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Ⅰ
⑥
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その一方で、新しく側に仕えてくれたハーキムは、まるで兄のようだった。
「ジャラール様。これより、森の中に一泊致しましょう。」
王子と言わないだけでも、珍しいのに。
森の中へ?一泊?
あんな危険な場所。
俺は遠慮する。
「私はせぬ。一泊したかったら、ハーキム一人で、行くがよい。」
「はい。では、ごめん。」
ハーキムは、私を肩に担ぎ、外にいる駱駝の上へ、乗せた。
「ハーキム!何だ、これは!」
「将来、王家を支える為の、特訓でございます。」
「はあ?」
ハーキムは自分の駱駝と、俺の駱駝を繋ぐと、森の中へと走り始めた。
「ハーキム!止まってくれ!落ちる!」
「しっかり掴まっていて下さい!ジャラール様!」
俺の言う事など、何一つ聞かず、ハーキムは森の間を、どんどん、どんどん走って行く。
「どこまで行くんだ!」
「もう少しです!」
そう言ったハーキムは、ある場所に着くと、駱駝を止めた。
止まった場所は、森の中の森の中。
360度見回しても、木しかなかった。
「いい場所です。」
「どこが?」
全く分からない俺が尋ねると、ハーキムは1本の大きな木を指差した。
「周りより、大きな木がございます。そして、この周辺には、わずかでも広い場所がある。」
広い場所……?
よく見ると、大木の周りには、すぐに木は生えていないけれども、広い場所等とても言えたもんじゃない。
「今日は、ここで野宿しましょう。」
「野宿!?」
宮殿の中でしか寝た事がない俺は、その時奇声をあげてしまった。
「はははっ!ははははっ!!」
そんな俺を、ハーキムは笑いさった。
「怖いのですか?」
「怖くはないやい!」
「では、よろしい。」
そう言ってハーキムは、駱駝から降りた。
「さあ、あなたも降りて下さい。」
「あ、ああ……」
駱駝から降りると、ハーキムはその大木に、駱駝をくくりつけた。
「さあ、ジャラール様も。」
俺はその時、少しだけムッとした。
今まで、王子を付けずに名前を呼ばれた事等、ただ1度もなかったからだ。
「ハーキム。」
「はい。」
「私の事は、王子と呼べ。」
「それは、できませぬな。」
「なに?」
俺が指示して。断られる事も、生まれて初めてだった。
「私は、あなたの侍従。侍従は、使用人の中でも、一番側にお仕えする身。言わば一心同体なのです。そんな私が、あなたを王子と呼ぶ等、甚だ可笑しい。」
「はあ?」
あまりの言葉に、口をポカーンと開けたまま、ハーキムを見ていた。
「それでは、ジャラール様。駱駝をこの木に、繋げて下さい。」
「私が?直接?自分の手で?」
「他に、誰がいるのですか?」
おまえがいるだろうと、言いかけて。
それは止めた。
なんだか、面倒な事になりそうだから。
俺は駱駝の手綱を引き、大木にそれを回した。
「ジャラール様。これより、森の中に一泊致しましょう。」
王子と言わないだけでも、珍しいのに。
森の中へ?一泊?
あんな危険な場所。
俺は遠慮する。
「私はせぬ。一泊したかったら、ハーキム一人で、行くがよい。」
「はい。では、ごめん。」
ハーキムは、私を肩に担ぎ、外にいる駱駝の上へ、乗せた。
「ハーキム!何だ、これは!」
「将来、王家を支える為の、特訓でございます。」
「はあ?」
ハーキムは自分の駱駝と、俺の駱駝を繋ぐと、森の中へと走り始めた。
「ハーキム!止まってくれ!落ちる!」
「しっかり掴まっていて下さい!ジャラール様!」
俺の言う事など、何一つ聞かず、ハーキムは森の間を、どんどん、どんどん走って行く。
「どこまで行くんだ!」
「もう少しです!」
そう言ったハーキムは、ある場所に着くと、駱駝を止めた。
止まった場所は、森の中の森の中。
360度見回しても、木しかなかった。
「いい場所です。」
「どこが?」
全く分からない俺が尋ねると、ハーキムは1本の大きな木を指差した。
「周りより、大きな木がございます。そして、この周辺には、わずかでも広い場所がある。」
広い場所……?
よく見ると、大木の周りには、すぐに木は生えていないけれども、広い場所等とても言えたもんじゃない。
「今日は、ここで野宿しましょう。」
「野宿!?」
宮殿の中でしか寝た事がない俺は、その時奇声をあげてしまった。
「はははっ!ははははっ!!」
そんな俺を、ハーキムは笑いさった。
「怖いのですか?」
「怖くはないやい!」
「では、よろしい。」
そう言ってハーキムは、駱駝から降りた。
「さあ、あなたも降りて下さい。」
「あ、ああ……」
駱駝から降りると、ハーキムはその大木に、駱駝をくくりつけた。
「さあ、ジャラール様も。」
俺はその時、少しだけムッとした。
今まで、王子を付けずに名前を呼ばれた事等、ただ1度もなかったからだ。
「ハーキム。」
「はい。」
「私の事は、王子と呼べ。」
「それは、できませぬな。」
「なに?」
俺が指示して。断られる事も、生まれて初めてだった。
「私は、あなたの侍従。侍従は、使用人の中でも、一番側にお仕えする身。言わば一心同体なのです。そんな私が、あなたを王子と呼ぶ等、甚だ可笑しい。」
「はあ?」
あまりの言葉に、口をポカーンと開けたまま、ハーキムを見ていた。
「それでは、ジャラール様。駱駝をこの木に、繋げて下さい。」
「私が?直接?自分の手で?」
「他に、誰がいるのですか?」
おまえがいるだろうと、言いかけて。
それは止めた。
なんだか、面倒な事になりそうだから。
俺は駱駝の手綱を引き、大木にそれを回した。
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