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第7部 本気の夜、ふたりの距離
⑥
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低く落ち着いた声で、彼は続けた。
「仕事だって、遊びだって、全部うわべだった。でも……お前だけは、違う。」
私は顔を上げて、彼の瞳を見つめた。
その瞳の奥に、どこまでも深く、私だけが映っている気がした。
「……私もです。隼人さんに出会って、初めて……本当に愛されたって、思えた。」
涙が一粒、頬をつたう。
それを彼がそっと拭ってくれる。
その仕草さえ、愛しくてたまらない。
「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」
彼の言葉は、約束ではない。願いでもない。
それは、すでに始まっている“未来”のようだった。
私は、彼の胸に顔を埋めた。
「……はい、どこにも行かない。あなたのそばにいます。」
しばらくの静寂の後、彼がふっと笑った。
そして、そっと私の額にキスを落とす。
「大好きだよ、紗英。」
この瞬間、私は世界で一番幸せな女になった気がした。
翌朝の経理部オフィス。誰よりも早く出社した私の元へ、上林さんが近寄ってきて……
「おはよ、紗英ちゃん。」
その声だけで、なんとなく嫌な予感がした。
「……おはようございます。」
「ねぇ。昨日の夜……どうだった?」
「どうって……」
私の頬がじわっと熱を帯びる。
「部長、どんなふうに女を抱くの?」
ぶふっ――とコーヒーを吹きそうになった。
「え、ええっ⁉ ちょっと待ってください、上林さん!」
「いやーだ、そういう顔するってことは、あったってことじゃない!」
完全にトラップだった。
「……優しかったです。」
正直に言うと、上林さんは急にテーブルに突っ伏した。
「はあああ⁉ 桐生部長が⁉ 優しく⁉ まさか“愛してる”とか言っちゃったりするの⁉」
私は下を向いた。
「……はい。」
「ぎゃーーーーっ!!言うの!? “愛してる”って、あの超無口エリートが!?」
まるで推しカプの熱狂的ファンみたいなテンション。
「で、で、前戯は?どんなこと囁くの?」
「もう無理!無理無理無理です、そういうの職場で聞かないでください!」
「えー、ちょっとくらい教えてよぉ。どうせ今夜もお泊まりでしょ?」
「そんな予定はっ……ないですけど……」
「おやおや?この“けど”に全てが詰まってるぅ~♡」
顔を隠すように、私は書類の山に埋もれた。
「仕事しましょう。私、ちゃんと経理部なんで。」
「ふふっ、でもさ――幸せそうな顔してる。いいなあ、紗英ちゃん。」
その言葉だけは、素直に嬉しかった。
「仕事だって、遊びだって、全部うわべだった。でも……お前だけは、違う。」
私は顔を上げて、彼の瞳を見つめた。
その瞳の奥に、どこまでも深く、私だけが映っている気がした。
「……私もです。隼人さんに出会って、初めて……本当に愛されたって、思えた。」
涙が一粒、頬をつたう。
それを彼がそっと拭ってくれる。
その仕草さえ、愛しくてたまらない。
「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」
彼の言葉は、約束ではない。願いでもない。
それは、すでに始まっている“未来”のようだった。
私は、彼の胸に顔を埋めた。
「……はい、どこにも行かない。あなたのそばにいます。」
しばらくの静寂の後、彼がふっと笑った。
そして、そっと私の額にキスを落とす。
「大好きだよ、紗英。」
この瞬間、私は世界で一番幸せな女になった気がした。
翌朝の経理部オフィス。誰よりも早く出社した私の元へ、上林さんが近寄ってきて……
「おはよ、紗英ちゃん。」
その声だけで、なんとなく嫌な予感がした。
「……おはようございます。」
「ねぇ。昨日の夜……どうだった?」
「どうって……」
私の頬がじわっと熱を帯びる。
「部長、どんなふうに女を抱くの?」
ぶふっ――とコーヒーを吹きそうになった。
「え、ええっ⁉ ちょっと待ってください、上林さん!」
「いやーだ、そういう顔するってことは、あったってことじゃない!」
完全にトラップだった。
「……優しかったです。」
正直に言うと、上林さんは急にテーブルに突っ伏した。
「はあああ⁉ 桐生部長が⁉ 優しく⁉ まさか“愛してる”とか言っちゃったりするの⁉」
私は下を向いた。
「……はい。」
「ぎゃーーーーっ!!言うの!? “愛してる”って、あの超無口エリートが!?」
まるで推しカプの熱狂的ファンみたいなテンション。
「で、で、前戯は?どんなこと囁くの?」
「もう無理!無理無理無理です、そういうの職場で聞かないでください!」
「えー、ちょっとくらい教えてよぉ。どうせ今夜もお泊まりでしょ?」
「そんな予定はっ……ないですけど……」
「おやおや?この“けど”に全てが詰まってるぅ~♡」
顔を隠すように、私は書類の山に埋もれた。
「仕事しましょう。私、ちゃんと経理部なんで。」
「ふふっ、でもさ――幸せそうな顔してる。いいなあ、紗英ちゃん。」
その言葉だけは、素直に嬉しかった。
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