誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –【完結】

日下奈緒

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第7部 本気の夜、ふたりの距離

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ダメなのに、感じてしまう。

「紗英、俺を感じて。」

そう言って一条さんは、ズボンを脱ぐと私の中に入ってきた。

「ああ……」

「紗英、好きだ。愛してる。」

一条さんは、甘く囁きながら何度も腰を動かした。

「ああ、紗英を抱いている。」

彼の熱が、私を支配する。

「好きな女、抱いてる。俺のモノにしてる。」

一条さんは、熱いキスをすると私の中で果てた。

私は何が起こったのか分からず、その場に崩れ落ちた。

「紗英……」

優しく、でも逃げられないように抱きしめられる。

彼の体温が、直接肌に触れてくるたびに、私は自分を見失っていった。

「いいね……もう俺のモノだからね。」

耳元で囁かれた声に、背筋がゾクリとした。

体が熱いのに、心が冷たい。

「桐生部長と、会わないで。」

その一言が胸を刺した。

パタン、とファイルの山を崩してしまいそうになりながら、

体を縮めて息を殺す。

バレたくない。

今の私を、隼人さんに見られたくない。

一条さんに愛された直後の、この体を――。

「一条。お前、何を考えているんだ!」

声が鋭くなる。

一条さんの声は、逆に静かだった。

「桐生部長こそ、何しに来たんですか?」

「篠原を探してるんだよ。」

「あなたの“女”が、他の男といるかもしれないって思ったから?」

「……!」

「心当たりがあるんですね。」

しんと静まり返る倉庫に、男同士の感情がぶつかる音が響く。

「――まさかお前、本当に篠原に手を出したのか?」

一条さんは微かに笑った。

「俺の気持ちは、前から知ってたくせに。それでも手を出したのは、そっちじゃないですか。」

「……っ」

「愛してる、だの、子供が欲しい、だの。そう言えば女はみんな信じるとでも?」

私は口を覆った。

聞きたくない。だけど、聞こえてしまう。

「俺は、紗英を――」

「――なら、どうして彼女を不安にさせる?」

隼人さんが黙る。私は、その沈黙に胸が締め付けられた。

一条さんは、はっきりと言った。

「もう遅いですよ。俺は、紗英さんを抱きました。もうあなたのモノじゃありません。」

「……!」

棚の奥で、私は震えていた。

一瞬の沈黙のあと、鈍い音が鳴り響いた。

「……ッ!」

隼人さんの拳が、一条さんの頬を思いきり打ち抜いたのだ。

バタン、と棚にぶつかりながら、一条さんが床に倒れ込む。

「無理やり犯したのか!」

隼人さんの声が、倉庫中に響いた。
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