月夜の砂漠に一つ星煌めく

日下奈緒

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「そうだ……いや、でも……」

「そんな事より、私の事は考えてくれないの?」

アリアは、俺に詰め寄る。

「もちろん!もちろん、アリアの事を考えているよ。」

「本当?」

「だって、この前テントに行ったのも、アリアに無償に会いたくなったからだし。」

「ふふふっ!」

アリアは微笑むと、俺に抱きついた。


「もう!ジャラールって、可愛いのね。」

「可愛い!?」

俺、男なんだけどな。

「私に無償に!会いたくなったの?ふふふっ。ごめんね、会ってあげられなくて。」

なぜか、胸が締め付けられた。


俺の気持ちに、答えてくれる人。

俺が好きだと言えば、好きだと返してくれる人。


「アリア。」

「なあに?ジャラール。」

「今、アリアの事が……無償に欲しいって言ったら、どうする?」

「そうね……」

アリアは抱きついたまま、俺の首元に、顔を埋めた。

「……いいわよって、答えるわ。」






そして俺たちは、


星降る中で、


初めて結ばれたんだ。




人間は不思議なもので、側にいてくれる人ができると、心が強くなる。

“もっと、強くなりたい。アリアを守れるようになりたい”と思う気持ちが、剣術の稽古にも、出始めていたんだ。


「さすがですね。」

あの厳しい先生でさえ、俺に拍手を送るようになった。

「やはり環境が変わると、人も変わるのですね。」

もしかして、アリアの事バレてる?

「あっ、いや、その……」

恋人ができた事を言うなんて、なんだか不思議な気分だ。

その前に、恋人をできた事って、そもそも人に言う事なのか?

「どうしました?ジャラール王子。」

「いや、何でもない。」

うん、そうだ。

聞かれるまで、黙っていよう。


「ところで、どちらの国へ行かれるのですか?」

「えっ?」

先生の奇妙な質問に、ハーキムが間に入った。

「何の事ですか?」

「もしかして、まだお聞きになっていないのですか?」

益々分からない質問に、ハーキムは先生を、どこかに連れて行ってしまった。
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