欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~

日下奈緒

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2、ホテルの鍵を開けたのは、彼の指

一線の、その先へ

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ベッドの端に座らされると、課長の手が私のシャツのボタンに触れた。

一つずつ、ゆっくりと外されていくたびに、肌が空気に晒されて、ぞくぞくと震えが走る。

「凛子……俺、ずっと我慢してた。」

熱を帯びた声が耳元をくすぐり、私は息を呑んだ。

「……私もです。」

そう答えた瞬間、課長の手が私の肌を滑る。

指先が鎖骨をなぞり、胸の谷間を、優しく撫でていく。

お互いの吐息が混ざり合い、ベッドの上の空気が甘く湿っていく。

「抱くよ、凛子。」

その言葉が落ちたとき、もう何も考えられなくなっていた。

すべてを預けたくなるような熱に、心の奥まで痺れていく。

「……かわいい。」

囁くように言われたその一言が、麻薬みたいに体に染み込んで、私の理性を静かに溶かしていった。

唇が重なるたび、呼吸が奪われる。

深く、何度も、貪るようなキス。

そのたびに身体の奥で、何かが熱く溶けていく。

「凛子……」

名前を呼ぶ声が低くかすれて、私の胸にまで響く。

交わるたび、課長の動きは次第に激しさを増していった。

何度も奥まで引き寄せられ、息も絶え絶えになりながら、私は彼にしがみついた。

「もっと……ください。」

自分でも知らない声が漏れる。

恥ずかしさも忘れて、ただ彼を求めた。

「……俺、本気なんだ。」

耳元で囁かれた言葉に、胸がぎゅっと締め付けられる。

「ずっと、凛子が欲しかった。部下とか関係なく――」

その告白に、私は涙が出そうになって、もう一度彼に深く口づけた。

熱が、愛が、すべてを貫いていくようだった。

シーツの中、静寂の中にふたりの呼吸だけが溶け合っていた。

まだ余熱を残した身体を抱きしめるようにして、一ノ瀬課長は私の髪を指でゆっくり梳いていた。

「……大丈夫?」

低く優しい声が、耳元に触れる。

私はこくりと頷いて、彼の胸に顔を寄せた。

その鼓動が、自分のそれとぴたりと重なっているような気がして、ふっと笑みが漏れる。

「まさか、こんなふうになるなんて思ってませんでした。」

私が呟くと、彼は「俺は……」と一瞬言葉を切ってから、そっと言った。

「ずっとこうしたかった。君に触れたくて、でも壊したくなくて。」

その言葉が、本当の温度を持って胸に染み込んでいく。

「……一夜で終わらせたくない。」

「はい!」

私の返事に、彼はようやく安心したように、優しく私の額にキスを落とした。

きっと、始まったばかり。

この関係は、夜が明けても続いていく。

私は目を閉じながら、彼の体温に身を委ねた。
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