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第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談
⑤
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私は、作り笑顔を浮かべた。
「実はね、婚約が決まったの。」
ルシアはぱっと顔を輝かせる。
「本当に?おめでとう、お姉様! お相手はどなた?」
そのまっすぐな祝福の言葉が、皮肉のように胸に刺さる。
「……セドリック・グレイバーン伯爵よ。」
一瞬、ルシアの動きが止まった。
それから笑いをこらえるように唇を押さえる。
「あの伯爵?成り上がりの?」
私はうつむいた。
「ええ。」
「まあ……そういうのも、時代なのかしらね。」
ルシアはけらけらと笑った。
「でも大丈夫?あの人、お姉様に本当に興味あるの?」
「わからないわ。でも、決まったことなの。」
私の言葉に、ルシアは首をかしげる。
「でも伯爵家って、私の縁談でも断った家だった気がするわ。……あら、ごめんなさい。気にしないでね?」
何気ない一言が、ナイフのように胸に刺さる。
気にしないでと言われても、できるわけがない。
けれど私は、笑ったままだった。
「そうだったの。そうよね。ルシアが格下の伯爵家と結婚するわけないものね。」
私が静かにそう言うと、ルシアはますます笑顔を深くした。
その笑みには、どこかぞっとするような陰があった。
「ふふ、お姉様ったら……。でも驚いたわ。お姉様のような“そばかす顔”でも、気に入る人がいるのね。」
口調は軽く、悪気がないようにさえ見えた。
だが、その一言が、私の胸の奥に沈殿していた劣等感をあざ笑うように響いた。
「……それは、まだ分からないわ。」
絞り出すように答えた私に、ルシアはあっけらかんと首を傾げた。
「そう? でも伯爵って、見る目あるのかしらね?」
まるで私が不良品でも見るような言い方に、何も言い返せなかった。
この子に悪気がないことも、ずっと一緒に育ったから分かっている。
でも、だからこそ、余計に刺さる。
私はルシアの手をそっと離し、小さく頭を下げた。
「ごめんなさい、少し休みたいの。」
背を向けて歩き出した私の背中に、ルシアの「がんばってね!」という明るい声が響いた。
階段を降りようとしたその時、背後で扉の開く音がして、執務室からお母様が出てこられた。
「お母様。」
ルシアがぱっと笑顔を浮かべ、軽やかに駆け寄る。
「お姉様の結婚相手、伯爵家なんですって?」
その言葉に、私は足を止めた。
「ええ、そうよ」とお母様は穏やかに微笑む。
「セドリック・グレイバーン伯爵。若いけれどしっかりしていて、お金もあるの。」
「実はね、婚約が決まったの。」
ルシアはぱっと顔を輝かせる。
「本当に?おめでとう、お姉様! お相手はどなた?」
そのまっすぐな祝福の言葉が、皮肉のように胸に刺さる。
「……セドリック・グレイバーン伯爵よ。」
一瞬、ルシアの動きが止まった。
それから笑いをこらえるように唇を押さえる。
「あの伯爵?成り上がりの?」
私はうつむいた。
「ええ。」
「まあ……そういうのも、時代なのかしらね。」
ルシアはけらけらと笑った。
「でも大丈夫?あの人、お姉様に本当に興味あるの?」
「わからないわ。でも、決まったことなの。」
私の言葉に、ルシアは首をかしげる。
「でも伯爵家って、私の縁談でも断った家だった気がするわ。……あら、ごめんなさい。気にしないでね?」
何気ない一言が、ナイフのように胸に刺さる。
気にしないでと言われても、できるわけがない。
けれど私は、笑ったままだった。
「そうだったの。そうよね。ルシアが格下の伯爵家と結婚するわけないものね。」
私が静かにそう言うと、ルシアはますます笑顔を深くした。
その笑みには、どこかぞっとするような陰があった。
「ふふ、お姉様ったら……。でも驚いたわ。お姉様のような“そばかす顔”でも、気に入る人がいるのね。」
口調は軽く、悪気がないようにさえ見えた。
だが、その一言が、私の胸の奥に沈殿していた劣等感をあざ笑うように響いた。
「……それは、まだ分からないわ。」
絞り出すように答えた私に、ルシアはあっけらかんと首を傾げた。
「そう? でも伯爵って、見る目あるのかしらね?」
まるで私が不良品でも見るような言い方に、何も言い返せなかった。
この子に悪気がないことも、ずっと一緒に育ったから分かっている。
でも、だからこそ、余計に刺さる。
私はルシアの手をそっと離し、小さく頭を下げた。
「ごめんなさい、少し休みたいの。」
背を向けて歩き出した私の背中に、ルシアの「がんばってね!」という明るい声が響いた。
階段を降りようとしたその時、背後で扉の開く音がして、執務室からお母様が出てこられた。
「お母様。」
ルシアがぱっと笑顔を浮かべ、軽やかに駆け寄る。
「お姉様の結婚相手、伯爵家なんですって?」
その言葉に、私は足を止めた。
「ええ、そうよ」とお母様は穏やかに微笑む。
「セドリック・グレイバーン伯爵。若いけれどしっかりしていて、お金もあるの。」
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