神託で選ばれたのは聖女の私!? 皇太子の溺愛が止まらない【完結】

日下奈緒

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第9部 魔女クラリーチェとの激闘 ⑥

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「……クラリーチェ……」

「あなたの瞳に、確かに私が映っていた。でも……でも……なぜ、私を捨てたの?なぜ……その瞳から、私を閉め出したの!?」

彼女の叫びは、痛みそのものだった。

レオは、苦悩の表情で唇を噛んだ。

レオの言葉は、クラリーチェの心を真っ直ぐに貫いた。

「……俺は……君を愛そうとした。でも、出会ってしまったんだ。」

レオが、私――エミリアを見つめる。優しいまなざしだった。

「聖女の任命式の日。守護役を受けた俺を、エミリアは見つめて……微笑んでくれたんだ。」

クラリーチェの瞳が、怒りと悲しみに揺れる。

「たったそれだけでええ!!」

叫びは、雷鳴のように大広間に響いた。魔力が彼女の周囲でうねり、床石が砕け散る。

「それだけじゃない!」

レオは声を張った。

「……クラリーチェ、君は――俺を見ていなかった。君の瞳が映していたのは、皇太子の称号、王妃という地位……その先にしか、俺はいなかった。」

「……っ!」

クラリーチェの肩がビクリと震える。

「愛したかったんだ。君を。だけど、心はいつも遠くにあった。君にとって俺は、“愛する男”じゃなく、“手に入れるべき玉座”だった。」

クラリーチェは、唇を噛みしめた。

目元から、ひとすじ、涙がこぼれる。

「そんなはず……私は……私は……」

震える声でつぶやいた。

「いつから……そうなってしまったの……私はただ……魔女として、愛されたかっただけなのに……」

そのとき、レオがそっと手を伸ばした。

「俺はクラリーチェ、君を魔女としてとか、公爵令嬢としてとか、そういうものではなく……」

レオの声は真っ直ぐだった。

「一人の女として、愛したかったんだ。」

その言葉を聞いた瞬間――
クラリーチェの瞳に宿っていた冷たい光が、ふと揺らいだ。

「ああ……」

わずかに震える声。

その頬を、ぽろりと涙がつたった。

「……まだ、君は引き返せる。」

レオはそっと手を伸ばす。

その手に、指先が触れかけた――まさにその時だった。

「う、ううっ……ああああっ……!」

クラリーチェの胸元から、蒼白い光が突如としてほとばしる!

『クラリーチェ・ルーヴェン――!我が血との契約は、どうした!!』

天井を震わせるような、重く冷たい声。

それはまるで、古の墓所から呼び覚まされた呪いの亡霊の叫びだった。

クラリーチェの身体は宙に浮かび、苦しげに両手で頭を抱える。

「や、やめてっ……お願い……私はもう……!」

青白い炎が彼女の身体を縛り上げる。

『契約は果たされねばならぬ!
愛を知った者に、我が力を預けることは許されぬ!
代償を払え――魂を差し出せ!』

「クラリーチェ!」

レオが駆け寄ろうとするが、結界のような力に阻まれる。
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