彼女の席は、まさかの私の隣。
午前中は、伝票の入力方法や社内申請書の扱い方を一通り教えた。彼女はメモを取りながら、真面目に話を聞いている。仕事はちゃんとできそう……でも、どうしても胸の奥がざわついてしまう。
そして——
「失礼します。」
その声に、私の指先が一瞬止まった。
見ると、桐生部長が申請書の束を手に、私たちのデスクに現れた。
「この伝票、こっちの部署に回すんだが……」
視線が一瞬、美羽さんに向けられる。
「……美羽。」
その小さな呟きに、空気が張り詰めた。
美羽さんは、ふわっとした表情のまま、少し首をかしげて答える。
「お久しぶりです、部長。」
……やっぱり、知ってるんだ。
一瞬、目が合った。桐生部長の瞳に浮かんだのは、驚き、戸惑い、そして——なぜか少しだけ、痛みのようなものだった。
私は、ただ黙って申請書を受け取った。何もなかったように。
けれど、心の奥では、何かがざわめき始めていた。
「……早瀬。どうして君がここに?」
「今日から経理部に配属になりました。」
桐生部長の声は、いつもの落ち着いたトーンだった。
でも、その一言に込められた微かな動揺を、私は聞き逃さなかった。
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