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第6章 ライバル
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すると清水係長も、お弁当に蓋をして、立ち上がった。
「と言う事は、私達ライバルね。」
係長は、スッと手を差し伸べた。
握手でもしようとしているんだろうか。
とても、そんな気にはならないのに。
「すみません。」
私は、素直に謝った。
「あら、私じゃあライバルにはなれない?」
「いえ、逆です。」
「逆?」
「私では、清水係長のライバルになれないと思います。」
清水係長は、茫然としていた。
「……失礼します。」
私はお弁当を持つと、その場から立ち去った。
いくら何だって、清水係長が本気になったら、私は太刀打ちできない。
涙がスーッと零れた。
今、はっきり分かった。
私は、門馬の事が好きなんだって。
その日の夜だった。
私は、夕食を摂らずに自室に籠っていた。
門馬が好きな事に気づいて、彼の前でどんな顔をしたらいいか分からないのだ。
しかも、今門馬の側にいるのは、あの清水係長。
どう考えたって、勝つ自信がない。
その時、ドアを叩く音がした。
門馬だ。
「市川?」
ドアの向こうから、優しい声が聞こえてくる。
「入るよ。」
私は、ドアが開くと同時に、布団の中に頭を入れた。
「本当に具合悪いのか?」
門馬が、私のベッドの隅に座った。
「うん。」
「飯、作ったのに残念だな。」
門馬が作った夕食!!
食べたい。
でも、食べられない。
「少しでもいいから、食べろよ。」
「うん。」
私は、布団から頭を出して、起き上がった。
すると、門馬が私の頬に、手を添えた。
急に、頬が赤くなる。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?」
そう言って、自分の額に私の額を付けた。
「熱はないようだな。」
門馬が額を放した時、私と見つめ合う。
「市川……」
門馬の瞳に、私が映る。
どうしよう、キスとかされるのかな。
「元気ないな。悩みでもあるのか?」
見つめ合ったまま、そんな話されたら、クラクラきてしまう。
ダメだ。
相手は、あの清水係長なんだから!
「何でもないよ。」
私は、顔を反らした。
「俺達のルール、その1。」
「あっ。」
― 何でもない、じゃなくて何でも話す -
でも、門馬の事で清水係長に、ライバル宣言されたなんて言ったら、門馬だって困るもの。
「いや……本当にちょっと、体調悪いだけ。悩みとかじゃないから。」
門馬は、黙っている。
「それなら、いいんだけど。」
寂しそうな笑顔。
私のせいで、門馬にそんな顔させられない。
「夕食、頂こうかな。」
すると門馬は、こっちを向いて、微笑んでくれた。
「本当?」
「……うん。」
「じゃあ、早く。」
門馬は、私の腕を掴んだ。
「待って。」
門馬の笑顔を見ると、こっちまで笑顔になってくる。
私は連れて行かれるまま、門馬の後を着いて行った。
そして、そのまま食卓へ。
門馬は料理を温める為に、キッチンへ行った。
「今日は、お粥中心の料理にしたんだ。」
「へえー。お粥って、卵のお粥?」
「まあ、見ててよ。」
門馬が持ってきたのは、鳥のささみのボイルされた物に、梅干しペースト状にした物、その上に三つ葉がかかっていた。
「ええ!美味しそう。」
「食べて、食べて。」
「頂きまーす。」
一口食べると、梅干しの酸味が聞いて、とても美味しい。
「うん。美味しいよ。」
「よかった。」
門馬は、これも食べてとサラダを出してくれた。
それも、レタスの上に、豆が乗っていて、美味しそうだった。
「門馬って、意外に料理できるんだね。」
「まあ、一人暮らしが長いからね。」
「おかしいなぁ。私も長いはずなんだけど。」
「意識の問題だよ。」
二人ではははと笑うと、体がふっと、軽くなった。
「それで?何で急に、体調悪くなったの?」
門馬が柔らかい口調で、聞いてくる。
その口調が、今までのクールな門馬と違って……
ああ、もしかして。
清水係長が好きになった門馬は、このような人なのかしもしれないと思った。
「ねえ、前の彼女の事だけど。」
「清水係長の事?」
私は、うんと頷いた。
「どんな別れ方だったの?別れようって言ったのは、どっち?」
門馬は、少しだけ下を向いた。
「……言われた方は、納得したの?」
門馬は、静かに私の話を聞いているだけだった。
「ねえ、答えてよ。」
それで、私の悩みも晴れるかもしれないんだから。
「別れを切り出したのは、俺の方だよ。清水係長は……納得していなかったけれどね。」
「そうだったの。」
それを聞けば、心が軽くなると思ったのに。
全然、気持ちが晴れない。
私は、顔を両手で覆った。
「……清水係長に、何か言われたのか?」
ハッとした。
「ううん。何も……」
「だったら、いいんだけど……清水係長、やけにおまえの事、聞いてきたから。」
私は、顔を上げた。
「何て?」
「俺と付き合っているのかとか、どんな人なのかとか。」
すると門馬は、顔を上げた。
「もちろん、一緒に住んでいる事も、偽装結婚している事も言ってないよ。」
「うん……」
頭が重い。
どうすれば、この苦しみから、抜け出せるんだろう。
答えは一つ。
門馬の口から、”私だけ”だと言ってほしい。
清水係長なんて、関係ないって。
「ねえ、門馬。」
「なに?」
「下らない質問かもしれないけれど……」
私は、自分勝手な質問を、門馬に投げかけた。
「私と清水係長が何かあったら、助けるのはどっち?」
「えっ……」
門馬は、唖然としている。
呆れているんだ。
私は、うつ向いた。
「ごめん。本当に、下らない質問だよね。」
「市川……」
「忘れて。夕食、美味しかった。」
私が、立ち上がろうとした時だ。
「何かあったら、助けるのは市川だよ。」
私の目が、大きくなる。
「当たり前だろ。一緒に住んでいるんだから。」
「門馬……」
私は立ち上がったまま、門馬と見つめ合った。
「なんだか恥ずかしいな。俺、ビール取ってくる。」
門馬も立ち上がって、キッチンへ行こうとした時だ。
「待って……」
私は、門馬の後姿を追いかけて、背中から門馬を抱きしめた。
「市川?」
「……このままでいて。」
背中から門馬の香りがする。
なんだか、落ち着く。
すると門馬は、私の腕を自分から放した。
「ごめん。こういう事、付き合っていないのにするのは……」
「あっ、ごめんなさい。」
私は慌てて、後ろに下がった。
「ごめん。」
「こっちこそ、突然ごめんなさい。」
その場に、嫌な空気が流れ、門馬は一人キッチンに消えて行った。
「と言う事は、私達ライバルね。」
係長は、スッと手を差し伸べた。
握手でもしようとしているんだろうか。
とても、そんな気にはならないのに。
「すみません。」
私は、素直に謝った。
「あら、私じゃあライバルにはなれない?」
「いえ、逆です。」
「逆?」
「私では、清水係長のライバルになれないと思います。」
清水係長は、茫然としていた。
「……失礼します。」
私はお弁当を持つと、その場から立ち去った。
いくら何だって、清水係長が本気になったら、私は太刀打ちできない。
涙がスーッと零れた。
今、はっきり分かった。
私は、門馬の事が好きなんだって。
その日の夜だった。
私は、夕食を摂らずに自室に籠っていた。
門馬が好きな事に気づいて、彼の前でどんな顔をしたらいいか分からないのだ。
しかも、今門馬の側にいるのは、あの清水係長。
どう考えたって、勝つ自信がない。
その時、ドアを叩く音がした。
門馬だ。
「市川?」
ドアの向こうから、優しい声が聞こえてくる。
「入るよ。」
私は、ドアが開くと同時に、布団の中に頭を入れた。
「本当に具合悪いのか?」
門馬が、私のベッドの隅に座った。
「うん。」
「飯、作ったのに残念だな。」
門馬が作った夕食!!
食べたい。
でも、食べられない。
「少しでもいいから、食べろよ。」
「うん。」
私は、布団から頭を出して、起き上がった。
すると、門馬が私の頬に、手を添えた。
急に、頬が赤くなる。
「顔が赤いな。熱でもあるのか?」
そう言って、自分の額に私の額を付けた。
「熱はないようだな。」
門馬が額を放した時、私と見つめ合う。
「市川……」
門馬の瞳に、私が映る。
どうしよう、キスとかされるのかな。
「元気ないな。悩みでもあるのか?」
見つめ合ったまま、そんな話されたら、クラクラきてしまう。
ダメだ。
相手は、あの清水係長なんだから!
「何でもないよ。」
私は、顔を反らした。
「俺達のルール、その1。」
「あっ。」
― 何でもない、じゃなくて何でも話す -
でも、門馬の事で清水係長に、ライバル宣言されたなんて言ったら、門馬だって困るもの。
「いや……本当にちょっと、体調悪いだけ。悩みとかじゃないから。」
門馬は、黙っている。
「それなら、いいんだけど。」
寂しそうな笑顔。
私のせいで、門馬にそんな顔させられない。
「夕食、頂こうかな。」
すると門馬は、こっちを向いて、微笑んでくれた。
「本当?」
「……うん。」
「じゃあ、早く。」
門馬は、私の腕を掴んだ。
「待って。」
門馬の笑顔を見ると、こっちまで笑顔になってくる。
私は連れて行かれるまま、門馬の後を着いて行った。
そして、そのまま食卓へ。
門馬は料理を温める為に、キッチンへ行った。
「今日は、お粥中心の料理にしたんだ。」
「へえー。お粥って、卵のお粥?」
「まあ、見ててよ。」
門馬が持ってきたのは、鳥のささみのボイルされた物に、梅干しペースト状にした物、その上に三つ葉がかかっていた。
「ええ!美味しそう。」
「食べて、食べて。」
「頂きまーす。」
一口食べると、梅干しの酸味が聞いて、とても美味しい。
「うん。美味しいよ。」
「よかった。」
門馬は、これも食べてとサラダを出してくれた。
それも、レタスの上に、豆が乗っていて、美味しそうだった。
「門馬って、意外に料理できるんだね。」
「まあ、一人暮らしが長いからね。」
「おかしいなぁ。私も長いはずなんだけど。」
「意識の問題だよ。」
二人ではははと笑うと、体がふっと、軽くなった。
「それで?何で急に、体調悪くなったの?」
門馬が柔らかい口調で、聞いてくる。
その口調が、今までのクールな門馬と違って……
ああ、もしかして。
清水係長が好きになった門馬は、このような人なのかしもしれないと思った。
「ねえ、前の彼女の事だけど。」
「清水係長の事?」
私は、うんと頷いた。
「どんな別れ方だったの?別れようって言ったのは、どっち?」
門馬は、少しだけ下を向いた。
「……言われた方は、納得したの?」
門馬は、静かに私の話を聞いているだけだった。
「ねえ、答えてよ。」
それで、私の悩みも晴れるかもしれないんだから。
「別れを切り出したのは、俺の方だよ。清水係長は……納得していなかったけれどね。」
「そうだったの。」
それを聞けば、心が軽くなると思ったのに。
全然、気持ちが晴れない。
私は、顔を両手で覆った。
「……清水係長に、何か言われたのか?」
ハッとした。
「ううん。何も……」
「だったら、いいんだけど……清水係長、やけにおまえの事、聞いてきたから。」
私は、顔を上げた。
「何て?」
「俺と付き合っているのかとか、どんな人なのかとか。」
すると門馬は、顔を上げた。
「もちろん、一緒に住んでいる事も、偽装結婚している事も言ってないよ。」
「うん……」
頭が重い。
どうすれば、この苦しみから、抜け出せるんだろう。
答えは一つ。
門馬の口から、”私だけ”だと言ってほしい。
清水係長なんて、関係ないって。
「ねえ、門馬。」
「なに?」
「下らない質問かもしれないけれど……」
私は、自分勝手な質問を、門馬に投げかけた。
「私と清水係長が何かあったら、助けるのはどっち?」
「えっ……」
門馬は、唖然としている。
呆れているんだ。
私は、うつ向いた。
「ごめん。本当に、下らない質問だよね。」
「市川……」
「忘れて。夕食、美味しかった。」
私が、立ち上がろうとした時だ。
「何かあったら、助けるのは市川だよ。」
私の目が、大きくなる。
「当たり前だろ。一緒に住んでいるんだから。」
「門馬……」
私は立ち上がったまま、門馬と見つめ合った。
「なんだか恥ずかしいな。俺、ビール取ってくる。」
門馬も立ち上がって、キッチンへ行こうとした時だ。
「待って……」
私は、門馬の後姿を追いかけて、背中から門馬を抱きしめた。
「市川?」
「……このままでいて。」
背中から門馬の香りがする。
なんだか、落ち着く。
すると門馬は、私の腕を自分から放した。
「ごめん。こういう事、付き合っていないのにするのは……」
「あっ、ごめんなさい。」
私は慌てて、後ろに下がった。
「ごめん。」
「こっちこそ、突然ごめんなさい。」
その場に、嫌な空気が流れ、門馬は一人キッチンに消えて行った。
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