月夜の砂漠に一つ星煌めく

日下奈緒

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アリアと毎日会うようになって、周りの反応も、変わり始めた。

最初に変わったのは、ハーキムだった。


「ジャラール様。この頃、星の間に熱心に、通われているそうですね。」

『…ああ、そうだな。」

「星は……そんなに、綺麗ですか。」

後ろから付いてまわるハーキムを、初めて煩いと感じた。

「ああ、とても綺麗だ。」

「そんなに、魅力的な星ですか?」

俺は、後ろを振り向いた。

「……何が言いたい?」

ハーキムは、アリアの事を知っていると、思った。


「皆、心配しております。王子は、踊り子にのめり込んでいると……」

なぜ、踊り子だと分かったのか。

「だから何だと言うのだ。踊り子だから、恋人にしてはダメだと言う規則はないだろう。」

開き直って、アリアに会う事を、正当化してみた。

「やはり、本当だったのですね。」

「えっ……」

俺は、ハーキムを見つめた。

「ただの噂だと、思っておりましたが……」

ハーキムは、残念そうにため息をついた。

「……図ったな。」

「まさか本気で、踊り子を恋人にするとは、思っておりませんでしたので。」

それを聞いて、ハーキムに背中を向けた。


「ジャラール様。その者をどうするおつもりですか?」

「どうするだと?」

「妃の一人として、お迎えするつもりですか?それとも、遊び女として、お付き合いするつもりですか?」

ハーキムの質問は、この時の俺にしては、難しいものだった。

「……妃に迎えるつもりだと、申したら?」

「お止めになった方が、よろしいかと。」

俺は首を、横に振った。

「まさか、遊び女にしろと言うのか?」

「その方が、まだ納得させられるでしょう。」

「誰にだ。」

「この国の、者達にです。」

急にこめかみが、痛くなった。


恋人を決めるのに、この国の者達を考えなければ、ならないなんて。

「そんな事、聞いておらぬわ。」

「それは、ジャラール様がネシャート王女以外の女に、興味を示さなかったからです。」

「ネシャートも、踊り子も、一緒だろ。」

「一緒では、ありません!」

久しぶりに、ハーキムから強い口調を聞いた。

「では、ハーキムは。恋人を作る時に、国の為を思って選ぶのか?」

「恐れながら、私とジャラール様とでは、お立場が違います。」

上手く逃げたハーキムに、初めて舌打ちをした。


「……別れろと言うのか?あの踊り子と。」

「どうするかは、ジャラール様次第です。」

ダメだと言っておきながら、どうするかは俺次第って、勝手過ぎやしないか?

「あの踊り子とは、別れない。」

「ジャラール様!」

「アラブの男は、女を何人でも囲えるのだろう!?ハーキムが言ったのではないか!」

ハーキムは、何も言えず黙ったままだ。

「とにかく、あの踊り子の事は、何も言わないでくれ。」

俺はそう言うと、部屋を出た。
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