華麗なる逆転劇~私をいじめたあの子に、最も甘いざまあを

日下奈緒

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第1部 孤児院の過去

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ある日、私が痛みをこらえながら木の棒を取り返そうとしたとき、突然先生が現れた。

アビゲイルは、わざと涙を浮かべて甘えた顔で言った。

「エレーナがいじめてくるんです。」

その言葉は、私を完全に裏切った。

先生は美しいアビゲイルを信じ、私が悪いと決めつけた。

「エレーナ、アビゲイルと仲良くね。」

先生は優しく言ったが、その言葉の裏には私への冷徹な視線があった。

私は言葉も出なかった。

先生がアビゲイルの言葉を信じ、私の方を信じなかったことが、どれほど私を傷つけたか分からなかった。

その日から、私はますます孤立していった。

アビゲイルのいじめが続く中、誰も私の味方をしてくれなかった。

先生さえも、私の心の傷に気づくことはなかった。

私にはただ耐えるしかない日々が続いた。

ある日、品のいい公爵夫妻が養子を求めて孤児院にやってきた。

私はこのチャンスを逃すまいと心の中で誓った。

これが私が孤児院を抜け出せる唯一の方法だと思ったからだ。

私は自分を品良く見せるために、姿勢を正し、必死に笑顔を作った。

普段は沈黙を守っていた私が、精一杯の愛想を振りまき、何度も公爵夫妻に話しかけた。

何度も来ては様子を見ていた公爵夫妻は、ついに養子を決めた日がやってきた。

私の心は期待と希望で満ちていたが、その瞬間、私の耳に届いた言葉は、信じられないものだった。

「アビゲイルにしましょう。」

その言葉を聞いた瞬間、私の目の前が一瞬で暗くなった。

あの性格の悪いアビゲイルが、養子として選ばれるなんて――!

心の中で何度もその現実を受け入れられずにいた。

「アビゲイルの美しさは素敵だわ。」

公爵夫人が微笑みながら言った。

その美しさが、どうしてあんなにも好まれるのか、私は理解できなかった。

アビゲイルの外見を褒めるその言葉が、私の胸に重くのしかかる。

私はただ、目の前で繰り広げられる不公平な現実を呆然と見つめるしかなかった。

「お生憎さま。」

アビゲイルの言葉は、冷たくて軽蔑に満ちていた。

彼女は私を見下すように、わざとらしい笑顔を浮かべて言った。

「あんなに公爵夫妻に取り入っていたのにね。」

その言葉が、私の胸に鋭く突き刺さった。

私が必死に努力してきたすべてが、彼女の一言で無駄にされたような気がした。

アビゲイルは、ほとんど公爵夫妻と会話もせず、ただ挨拶をするだけだった。

それなのに、彼女が選ばれた。

私は何度も公爵夫妻に愛想を振りまき、品よく振る舞おうとした。

必死だった。しかし、最終的にアビゲイルの美しさだけが選ばれる基準だった。

あんなに何もしていない彼女が、ただ顔を見せるだけで、私よりも遥かに好まれたのだ。

「公爵夫妻は、見る目があるわ。私の美しさがわかるなんて。」

アビゲイルは満足げに言い、私をさらに嘲笑うような目で見た。

彼女の自信に満ちた声が、私の心を深く引き裂いた。

美しさだけで、こんなにも簡単に人の運命が決まるのか。

心の中で、アビゲイルに対する憎しみが湧き上がった。

「公爵令嬢って事は、王子様と結婚もできるのよ。」

アビゲイルは、周りの子供たちを見渡しながら、自分の立場を誇示するように言った。

周りの子供たちは、彼女をお姫様のように揶揄し、羨望と嫉妬の入り混じった目で見つめていた。

その姿が、私の胸を締め付けた。

私の中の怒りが、ついに頂点に達した。

「あなたみたいな性格が悪い女を、王子様は選ぶかしら。」

思わずその言葉が口をついて出た。

周りの空気が一瞬で凍りついた。

アビゲイルは、予想通り不快そうに私を見返し、その表情は冷笑を浮かべていた。

「選ぶわよ。」

アビゲイルは自信たっぷりに言い放ち、金色の巻き髪をわざと見せびらかすように揺らした。

「この美しさがあればね。」

彼女はそう言って、豪華な笑い声をあげた。

その高笑いは、まるで私を完全に見下しているかのように響いた。

その瞬間、アビゲイルの顔がますます憎らしく思えた。

美しさを武器に、人を傷つけることを何とも思わない彼女。

その傲慢な態度が、私の心の中でますます膨れ上がる憎しみを煽った。
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